「低評価はごもっともと思いますがあえて言います」果てしなきスカーレット akdtmhtm2(64967さんの映画レビュー(感想・評価)
低評価はごもっともと思いますがあえて言います
良作なんですけど、低評価の声にも「ごもっともでございます」と頭を下げざるをえないのが本作の困りどころです。
さて、ではその“残念な理由”を、紅茶でも飲みながら語りましょうか。
●まず音楽が――ちょっとイケてませんの
本作では音楽が非常に重要な役割を担っている……はずなのですが、その“運命を変える歌”がですね、高校の文化祭レベル。
いや、文化祭が悪いわけじゃないんです。ただ、ヒロインが精神的に天と地をひっくり返すほどの衝撃を受ける歌が、どうにもこうにも“軽い”のです。
「ここで米津玄師でも流れてくれたら……」と思った観客が何人いたことでしょう。
おまけに差し込まれるマサラムービー風ダンスシーンが“ローポリ”。安い。やす~い。ポリゴン数の節約は家計だけにしてほしいところです。
本来なら「できないものはやらない」という選択肢もあったはずですが、作ってしまった。作ったからには差し込みたくなった。お蔵入りという選択肢もあったのに……でも結局やった。
その結果、20年前なら「頑張ったね!」と言ってもらえたであろうMV風パートが、本作では気まずさ満点になってしまいました。
これはさすがに、監督の責任と言わざるを得ません。
●邦画伝統の“チンパンジー扱い問題”
これは本作特有ではないのですが……邦画は「観客は説明しないと理解できませんよね?」とばかりに、大事なことを全部セリフで説明してしまう悪癖があります。
ラノベ学園ドラマならいいんです。むしろ説明してナンボ。
でも本作のようなシリアス復讐劇で「復讐だ復讐だ」と連呼してしまうと、一気に“復讐コント”になってしまいます。
ヒロインの狂気も、演出で示せばよいところを、敵役に「王女はケダモノか?」なんて言わせてしまう。
それを言った瞬間、観客はこう思うわけです――
「あ、そう感じてほしいんですね監督」
『進撃の巨人』のミカサ登場シーンのように、説明ではなく“演出”でわからせることは可能なのです。
『ベルセルク』の鉄塊の名文句のように。
本作はそこが足りない。だから“薄い”と言われてしまう。これは仕方ありません。
いっそヒロイン登場の際に
「ほらご覧なさい!復讐に生きる気高きスカーレット様よ!」
「まあっ、あのお姿……狂ってらして素敵!」
くらい言わせたら、それはそれでギャグとして成立したでしょうに。
●そして最大の問題点――男がいらなかった
本作の構成とテーマなら、スカーレットの傍らに“男”は不要でした。
その恋愛要素を入れる余裕があるのなら、他に割くべき部分はいくらでもあったはず。
むしろ女。
スカーレットと似た境遇ながら、別の道を歩んだ年長の女性――例えば看護師。
彼女が姉や母のような視線でついて回るほうが、はるかに自然で筋が通っていたと思います。
若手作家なら入れられたでしょうし、女性脚本家ならなおさら得意な領域です。
“自分にない才能を呼び寄せる”のが監督業なのだと、改めて感じました。
●それでも、良作なんです
辛辣なことを申し上げましたが、私は皆さんにも見て頂きたい。
不器用で、説教くさくて、大人には少しイラッと来るかもしれない。でも――
本作は「普通の十代、小中高生に向けて、とにかく分かりやすく作っている」。
そう考えれば、よく出来ています。
おそらく監督は、自分と同世代の大人にはもう期待していないのでしょう。
若い人たちに、まっすぐ言葉を届けたかったのだと思います。
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