「最後までわからない「事実」」カレンダー・キラー R41さんの映画レビュー(感想・評価)
最後までわからない「事実」
ドイツの社会問題である女性への暴力
これに連続殺人鬼を掛け合わせた作品
さて、
この作品の構造が最後までわからないことがこの物語の面白さだろう。
カレンダーキラーと称される連続殺人鬼
帰宅ヘルプホットラインというボランティアをするジュールス
何件かの利用者の実態
そして主人公クララの登場
彼女が夫から受け続けているDV
そしてそのクララがカレンダーキラーから受けた殺人予告
このまったくつながりそうもない出来事だが、最後に顛末がわかる。
しかし、
謎なのがジュールスの父
彼の行動は一見するとジュールスの手助けをしているかのように思える。
彼の目的も最後に明かされるのだが、この父の動き方はまったく理解できない。
彼の実力は相当なもので、いち早くクララの別荘を探し当ててしまう。
しかし彼の目的はそんなところにはない。
息子ジュールスの居場所を特定することが彼の目的。
そして最後の土壇場まで彼は隠れて様子を窺っていたことがわかる。
サンタの男をマルティンがボコボコにしていたのを見ていたからだ。
しかしながら、冒頭からすでに「彼」は「そこ」にいたことになる。
つまりそれが「当日」だったからで、帰宅した彼らに断罪する予定だった。
クララは娘の状態を心配し、ヴィコに見てほしいと依頼する。
これが物語をMAXややこしくさせていた。
彼は何故侵入者がいるのかわからず、何を奇妙なことをしているのか様子を窺っていたことが最後にわかる。
父が息子を探し出せない理由がそこにあったのだろう。
ネタバレになるのでこれ以上は語らないが、物語の作りとしては面白く、スリリングだった。
さて、、
エンドロール前に「ドイツでは4分の1の女性が親しい人からの暴力を経験」とあるが、知らないこととはいえ、どこにでも社会問題はあるのだと思わされた。
手足が自由になったクララが、夫など助けることなくすぐに娘の元に行ったのもよかった。
逆に、カレンダーキラーという殺人鬼になってまでこの社会問題を解決したいと思う気持ちに同情しないわけにはいかない。
彼の助けたいと思う気持ちと、殺したいと思う気持ちの同居は誰にでもあるものだ。
それが人間であり、だからこそ社会が救援者となるべきなのだが、あのSMクラブのように、ドイツでもまた権力者が率先してこの「異常」を楽しんでいることをこの作品が取り上げている。
フジテレビ問題がタイムリーだったことで、この作品が描く社会問題の根源を垣間見た気持ちになった。
悪くない。むしろ面白かった。