「チング(真の友/真友)」ラブ・イン・ザ・ビッグシティ TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
チング(真の友/真友)
今年の6月は毎週、5~7作品「観たい」と思う作品が集中して公開されており、どれを諦めるかの取捨選択に苦悶しています。そんな中、本作『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』は劇場でかなりの回数トレーラーを観ていて、「(どちらかと言えば)若者向きの作品かな」と感じて優先順位をやや下げていたのですが、先日、意図したわけなく配信で観た作品に出演するキム・ゴウンに魅了されたのを決め手に、本作を今週(公開作品)の初日に鑑賞することを決めました。
「二人の物語」はまず20歳の出会いから。思うところあって「極力目立たない存在」でいようとするフンス(ノ・サンヒョン)と、思いのままの言動で周囲から反感を買い「浮いた存在」であるジェヒ(キム・ゴウン)は、ひょんなことをきっかけにお互いをはっきりと認識することとなります。日中「生き辛さ」を感じながら大学生活を送る二人は、その反動もあって「夜遊びと深酒」がルーティンとなり、程なく意気投合して一気に距離が縮まっていきます。そして利害の一致から始まる「共同生活」を過ごしていくうちに強固になっていく二人の仲はその後、「フンスの兵役」や「ジェヒの就職」などの大人の階段を経ていくことで段々と変化していき…
劇中、フンスは「自身のセクシュアリティ」のことで悩み、またジェヒも「男性上位な社会と、そこで生きる女性の振舞い方」に強い違和感を感じながらの毎日です。近年まで当たり前のように「普通」とされてきた考え方がまだまだ根強く蔓延るなか、「異端」と見なされる志向や振舞いは許容されず、時に暴力的にその場から排除されることすらあって、劇中の二人も度々精神的、時に肉体的にも傷ついています。そしてその都度、辛い自分のことを差し置き、必死で相手に「救いの手」を指し伸ばし合う二人。お互いを「チング(真の友/真友)」と認め合い、時に喧嘩して相手にムカつき怒鳴り散らしていても、ふと相手の異変に気付いた途端必死に心配するところなど、最早神々しくて泣けてきます。何なら、中盤以降は「二人が一緒にいる姿」だけで鼻の奥がツンとして落涙するのを押さえるのに必死。もう、そんな「最強のふたり」に心を打たれ通しで、いよいよ終盤のシーンでは我慢できずに決壊。いや、これはみんな泣くでしょ。。
勿論、この手の映画には主人公を引き立てることとなる「存在や言動」、すなわちヘイトがあるからこそ展開していくわけですが、本作もやはり例外ではありません。その為、当事者である方の気持ちに完全には寄り添えないことを自覚して、安易に解った気にはならないよう気を付けて観たつもりですが、しっかりバランスが取れていてリアリティも感じる内容は、現状において「完璧」「傑作」と言う評価が過言でないと思います。
いやぁ、今年の6月はレベルが高い。。これまた(『国宝』に続き)オールタイムベストに加えたい一作でした。参りました。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。