劇場公開日 2025年8月15日

「この独特の世界観に浸れるかどうか」ChaO おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 この独特の世界観に浸れるかどうか

2025年8月16日
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鑑賞方法:映画館

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■ 作品情報
監督は青木康浩。STUDIO4℃がアニメーション制作を手掛けた日本映画。主要キャストはステファン役に鈴鹿央士、チャオ役に山田杏奈。

■ ストーリー
人間と人魚が共存する近未来社会で、ごく平凡なサラリーマンのステファンは、ある日突然、人魚王国の姫チャオから求婚される。戸惑いながらもチャオとの共同生活を始めたステファンは、チャオの純粋でまっすぐな愛情に触れるうち、しだいに彼女に惹かれていく。アンデルセンの『人魚姫』をベースにしながらも、従来の枠にとらわれない奇想天外な展開が繰り広げられる中、チャオとステファンが互いを理解し、歩み寄っていく過程が描かれる。

■ 感想
開幕早々、その強烈で個性的なビジュアルと独特の世界観に圧倒されます。これははっきりと好みが分かれそうなところで、自分も最初はちょっと受け付けにくい感じでした。そして、あまりにもクセの強いキャラクター造形と、摩訶不思議なデザインセンスが、物語への没入を一時的に阻んでしまうように感じます。

しかし、その個性を乗り越えて見慣れてくる頃にこそ、この作品の真価は表れてきます。不可解に思えたチャオの突飛な行動や、ステファンのエアジェットへのこだわりなど、一見するとなんの関連もないように思えた出来事の数々が、終盤に向かうにつれて、すべて意味をもち、繋がりを見せます。チャオがステファンとの結婚を決意した理由、自宅での突然の花火、エアジェットのお披露目にサプライズで登場したロボット。これらの行動の裏に隠された、チャオの一途で優しい想いが明らかになった時、胸に温かな感動がこみ上げてきます。

本作は、単なるラブコメディの枠には収まらない、相手を理解し、歩み寄ることの大切さを深く感じさせるテーマが根底に流れています。互いの常識や価値観の違いを超えて、心を通わせていく二人の姿は、観る者の心にじんわりと温かさを灯します。惜しむらくは、劇場アニメにありがちなキャスティング問題です。主演のお二人の演技は決して悪くないものの、この唯一無二の世界観を最大限に引き出すためには、プロの声優陣の起用がより望ましかったのではないかと感じます。

おじゃる
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