「サスカッチたちと旅をした気分になる」サスカッチ・サンセット tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
サスカッチたちと旅をした気分になる
サスカッチたちの春夏秋冬の営みを、ただ淡々と描くだけという発想と着眼点が面白い。
当然、台詞はないのだが、彼らが、一箇所に定住せず、常に移動し続けていたり、(魚は食べるが)基本的に草食性であったり、一夫一婦制であったりということはよく分かるし、これから何が起こるのだろうという興味で、知らず知らずに画面に引き込まれる。
CGではないサスカッチには、独特の味があって好感が持てるものの、4匹のサスカッチの顔の識別が難しく、誰が何をしているのかが分からない場面があったので、ここのところは、もう少し、メーキャップに工夫を凝らしてもらいたかったと思う。
春に、一匹のオスがピューマに殺され、夏に、もう一匹のオスが水辺の事故で命を落とす一方で、秋には、新たな命が誕生するといった具合に、「生命の循環」を描いているところには深みを感じるし、数を数えようとしたり、自分の手と会話しようとする仕草や、特定のリズムで木を叩いて仲間を探したり、死んだ仲間を埋葬したり(これが人間に見つからない理由か?)といった習性から、ある程度の「知性」が感じられるところも興味深い。
道路や、木に残されたバツ印や、キャンプの道具等によって、人間の存在感が徐々に大きくなっていく後半の展開からは、UMAが発見されてしまうことに対する危機感だけでなく、文明と遭遇した彼らの、少しお下品なリアクションも楽しめる。
特に、メスが、音楽の流れるラジカセを抱きしめて涙ぐむシーンでは、猿がウォークマンを聴くCMが思い出されて、てっきりしんみりするのかと予想していたら、まさかのヒステリックな破壊行動に、「えっ、そっち?」と驚いてしまった。
彼らが、ビッグフットの博物館に辿り着くというラストにも、皮肉の効いた驚きがあって、独特の後味と余韻を感じることができる。
ただ、それまで、新たな仲間との出逢いを果たせないばかりか、次々に仲間を失ってきたサスカッチたちの孤独な姿を見せつけられてきただけに、もっと、「滅び行く者たちへの哀惜の念」や、新しい命による「微かな希望」のようなものが感じられるラストにできなかったものかと、少し物足りなく思ってしまった。
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