ペリリュー 楽園のゲルニカのレビュー・感想・評価
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完全版に期待
原作連載時から追っていた。公開日のレイトショーで鑑賞。席は半分弱埋まっていて、仕事終わりのサラリーマンやファミリー層、老夫婦と幅広い年代が見に来ていた。
史実に基づく内容を、過剰にヒロイックにせずに淡々と描く雰囲気は原作を踏襲していてよかった。しかし後半ほぼ同じことの繰り返しで起伏が少なくやや中弛み。全体的には危惧していたとおりやはり107分では原作11巻分を再現する時間が足りず、ぶつ切りの連続で消化不良で劇場を後にした。戦後の内容も含めた2時間ぐらいの完全版にしてくれることを願う。戦後の遺骨収集や沖縄の基地という課題に触れてこその作品だと思う。過去と我々が生きる今とは地続きなのだから
ペリリュー島の戦いのことは知らなかったのでとても勉強になりました
実写だったらとてもじゃないけど直視できない戦場の悲惨さをアニメーションだから見られた
実話なので後世に伝えていく意味でも大事なことだし、幅広く多くの人に観てもらうためにこういう形で残すことは良いことだと思います
ホントに戦争ものを観るたびにその愚かさと恐怖に激しい嫌悪感しか感じません
青い空と海を燦々と照らす太陽、静寂の中の虫の音と綺麗な星空、そんなペリリュー島で1万人以上いた日本軍が30余名になるまで叩きのめされ、しかも戦後数年間、終戦を知らされず命を懸けたサバイバル生活をおくる苦しくて切なすぎるストーリー、観ていて本当に辛かったです
主人公 田丸のCVを演った板垣李光人と吉敷の中村倫也さんがとても良かった、白々しくなく、戦争に翻弄され力強く生き抜くキャラクターを熱演していて惹き込まれました
観て良かったと思える秀作です
「支え」を失う怖さ
原作は全部ではないけど一応読んだことはあるレベル
途中だけだったけど面白い作品だったので
今回の映画は結構楽しみにしていた
多少の時間スキップはあるものの
「あ、そうなんだ」と乾いた感情で
どんどん追い詰められていくのか怖い
人格者で人当たりも良く皆に頼られる
生き残りたちの主軸である島田少尉が実は一番
「命令を守り島を守る」ことに支えられていたのではないだろうか
ほかの生き残りたちも
命令とか環境とかではなく
「自分たちが抵抗をつづける」ことに気持ちが支えられていたのかもしれない
それを失うことの怖さ、
喪失への忌避
歴史を知っていてもいなくても
どうするんだろう。これからどうなるんだろうと
やんわりとした緊張と、ラストにそこまで抑え込まれた感情が
緩やかに解放される
それはそれとして、
キャラクターデザインも人物描写もそれぞれの関係も
妙に色気があってみていてちょっとドキドキしちゃいましたね
悲惨で過酷な状況の中
それでも潜伏生活の中のほっとするような日常描写があるのも良い所だとおもう
太平洋の地獄
原作は未読。ペリリューの戦いについては島嶼部の防衛戦で長期持久戦が行われ4万の米軍1万の日本軍守備隊が戦い玉砕したとばかり…。
実際は30数名が生き残り2年以上も終戦を知らなかったとは。
ディフォルメされた可愛い人物が凄惨に殺し合い兵器はディテールが緻密でギャップには引くしかない。
もし自分がいたら先ず助からない。
戦後に生きた人間だから何て無謀な戦いを…と思ってしまうが彼らは英霊ではなく無駄死にでしたかない。
誰が彼らを無駄死にさせたのか?
戦争の無意味さ怖さを見せつける。
今年の日本映画で最高の作品。
"戦後80年" の年の掉尾を飾るに相応しい傑作
通常スクリーンで鑑賞。
原作マンガは未読。
戦火の中で育まれる田丸と吉敷の友情が眩しく美しい。3頭身のかわいらしいキャラクターが戦場の悲惨さを際立たせていて、とても苦しかった。
死して虜囚の辱めを受けず。この言葉のためにどれだけの命が、時間が、奪われてしまったことだろう。教育と云うのは恐ろしいものだと思った。
飲食物持ち込まない方がいいかも
初日に見に行きましたがとてもいい作品でした。
ただ、容赦ないグロ描写があります。ポップコーンを買って持ち込みましたが、耐性がない人は食欲が無くなると思うので注意してください。
私自身はあの島でどんな戦闘があったのか知らないのですが、日本兵がどれだけ惨めな思いをして生きてたのか、それでも生き抜いた34人がどんな思いで乗り越えたのかが痛々しく描写されていてすごく良かったです。
どこまで事実なのか分からないのですが、戦争がどれだけ過酷だったかを何も隠さずに伝えたのがすごく刺さりました。令和の今を生きる私たちはあの苦労は知らなくて住んでいる。その癖して社会に文句ばかり言って、自分が恵まれてることも知らずにいる。私は20代後半の男性ですが、20代の若者が多く死んで行ったこと、それを覚えている1人で居たいなと思いました。幸せなのは当たり前ではないこと。全ての戦場で懸命に日本のために戦ってくれた方々のおかげで今があることを改めて覚えておこうと思います。
漫画版を読んだのは5年以上前だったのでうろ覚えなのですが、漫画版と映画版で内容が違うと思います。たしか1冊にまとまってるものを読んだ気がするのですがよく覚えてなくて申し訳ないです。
戦争のリアルを伝える名作
原作は未読である。史実を元にしたフィクションだそうだ。執筆のきっかけは、2015 年4月に、戦後 70 年を記念して当時の天皇皇后両陛下(現・上皇上皇后両陛下)がペリリュー島を慰霊訪問されたニュースだったそうで、その翌年から5年間雑誌に連載が続いたそうだ。それが今年、戦後 80 年を記念して映画化されたようだ。
今年は「木の上の軍隊」「雪風」と戦後 80 年を記念した良作が立て続けに公開されて来たが、いずれも戦場のリアルさは深く関わった人間を通して描かれている。また、戦中の様子よりも戦後の様子に重点が置かれているのも共通している。
原作漫画と同様に、人物は3頭身のコミカルな姿で描かれていて、生々しさをいくらか軽減していたと思うが、見慣れるにつれ、徐々にその表現での容赦ないリアリティが感じられて、見終えた後にはかなり重いものが残った。また、兵器や車両や戦闘機などは実にリアルで、人物の表現とは大きく乖離していた。
サイパンやグアムなどで日本軍が次々玉砕したというニュースが聞かれるようになった頃に、日本兵約 10,000 が籠るペリリュー島に、米軍は 30,000 を超える兵力を投入して島を奪還すべく艦隊を送り込み、蟻の這い出る隙もないほど取り囲んで上陸作戦を敢行した。武器も食糧も尽きかけた状態で戦闘を続けるという状況は、「木の上の軍隊」と同様であるが、極度の飢餓状態に置かれながら、敵の缶詰を食べるのを潔しとしなかった「木の上の軍隊」とは異なり、ここの部隊はむしろ積極的に米軍の物資を略奪して生存と抗戦維持を図ろうとしている。
終戦を知らずに1年以上島に潜伏していた残存兵に、日本が降伏したのではないかと思われる写真が載ったアメリカの雑誌がもたらされて、兵たちは様々な意見を出して対応を協議する。この情報が本当なのかどうかを確認するには、投降して敵に捕縛される必要があるのだが、当時の日本軍において、投降は死刑相当の重罪である。どうしても真実が知りたければ、軍法を冒す必要がある。
本作の最大の見どころがその対応の相違である。真実を知りたくて、自らの生命を危機に晒しながら投降を決行しようとする者と、彼らを殺害してでも止めようとする者たちの生命のやり取りが悼ましい。現代の視点で見れば、争う必要のない状況が世界中を変えてしまっているのに、ここでは無駄な血が流されようとしている。
板垣李光人や中村倫也が声優として参加しており、熱意が伝わる演技を聞かせていた。見終わって重いものを抱えた観客に、上白石萌音が歌う曲の素晴らしさは大変な救いになった。この歌声は、「TOKYO タクシー」の倍賞千恵子の歌声に匹敵する見事なものだった。少しでも多くの人に見てほしい映画である。
(映像5+脚本5+役者5+音楽4+演出5)×4= 96 点。
帰りたかったろうなぁ
ペリリュー島については天皇陛下が慰霊訪問されるまで知らなかった
そして終戦後2年に渡り潜伏していた事も⋯
事実は1つでも国や立場そして個人の数だけ真実が有るというのを改めて思う作品だった
史実に基づくフィクションという事だったが実際にも有った事なんだろうと感じながら視聴した
今尚、2500柱以上の方が未帰還との事、尚且つ戦闘していた方達が平均20代の若者が大半なのを考えたら劇中も終劇後も涙が溢れて止まらなかった
(自衛官で定年まで勤務していたので尚更)
ただし3等身のアニメ作品だから観れたが悲惨な内容なのでリアルなら最後まで視聴出来なかったろうなぁと思う(目を逸らしてはいけないが)
最後に当然、戦争はいけない事だが当事、立ち上がった先人達がいなかったら今頃は英語を喋れるのが普通でキリスト教信者の数も沢山いたのだろうなぁと改めて思うし感謝の心は持ちたいと感じた
日本を守るという事について改めて考える事の出来る良い作品だと思う
アニメならではの手法で戦争を表現した傑作
原作未読。色鮮やかな南洋の自然と、鈍色に輝く兵器たち、2つの「リアル」の間で、漫画的にディフォルメされた人間たちが、無惨に死んでいく…。この三層構造の表現が戦争映画として革新的だ。流行のキュートアグレッション、という訳でもなく(なにしろ登場人物はほとんど成人男性ばかりだ)、簡素なキャラクターのうちにこそ、見ている側が苦痛や悲しみを見出してしまう。そのような「空白」がより深い感情移入に必要、ということかもしれない。また主人公の絵(漫画)を描く能力が、絶望の中で生き延びるよすがになる、という設定は、同じく近年の戦時中アニメの傑作「この世界の片隅に」に通じるものがあるし、描かれた絵を作中に取り込むことで、表現の幅も拡げている。なにより、戦死者の死に様を「盛る」功績係が、戦友たちの生き様を記録していたことで、彼らの生存に道筋をつける、という結末がとても良い。…口紅を握りしてめて死んでいった彼のことが忘れられない。
4頭身のキャラが描く盲信する怖さ
4頭身にも満たない可愛いアニメキャラだからこそ描けた残酷な世界。
グロテスクな表現も含んでいる作品ですが、それより気持ち悪く恐ろしく感じたのは「盲信」した人間。
「疑心暗鬼」に陥った人間がすがるように何かを信じ始めたら終わり。
コレ、今の世の中にも痛烈なメッセージとなって私たちの心に訴えかけてきます。
自分の「正義」や「信念」が全てと考えがちな人、他人の意見を聞かず「歪んだ正義感」を盲信する人、そして特定の人物が己の全てになっている人、こうした人に立ち止まる機会を与える作品になっていると思います。
余談ですが、戦地で川井憲次さんの楽曲が流れるだけで「パトレイバー」が頭をよぎるのは私だけの病気でしょうか笑
過去を未来へ紡ぐ今を。
まさかPG12食らうと思わんかったよね。と思ったが描写や昨今の情勢見るにプライベート・ライアンの時のスピルバーグのような制限指定を引き下げるゴリ押し芸は現代には通用しない。理由は作品そのものが武器を扱う好奇心という名の引き金になりかねないから。この作品見てりゃドンパチやろうとも思わんけど、どう感化されるかはその人にならないと分からないものがある。でも、この作品はちゃんと戦争に向き合ってグロい描写したと思う。
戦争に対する価値観が変貌を遂げつつある現代に、当時の戦争経験者も、生存という意味合いで少なくなってきた。80年も経っている。平均寿命だ。
記憶を言葉で語る事が出来る、伝えられる、そんな機会が消えようとしているからこそ本作含め戦争映画というものはジャンルとして成り立つのだろう、と推察する。
本作だが、可愛らしいキャラクターデザインの事などものの10分で忘れるくらいちゃんとリアリティを秘めている。というかキャラクターデザイン以外の"物"があまりにもリアル過ぎる。武器とか戦闘機とか戦艦、それに"ホトケ"さん含めてだ。手榴弾なんかも爆発の演出が音響込みでかなり凝っていて、あーこれは当たったら○ぬなぁ、とアニメながらに現実のリアリティをデザインではなく演出で感じさせてくる。
まぁアニメはアニメなので細かい部分(爆音聞いた後の耳鳴りがなさそう、とかクッソうるさいはずの銃声の後の普通のトーンでの会話など)はその辺省いてはいた。
なので粗はぼちぼちある、が、多分この映画が伝えたいのはそういう所じゃない。映画がいつ終わってもおかしくないくらいに周囲にタヒが溢れていた。それくらい容赦がない。容赦なさ過ぎて人が亡くなって悲愴や憎しみを募らせる時よりも人をやってしまった時の方の罪悪感が勝ってしまっている部分を描写したのは心に来るものがあった。あまりにも生々しい。
そう思えるのも、主演の声優である板垣李光人さんの、決して上手いとは言えない演技のお陰だろう。声優慣れしている中村倫也さんはそれはもう本職顔負けクラスで吉敷を演じて下さったが、板垣李光人さん演じる田丸のおかげで、どこにでもいる大人しそうな人が戦争に放り込まれている臨場感がより際立った。これは最初から最後までそうだった。
お陰でキャラクターに入りやすく、多分見返せばそんなに目を背ける位ではないだろうシーンでも目を背けたくなった。
プロモーションから俳優陣推しが多かったが、本作においてはこれで良かったと思える。
この辺の描写は逆にアニメだからこそ良かったのだと思う。
戦争というものがもしかしたら身近に迫っているからこその本作。この話は過去だからこそ、今という一方引いた視点で鑑賞できる。その過去の人達が命をかけて運んできた平和を、未来へ紡ぐために今を懸命に生きてみようと思わなくもない作品だった。
予想通りの内容
画風ギャップゆえの怖さ
八月に茨城県にある「筑波海軍航空隊記念館」という所に行き、そこに原作漫画が置かれ手に取りました。キャラが2~3頭身で、てっきり戦争コメディ漫画かと読み進めて行くと、リアルでシビアな戦争漫画でした。展示見学が目的だったため1巻目だけ読んで終わらせましたが、引き込まれ、かつ、画風と内容のギャップに妙な怖さを感じました。今回映画化されたとのことで、読みかけで終わっていたこの物語を知りたく観に行きました。
戦争の悲惨さは描かれますが、3頭身の画風上、リアルな負傷、死亡描写(腸や肉の飛び散りといったディテールまで見せるレベル)で悲惨さを伝える映画ではなく、「功績係」任務を与えられた田丸(声・板垣李光人)が、兵士たちの「葛藤」を背景に己の「才」によって仲間を救う物語であり、ゆえに戦争映画特有の見た後の「重たさ」はあまり感じませんでした。
漫画を見た時にひきこまれた「画風ギャップゆえの怖さ」は、映画化=絵が動くことで、増幅されたかというと、そうでもなく、漫画ならではのコマ割りに配された絵(静止画)と「間」、シリアスな吹き出しセリフを自分のペースで感じながら読めたからかもしれません。(映画はどんどん進んじゃいますので)一方で時折り挟まれる戦場との「ギャップ」を示す美しい風景描写や、終盤の田丸のアイデアを実行するシーンの演出・音楽は映画ならではで、ウルっとしました。
全11巻の話を2時間枠に収めるためにどこが削られたのか分かりませんが、編成、シナリオ立てはご苦労されたかと。各シーンの尺の配分や演出もバランス良く、エンドロールで上白石萌音さんの歌を聞き、物語を回想する。。。良い映画でした。
絵柄とのギャップ
戦車や艦船、航空機などはリアルだけど、人物は三等身の可愛い絵柄で、戦闘シーンの悲惨さが少しやわらぐのは、戦争の悲劇を伝えるのに良いのか悪いのか、賛否は分かれそうな気がしたが、実写やリアルな絵だったらグロテスクなシーンも見られるものになってたのは、視聴年齢を広げるのかもしれないと感じた。
ペリリュー島の守備隊1万人のうち生き残りは34人という過酷な状況。しかも終戦から2年近く、それを知らず潜伏し、投降をすれば全員助かったかもしれないのに「生きて虜囚の辱めを受けず」の戦陣訓のために、最後で仲間うちで殺しあうことになってしまう悲劇。
政府の行為によって、若者を死地に送るようなことは二度としてはいけないと自分は思うが、右寄りの人たちはお国のために戦ったこういう人たちのおかげで今があるとか感動しちゃうのかな?戦争で若者たちが死ななかった方が今に続く世の中に貢献してくれたと思うけどな。
絵柄とのギャップはあるが、きちんと戦争を伝えるアニメとしては「この世界の片隅に」にも通じるかなと思った。
目に見えない特典
気になっていた作品なので
公開初日の初回上映で観てきました
アニメとはいえ、内容が内容なだけに
覚悟して観に行きました
その想像以上に重い映画でした
でも観てよかったです
実写の戦争映画よりもアニメの方が
身近に感じられて辛かったです
自分の場合は実写だと戦闘機とか戦車をカッコよく感じたり
想像力が機能しなかったりするので
どこか他人事のように感じたりします
でもアニメだと少し自分ごとのように近くに感じられます
救いがない映画ですが
観てよかった映画です
エンタメ映画もいいですが
本作のような映画の存在もとても貴重で重要だと思います
入場特典はありませんでしたが、
鑑賞後には、あたり前にあると思っている日常が
実は奇跡の連続でとても尊いものであると思える
という目に見えない入場特典をいただけました
観客は高年齢でした
4頭身にデフォルメされた兵士たちの死は、かえって凄惨さを強く冷たく刺し込んできた
12/5(金)公開初日@新宿バルト9。
結論から言って、今年観た150本超の映画(実写、アニメ含めて)の私的ベスト10に入る。
戦争を描いたアニメは、古くは『火垂るの墓』、9年前には『この世界の片隅に』、そして戦後80年の今年の最期にこの『ペリリュー』だ。
考えてみれば、上記2作は「銃後」(戦時中の国内)の庶民の生活を描いたが、最前線の戦闘や飢餓を描いてきた映像作品は、実写では古典的な『野火』をはじめ数多くあれど、アニメでこれだけきっちり描いたのは初めてではないか?
(漫画<劇画>としてはかつて水木しげるが描いていたけれど)
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以前の劇場での予告はティーザーというか、ジャングルの背景に阿鼻叫喚がかぶって聞こえ、「10,000人」が「34人」にカウントダウンするというものだったが、公開直前になってキャラクターデザインが4頭身wのクレヨンしんちゃん風だということを知って愕然とした。何しろ原作コミックを知らなかったもので。
スクリーンで観れば、なるほど、シンエイ動画が制作か。文字通りクレヨンしんちゃんだ。
その、「南方の戦場」と「ほのぼのしたプロポーションのキャラクター」のギャップを半ば恐れながら、半ばわくわくしながら観ていくと・・・。
エラいものを観てしまった。
戦闘シーンは、昨今のVFXを駆使した凄惨かつグロい実写の映像より、ある意味こちらのほうが余計おぞましいかもしれない。
まるでレゴのような4頭身の兵士たちは、米兵も日本兵も、頭をヘルメットごと撃ち抜かれ、目玉が飛び出し、砲撃で手足が千切れて戦友の上に降り注ぐ。
日本兵は「お母さん・・・」と事切れ、鬼畜米英の兵も「Mommy・・」と呟いて死んでいく。
そのデフォルメされた「死にざま」は、残虐さをマイルドにするためのデフォルメではなく、かえって冷たいものをみぞおちに刺し込んで来る、変なリアリティを呑み込ませてくるデフォルメだった。
そして『木の上の軍隊』でも炙り出されていた「生きて虜囚の辱めを受けず」の戦陣訓を狂信し、歪んだ武士道で犬死にを強いられる兵卒たち。
しかし指揮官は『木の上の軍隊』と同じく米軍のレーション(粮食)を盗むことで自ら生き延びることを選択する。
ただ、さらにそこから「持久戦に持ち込んで援軍を待つ」という希望的観測で行動する発想と集団心理は、めちゃくちゃバイアスが掛かった悲喜劇だとしか言いようがない。
その中にあっても、こんな死に方は嫌だ、と信じる主人公・田丸と盟友・吉敷、あるいはひっそりと「うまく投降するには」を語る上等兵・小杉、数十名の命運を握りながら揺れ動く島田少尉・・・さまざまな思いが交錯する。
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田丸は、戦友の「勇猛果敢、一生報国」の死に様を記録し、のちに上官が遺族に手紙を書くための情報を準備しておく「功績係」だ。
そしてこの田丸の役割が、最後の最後で大きな意味を持つ。この史実に基づいたエピソードを巧みにマンガの物語に取り込み、また脚本で活かして上質な映像作品を仕上げた制作陣には、本当に感服する以外にない。
VCは、田丸に板垣李光人、吉敷に中村倫也。板垣は『ミーツ・ザ・ワールド』でも朝ドラ『ばけばけ』でも良い演技をしているなぁ 中村の上手さは安定している。
エンドロールの歌唱は上白石萌音。最後に彼女の歌声を聴けて、ちょっと癒やされた。
アニメだからこそ描ける戦場のリアル。
大傑作でした。
可愛らしい絵柄だからこそ、そこに描かれる戦争の残酷さがより鮮明に伝わってきます。
「描きすぎない」事により、返って視聴者に「想像させる」演出が冴え渡ってます。だから、ビジュアルで見せる以上にリアルに感じ。
その、あまりに残酷すぎる現実にギョッとさせられます。
ペリリュー島の戦いについては事前知識がなく、軽く歴史だけ予習した状態で鑑賞しましたが、それでも胸に迫るものがありました。
物語の中で繰り返し突きつけられるのは、「生きるために食べる」「生きるために殺す」という、良し悪しでは割り切れない現実です。愛らしいキャラクターデザインと凄惨な戦場とのギャップは大きく、その落差がかえって戦争の本質を鋭く浮き彫りにします。
戦争が終わったと“信じる者”、信じたい者、信じたくない者――それぞれの揺れ動く思いが重く、辛い。
善悪では割り切れない複雑な感情と人間模様、その果てに何が起きたか。ぜひ劇場で確認してください。
とりわけ印象に残ったのは、キャラクターひとりひとりの丁寧な描写。こんなに大量に人が死ぬ作品なのに、モブとして描かず。人間として描いているのが素晴らしかったです。
特に、キャラクターのひとりが周囲の目を盗んで口紅をひくシーン。ほんの小さな所作なのに、その裏にあったであろう思いを想像するだけでも涙が溢れてきました。
極限の状況の中でも、人はそれぞれの願いを胸に生きようともがいていたのだという事実が刺さります。
気がつけば、残酷な展開の連続に何度もショックを受けながら、それでも最後まで目が離せませんでした。
「この世界の片隅に」に並ぶ大傑作でした。
まずはスクリーンで観てほしいです。
誰かの評価を気にするより、自分の目で確かめてこそ価値がある作品だと思います。
少しでも気になっているなら、ぜひ早めに足を運んでみてください。
太平洋戦争の惨禍を描いた良作です。
戦後80年の2025年は7月~9月にかけて多くの戦争関連の日本映画が上映されました(「木の上の軍隊」「雪風」「長崎ー閃光の影でー」「黒川の女たち」など)が、太平洋戦争の開戦になる12月期に本作「ペリリュー楽園のゲルニカ」が上映されましたが、戦争の惨禍を伝える良作だと思いました。
・日本軍1万人が守るペリリュー島にアメリカ兵4万が上陸、激しい戦闘となり、アメリカ艦からの艦砲射撃、飛び交う銃撃、銃剣での刺し合い、投げ込まれる手榴弾など、アニメとはいえ、生生しい描写となっており、原作のコンセプトがよく反映されていると思います。
・この映画での登場人物のメインは、戦争の功績係担当の「田丸」(声:板垣李光人)、上官の「吉敷」(声:中村倫也)だが、二人の戦場下での友情物語になっており、声優たちの声と映画がよくマッチしていると思います。
・この2人を取り巻く様々なキャラクターの軍人たちが登場しており、上官の命令に絶対服従で従う人、疑いながら従う人など、複雑な軍隊組織のあり様をうまく物語化しているように思いました。
・また、ケガで使いようのなくなった部下を容赦なく銃剣で突き刺して殺す場面など、軍部の非道な行為もしっかり描かれています。
・日本軍の反撃(応援)を待ちつつ、持久戦に持ち込み、米軍基地に忍び込み食料などの物資を調達することや、日本敗戦を受け入れず、アメリカ軍に投降するか否かで意見が割れる日本軍の様子については、竹野内豊主演の映画「太平洋の奇跡」でも描かれていますが、こちらの映画も実話ベースの原作を映画化したもので、当時の「生きて虜囚の辱めを受けるなかれ」という言葉が軍部を強く縛り続けていたかを感じさせました。
・エンディングで流れる「上白石萌音」の歌声は、死者を悼むような清さがあり、大変良かったと思います。
3頭身のキャラクター、俳優『板垣李光人』『中村倫也』を持ってきた作り手の勝利
全21件中、1~20件目を表示
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