「真面目なりせと「ナンセンス」なアリスの世界の取り合わせが絶妙。」不思議の国でアリスと Dive in Wonderland ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)
真面目なりせと「ナンセンス」なアリスの世界の取り合わせが絶妙。
不思議の国のアリスのアニメ版かと思ったらずいぶん違っていた。どういう発想から生まれたのか知らないが、これはこれで面白かった。アリスの不思議な世界をVR(仮想現実)で体感できるテーマパークの物語である。それも本人の為にプログラムされた唯一無二のアトラクションが用意されているという設定だ。就活がうまくいかなくて、自分の生き方に悩む主人公りせが、アリスの世界を体験していく中で自分の問題解決のきっかけをつかむという内容になっている。
りせのために作られた世界というものが、物語が進むにつれて少しずつ分かるようになっている。タイパ重視で時間に追われる白ウサギや、SNSでいいねやフォロワーを気にする青虫の姿は、りせの姿であり、現代社会の風刺でもある。就活を成功させるために、本心を偽り自身を見失っていたりせはハートの女王の裁判にかけられてしまう。おかしなドラゴンの姿になって追い詰められたりせは、不思議の国での体験やアリスの天真爛漫さに助けられて自分を取り戻す。この展開を作っているのもテーマパークのプログラム(AI?)のおかげということらしい。しかしテーマパークは場面と材料を提供しているだけで、りせが自分の問題を解決できたのは、彼女が自分自身としっかり向き合うことができたからだろう。所詮VRの作り物だからと自分に都合の悪い事は見ないふりをする事も出来ただろうが、それをしない所がりせの良い所であり、このテーマパークのよくできた所(?)でもある。VRでここまでできるのは近未来にありそうである。(同様の題材の小説や映画も既にある)
エンディングで幼い頃のりせと祖母の場面が出てくる。祖母が真面目過ぎるりせを心配して、自分が好きなアリスの世界を通してりせに自分の好きを大事にしてほしいという思いがテーマパーク設立の理由の一つだったと伺われる。祖母の優しさが伝わるようである。
アリスの「ナンセンス」な世界もそれなりに楽しいし、りせとおばあちゃんの思いもそれなりに伝わる良い作品でした。
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