「高い完成度のラストを考えたら後は全部尺稼ぎに注いだ映画」きさらぎ駅 Re: ハトバードさんの映画レビュー(感想・評価)
高い完成度のラストを考えたら後は全部尺稼ぎに注いだ映画
ラストだけは本当にかなり良かった。
しかしそれだけでは補えない虚無感。
前作からの直接の続編で、モキュメンタリーから始まって前作を振り返るとともに人々の反応から伏線を用意しつつ、再度きさらぎ駅に突入する…
といったところまでは割と理想的に思える。
しかし肝心のきさらぎ駅部分が前作からなんの目新しさもない尺稼ぎと何がしたいのか分からない茶番で構成されているのが大問題。
周回知識を活かしたRTA行動で障害を突破!も結局前作のギミック攻略をなぞるだけ。
他のメンバーとも協力するようになって何か新しい動きがあるかと思ったら単に人が増えただけで同じ攻略法しかしないのは逆に驚く。
爺さんに大勢で向かっていく場面は途中でカットするくせに運転技術を褒めるパートだのは無駄に入れてくるので本当に前作に無かった攻略の絵面を見せる気は無いらしい。
だが肝心の新規ルートかつそれなりの尺を使う目玉攻略は本当に酷いのでそれまではまだマシだったと気づく。
わざわざ書くまでもないが、「机使い回せばいくらでも進めるだろ」「そんな詰め詰めの間隔で置くから扉まで届かないんじゃないの?」「周りの木とかフェンスは使っちゃいけないの?」のような当たり前の発想には一切触れず、「ある程度の高さがないと駄目なんだ…」とかいう割とどうでもいい疑問だけは潰してくる。
最終的には囮作戦。各自に机を一つ持たせればそれこそ高鬼の手法で余裕で生き残りつつ時間を稼げそうなものの、その身一つで走って死んでいく囮達には涙を禁じ得ない。
この目玉攻略にそれなりに時間をかけた癖に、ダメだった!じゃあ電車を降りずにいたら帰れるかも!に一瞬のひらめきで辿り着くのが本当にどういう尺配分なのか理解できない。
これこそ知恵を出し合って試行錯誤からルート開拓する場面なんじゃないの?と思うが、机作戦があの体たらくの奴等にまともな解決策なんぞ出せる筈がないと思うと納得もある。
ぶっちゃけ尺さえ埋められるならどうでもよかったんだと思う。それくらい何をやってて何を見せたいのか意味不明なパート。
しかしラストだけは滅茶苦茶良い。
まず本来もの寂しい場所である筈のきさらぎ駅に人が溢れている絵面。ここだけは文句なしに良いと言えるインパクトのあるシーンだと思う。
それまで雑に入れ込まれた描写としか思えなかった炎上に悩まされるシーンがここに来て伏線として効いてくるのもいいカウンターになっており、モキュメンタリーパートが丸っと活かされてくるのも見ていて気持ちがいい。
何よりずっと漂ってた「この主人公頭おかしいだろ…」感がしっかり頭おかしい奴として回収されることに感動する。もう前作からそういうギャグだと思って笑ってたところにいい意味で冷や水をぶっかけられる感覚。これはこの作品にしか作れないホラー体験だと思う。
総評として、ラストだけは掛け値なしに素晴らしいと思うがそれ以外には本当に見る価値を見出せない。
前作はチープな部分含めてコメディ的に盛り上がる映画になっていたと思うが、今回はチープを超えた状況の癖に真面目な顔をしている場面が頻発するので、突っ込んで楽しむ前に困惑と疑問が先に来て純粋に楽しめず、目玉攻略で仲間との絆や自己犠牲を描かれても前提がおかしいので全く入ってこない。
ラストのためだけに90分見ろというのは普通に時間が勿体無いのでオススメは全くできない。
もっと中盤を練って作れば面白くなったと思うし、なんなら前作と合体させて2時間ぐらいに再編集すればコメディ要素ありのネット発ホラーとしてかなりの良作になったと思えることも含め、とにかく勿体無い映画だと感じた。

 
   
  
  
 