「もっと生々しいゲッペルス像を期待してましたが…」ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男 オパーリンブルーさんの映画レビュー(感想・評価)
もっと生々しいゲッペルス像を期待してましたが…
“現代的な媒体を用いたプロパガンダ(政治的宣伝)の元祖”ともいえるゲッべルスの素顔を描いた映画
プロパガンダを現代社会にも蔓延っていると警告している
表では窺い知ることのない政権内部での会話やエピソードは、極力当時の資料に基づいて再現したと冒頭に解説が入る
映画上の役者の演説に前後して、当時のモノクロ映像の本人によるものも流れる
人間・ゲッベルスの描き方としては、「ヒトラー最期の12日間」での地下本部に子どもたちを連れてきて、夫婦の手により注射で殺してしまうシーンが、私が知る限り一番生々しく、この映画はそれに比べると人間的な側面が浅いと感じた
ナチス的に理想的な家族として褒め称えられた妻・マグダがいるにもかかわらず、愛人を作るゲッベルス
そしてマグダは、(姪のゲルダがソレに当たるが)妻という表立った存在がいないヒトラーにより、総統の妻のような立場で華々しくイベント等で遇される存在に…
(そのくせ子沢山なのは、何故だろう(笑)…?)
その夫婦関係の愛憎と、ナチス思想を最期まで宣伝する男の素顔を描写してくれたら、もっとストーリー的にも惹き込まれたと思うが、製作者の描きたいものはそちらじゃなく、登場人物たちと一定の間隔を保って淡々と描かれていくので、途中何度か眠くなりました
「虐殺会議」でも描かれたが、ナチス政権が戦況が振るわなくなった時点においても、武器や戦闘員を送る貴重な手段を裂いてでも、ユダヤ人を絶滅収容所に送ることを最期まで完遂しようとしていたことがうかがわれるセリフもあった
ユダヤ人の存在を体感で感じない日本人としては、ユダヤ人さえ根絶やしにすれば戦争に勝つんだ!という感覚、日常生活に溶け込んでいる隣人たちをそこまで毛嫌いする理由がわからない
しかし日本国内でも嘘か真が不明な、排斥的な言動がネットで飛び交っている現状を鑑みると、他山の石としてはならないことなのかもしれない、自戒を込めて
コメントありがとうございました。 ためになりました。
大航海時代に乗り遅れたドイツとヨーロッパの列強の植民地になることからすんでのところで逃れた日本。遠く離れていて相互援助も出来ないのに、奇しくも同盟を結ぶことになった両国の自国民に対するプロパガンダ作戦には似た点が多々あります。兵器の技術力では優れていた当時のドイツと日本が直接戦闘とは関係ないところにこだわったり、陸軍と海軍が意地を張りあって噛み合わなかったりたりとか、アホな面もとても似ているように思います。歴史から学ぶことは大切だとは思いますが、政治家や軍の参謀の駆け引きと庶民の感覚の違いは昔も今も変わらない難題ですね。