「答えは自ら探すもの」安楽死のススメ がっきーさんの映画レビュー(感想・評価)
答えは自ら探すもの
あえて分かりやすく、
あくまで「きっかけ」と、思考を「委ねてくれている」のがこの作品。
見る側が「結果」や「答え」を求めたいのならば他の作品を観たほうがいい。
各登場人物の「ちっとも」「ちっちゃな」「すっごく」といったような「っ」を用いた構文が印象的。あと、複数回同じフレーズをを繰り返すのも。
素直に感情が伝わってくる。
言葉のリズムや言葉選びが、他媒体で拝見した監督の過去作に通ずるところがあり、
それを存分に堪能できる安楽死のススメだった。
自分の時間をどう使うか、
選択肢は何があるか、
自分にとって生きることとは、
…を自ら能動的に思考を巡らせる、主体的に考えてみる。
テーマをきっかけに、
こちらに投げ掛けているのが本作のような気がする。
多分テーマは何にしても、軸はそこのところなのではないか
そして、折角ならばそのテーマに「普段触れづらいとされるようなものを設定してみる」というのが良い。
多分これは岡﨑監督の次回作、うぉっしゅにも通じるところかと思う。
すべての出演者の皆様が魅力的で
細やかな表情でのやり取りが染みるシーンも多々あった。
特筆すべきなのは石原さん、田中さん、海老沢さん。
「実際にいそう」という人物造形と、田中さん演じる氷川の変化は、大きくはないけれど丁寧に心開く様子がよく表現されていたと思う。
また音楽についてもとても良かった。
各シーンごとに全く異なる色を演出出来ており、今も耳に残る。
広く深く勉強された方が作られているのではないか。
特に、主人公が安楽死ツアーのチラシに出会う瞬間の楽曲が個人的に好きだった。
何よりもその時の彼らが感じられるような、作品であり、記録でもあると思った。
まさに「撮った時間」のことが想像できるような。「生」の景色や芝居がそこに残っているような。
「その瞬間が確かにそこに残っている」ということにとても大きな意味があるのではないかと。
拝見した回には監督1名の舞台挨拶もあった。
「人のために作った気持ちは1ミリもなく、僕が僕のために、僕を救うために作った」
というような挨拶で全てが腑に落ちた。
映画として、画面が暗いとか、表情が見えづらい等、もちろん「もう少しこうしたほうが」という部分多々はあれど、
この作品の意味というか、なんというか、
それって多分そこじゃないところにあるのだろうと思わされたのが自分にとって大きな収穫。
12日に拝見して本当に良かった。
作品、そして監督の挨拶含め、
トータルでの鑑賞体験に星を5つつけたい。
今日は何をしようか、明日は何をしようか。
来年は、再来年は。
その日から私は少し前向きに人生を生きるようになった。