劇場公開日 2025年8月1日

「まっすぐ正面から原爆の記憶に接続する」長崎 閃光の影で あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 まっすぐ正面から原爆の記憶に接続する

2025年8月2日
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鑑賞方法:映画館

終戦から80年後の8月を迎えた。3日連続で戦争に関連した映画作品を観ている。「木の上の軍隊」「この世界の片隅で」そして本作。80年前の8月には、伊江島で二人の兵士が木の上に隠れ、呉で右手をなくしたすずさんが山越しに広島の原爆雲を眺め、そして長崎で学生を含む看護師たちが救難所で絶望的な救命活動を行なっていた。
塚本晋也は、戦争の映画を撮るということは「前の時代を生きた人たちの体験や、そこから生まれた表現と『接続する』という感覚である」と話している。時代を把握するために、そして戦争や軍隊について上滑りな空論でなくしっかりと理解するためには、やはり一人ひとりが経験した事実をリアルに、先入観なく、見聞きしていくしかないのだと思う。
その意味では、本作は余りにも真っ直ぐの剛速球を投げ込んできたなという印象である。塚本の「野火」、今村昌平の「黒い雨」、岡本喜八の「沖縄決戦」などを観てきた者はともかく、近年の甘々の特攻隊ロマンス映画ぐらいしか知らない者たちにとっては、傷口にたかるウジや、ノコギリで足を切り落とすシーンはきついかもしれない。また、朝鮮人を救護所から追い返したり、看護師たちに青酸カリを与えるが、自分は真っ先に米兵と交際する婦長の姿などトゲのある設定が随所にありこの悪意に戸惑う者もいるかもしれない。
でも、それもこれも含めて、これは当時の看護学生、看護師たちの手記に基づいた脚本であり徹底的にリアルであるといえよう。エンドクレジットによると救護に携わった看護師たちは500人にものぼるが代表して山下フジヱさんが最後に登場する。記憶を継承したいという作り手の強い意志を感じる。真っ直ぐに受け止めなくてはならない。
主役の3人の女優は初々しい。看護学生という設定が棒立ちの演技にも説得力を与えた。妙にスタイルが良すぎる(特にスミ役の菊池日菜子さん)のと発声の基本がないのに長崎弁でしゃべるのでセリフが聞き取りにくいところが難だがまあご愛嬌でしょう。

あんちゃん
ひでちゃぴんさんのコメント
2025年8月11日

小野花梨さんは、『片思い世界』で、あざといキャラを演じていて、もうそのイメージが私としては強かったのですが、本作でイメージが激変しました。今後、注目したい俳優です。

ひでちゃぴん
トミーさんのコメント
2025年8月4日

共感&コメントありがとうございます。
仰る通り、ちょっと戦時中、戦後のあるあるを散りばめ過ぎで印象が分散してしまった感がありますね。

トミー
トミーさんのコメント
2025年8月3日

観てどう感じたか、自分がそこに居たら、考えて想像するのが大事。また正反対の考えが存在する事にも留意すべきですね。
婦長も男(余裕あるのは進駐軍だけ)に縋るしか無かったんですかね。

トミー