「報復の連鎖を止めるのは「赦しと愛」。 ――細田守監督が作品に込めた想いとは」果てしなきスカーレット ななやおさんの映画レビュー(感想・評価)
報復の連鎖を止めるのは「赦しと愛」。 ――細田守監督が作品に込めた想いとは
本作は、復讐劇の元祖とも言われるシェイクスピアの「ハムレット」をモチーフにした作品だという。
この背景を知ってから観るのと、知らずに観るのとでは、作品の受け取り方は大きく変わるのではないかと思う。
細田守監督によると、本作の制作が始まったのはコロナ禍が明けた頃。
しかしその一方で、世界ではさまざまな争いが次々と起こるようになっていた。
その光景を目にするうちに、
「報復が連鎖した先には、いったい何があるのだろうか」
そう感じたことが、作品誕生のきっかけだったという。
深い遺恨や復讐心が生まれ続ける世界。
「決して平和とは言えないこの世界で、“復讐”というテーマをどう描くのか」を考え続けながら作られたのが、本作なのだそうだ。
原典である「ハムレット」では、亡霊となった父親が息子ハムレットに「許すな」と告げることで、復讐劇が始まる。
しかし本作では、その問いが反転する。
もし、父親が「許せ」と言ったらどうなるのか。
自分の父を殺した相手を、人は本当に赦すことができるのか。
「赦すべきか、赦さぬべきか」
――それが問題だ。
テーマは明快だ。
けれど、その選択はきっと身を斬るような苦しみを伴う。
「汝の敵を愛せよ」
新約聖書にある有名な言葉。
悪意を抱く者に対して、慈愛をもって接しなさいと神は説く。
そして時に、最も深い悪意とは“無関心”なのかもしれない、と私は思う。
どうしても許せない。
絶対に赦せない。
穏やかだった血と肉が、一気に沸騰するような怒りが湧いたとき、
人はどう振る舞うのだろう。
そのとき、スカーレットが抱えていた、身を引き裂くような苦しみを、
ほんの少しだけ想像できた気がした。
「赦す」という行為は、なにも大げさなものではない。
それは、ほんのわずかな「想像力」。
そこにはいない誰かを、
ほんの少しだけ慮る時間。
私自身、シェイクスピアに詳しいわけではない。
それでも、この作品が投げかけてくる問いは、十分に伝わってきた。
より深く味わいたい人には、
戯曲「ハムレット」や「マクベス」を事前に知っておくのもいいと思う。
演出はやや戯曲的で説明も多く、そこを冗長に感じる人もいるかもしれない。
一方で、小学校などの道徳の授業で、
「生きるとは何か」「赦しとは何か」を考えるための材料として上映するのには、
これほど、最適な映画があるだろうか?宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」とあわせて多くの小学生に観てもらいたい作品であると個人的には思う。
評価は星3つ。
ただし、作品全体を勇敢に背負った芦田愛菜さんの大いなる奮闘に、プラス1。
彼女の苦悩が、終始スクリーン越しに伝わってくるようでした。
愛菜ちゃん、お疲れさまでした☕️
歌も、とても素敵でしたよ♪
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