フロントラインのレビュー・感想・評価
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「これが真実」と言われると、安易に信じて熱狂する観客たち
同じコロナ禍のダイヤモンド・プリンセス号を舞台にした話なのに、HBOのドキュメンタリー『ラスト・クルーズ』とはかなり印象が異なった。
率直に言って、本作の内容が真実とは思えなかった。
本作は関係者への取材に基づき、「DMATの人々がひどく報道されているのが許せないから、本当の姿を知ってもらいたい」という動機から制作されたようだ。
この話を聞いて兵庫県知事選を思い出した。
「通訳」や「自死しようとする外国人女性」といった描写には「本当なのだろうか?」と疑問が拭えない。
仮に「自死しようとする外国人女性」が真実だったとしても、それを物語に組み込むのは品位に欠けるように感じた。
『ラスト・クルーズ』で描かれていた「外国人労働者に対して適切な感染対策がなされていなかった件」が本作では割愛されていたのも不信感を抱く要因。
この映画ではマスコミの製作陣が極悪に描かれているが、マスコミの中にも「医療従事者を差別するのはやめよう」と訴えていた人がいたように思う。
そういった視点を描かないのは、それこそ「切り取り」ではないか。
この映画の内容が真実かどうかはおいておいても、個人的には人間が多面的に描かれている作品を好むため、「DMATは正義、マスコミは悪」といった単純な構図も、この映画を好きになれない理由。
たしかにコロナ対応にあたった医療関係者を差別するのはひどいことだと思うが、中国以外では初めて集団感染を引き起こしてしまったのは事実である。
差別問題とは別に反省すべき点はあるはずなのに、問題点を指摘した感染症対策専門の教授を鼻で笑うような場面は不快だった。
愛ある仕事をするカッコ良さに痺れました!
過酷な現場の話だからこの第一声はどうかと思うけど‥とにかく、自分の仕事をする男たちがカッコいい!!カッコ良すぎる!
事態がよくわからず我が身の不安や疑念が先行する周囲とも戦いながら、現場のプロフェッショナルたちが、大事にするべきこと、優先すべきことに真摯に向かい合っていたんだなと、感動しました ドラマ的だと、厚労省の人間なんかはフロントラインでさえ医者や乗船客をないがしろにしてお役所的な立場に立ちそうだけど、松坂桃李は、本当の意味で自分の職務を全うしようとする人で、仕事に人に愛があった
小栗旬と松坂桃李の関係性、あの立場の違いで信頼し合えているかんじ、そこがとても嬉しくて胸熱でした
そして窪塚洋介のかっこいいこと!
逆に、現場で戦ってる人の日常、家族が、心なく冷たい仕打ちに脅かされるのに憤りをかんじて、なんだか非常時の人間の両極端を見せられた気がしました
いろいろ感動したけど、しつこいですけど愛ある仕事をする人たちのカッコ良さに痺れました!
真実は現場にある、でも
冒頭、誰もいない長い長い廊下を進むと、客室からストレッチャーで運び出される乗客の姿。
同行する乗員の女性が操作すると大きなハッチが開き、夜の海で巡視船が接近しているのがわかる。
彼女は着けていたマスクを顎にズラし、束の間の外気を大きく吸い込む。
そしてカメラは彼女の横をすり抜け、ハッチから外に出て、高度を上げながら徐々にその巨大な客船の全容を映し出す。
まずこのワンカットの映像でワクワクが止まらない。
はい、もう最高。
ただ、物語はそんなに単純なものではなかった。
この当時私自身、新型のウィルスというものに興味も危機感もほとんど持っていなかった。
もちろんこの映画にはこの映画を作品として成立させるための解釈や演出が施されていて、あの事件において、マスコミが常に悪であり、「DMAT」がすべて正しかったと信じるのはまた危険なことだということを自覚した上で、私のあの事件についての認識は、作中でまさにあのTV局が報じた情報によるものがほぼすべてだった。
当時の私は、朝のワイドショーを仕事の支度がてら横目で見ながら「寄せ集めの医療チームがパニックになって後手後手踏んでるんだろうな」くらいに思っていたことを思うと、ここで登場するテレビマンたちの放送する先にはまさに私という視聴者がいる。
乗客の引き受け先を善意で申し出た藤田医科大は、私のかつて勤めた地区にあり、仕事柄馴染みの深い場所でもあるのに、この経緯をほぼ私は覚えていなかった。
それなのに、あのすぐに船を下ろされたという医療従事者の上げたYouTubeの動画のことはよく覚えている。
そう。
マスコミが煽るニュースのみを娯楽混じりになんとなく咀嚼していた自分。
私が作中に「自分」を自覚されられたことが、この映画における最大のリアルだった。
いろいろな映画作品を観る中で、私は「圧倒的不利な状況、半ば敗北がほぼ確定している環境において、それでも自分の仕事・役目をまっとうしようとする人々の姿」というヤツに滅法弱い。
この作品はまさに私のそのツボに刺さりまくったおかげで、上映時間の1/3はずっとウルウルしてたと思う。
そして最後。船内での対応が終わり、池松壮亮演ずる隊員がようやく家に帰って奥さんにかけた言葉。
これだけ危険で十分な報酬もないような理不尽な仕事に、自らの生命の危険を晒したら、おそらく私の帰宅第一声は、その愚痴か「大変だったよ」だろう。家庭に戻った時くらい、感謝や労いの言葉が欲しいのは当たり前の感情だ。
しかし、彼自身が船内で未知のウィルス、そして社会を取り巻く偏見や誤解という大きな敵と闘っている間、その家族もまた、周りからの差別と闘っていた。
それを察した彼が発した第一声。
「何か辛いことはなかった?」
思わず涙がこぼれるのを止められなかった。
登場する人物たちも、決してスーパーヒーローではなく、毅然と現実に向き合い最善の策を講じながら、それでも悩み苦しみ、もがいている。
エンドロールで、取材した事実と作中の演出には改編があることを但し書きとして表しているのも作り手の誠実さとして伝わった。
印象的なシーンは本当に数多い。
船内の乗客が、対応する医療チームや客船の搭乗クルーに対して感謝のメッセージを貼り出しているシーン。
重篤になった夫を下ろしたことで、残された家族の不安を取り除くために医療チームに掛け合う乗員。
言葉の壁を取り除くために、この一件においては医療従事者だけでなく、船の乗員たちが最後まで協力していたことも描かれている。
繰り返しになるが、この映画を成立させるためのバイアスは必ずある。
マスコミを対立軸に置いた分、この作品にTV局の協賛はない(TVやラジオでも、これだけ有名俳優を並べた作品なのにその紹介はあまり見かけない)。
逆に言えば、今回制作や取材に協力してくれた人々や組織を作中でむやみに悪く描くことはできないということ。
我々視聴者は、いろいろな側面から情報を得て、考えることをしなければ、核心には近付くことはできない。
この作品だけを見て「やっぱりTVは『マスゴミ』だ」と評するのは間違っている。
そういう短絡的な思い込みは、まさに今、都議選や参院選を前にマスコミとSNSの対立でさらに激化している現実も見誤ることになりかねない。
マスコミ各社の報道が、制作者やスポンサー、視聴率という偏向されやすいごく少数の意向によって構成されている一方で、SNSには大量の間違いやデマや利益誘導が紛れ込んでいる。
この作品が、現場で献身的に働く人々を称賛し心から感謝を伝えるための映画であることに加えて、我々には「正しく見るための目と耳と考える頭」が必要なんだ。
試された対応
この映画は観るか観まいか悩んでいた
それはこれらの緊急事態に対応できるかは自分自身も心許なく、先ず自分自身が咀嚼出来ていない状況を追体験することをおっくうに感じたからに他ならない
映画は真摯にクルーズ船の状況を追いかける形で、感情移入出来る余地は極力排除してある
唯一例外はアメリカ人夫婦のエピソードであるし、両親が感染し兄弟のみが船に残り助け合うエピソード位なのかな?
これに反して硬直化した制度や縄張り意識に対しての考察は、この現場にしてかなり比重をさいて盛り込まれていてポイントは高い
制度も医療も人を助けるという原点から、乗り越えようという気概がテーマだし、これから生きていくためへの羅針盤になるべき映画だった
よい映画を上映して下さってありがとうございました。
5年間を振り返りながらも泣ける
窪塚かっけ〜!
見えるもの聞こえてくることの裏側にあること
彼らの使命感にただただ感動した
2020年から始まったコロナ禍。日本での始まりはダイヤモンド・プリンセス号だった。今から5年前の物語。すでにそこそこ過去のようにも感じるが、まだ5年前とも感じる。
医療ボランティア組織のDMATを中心に描かれた脚本がいい。どこも引き受けてくれないからDMATに依頼が来たという流れ。彼らは業務で来ているわけではない。あくまで医療関係者として必要だと思う行動をとっただけだ。しかも役人たちが持ち込むルールと法律に制限されることになる。それでも彼らはブレない。行動原理が確かだから。
メインビジュアルに使われている4人の俳優がとにかく素晴らしい。特に現場で指揮を執る仙道を演じる窪塚洋介がよかった。ちょっとふざけたような態度なのに使命感がめちゃめちゃ強い。小栗旬演じる結城との関係性もいい。そこに松坂桃李演じる厚労省の立松が絡んでくる。役人らしからぬ柔軟性と押しの強さ、そして仕事が早いところにシビレた。
実はちょっとチープな話になっているんじゃないかと観ることを迷っていた。観ることになったのもスケジュール的にちょうどよかったから。でも、こんな熱い思いを抱えた彼らの奮闘に感動しないわけがなかった。いや、ここで泣かせます!みたいなシーンがあるわけではない(泣かせるシーンがあったと感じた人もいるかもしれないが)。ちょっとした彼らの言葉にいつの間にか頬を濡らしてしまった。DMAT隊員が受けた風評被害的なものは、その後日本全土の医療関係者が受けることになる。そんな理不尽さを思い出しながら、彼らを含めた医療従事者へのリスペクトを強く持たないとなと改めて思う。
最優先は患者の命を救うこと
2020年、ダイヤモンド・プリンセス号での新型コロナ集団感染は、今もなお記憶に新しく、わざわざ映画で見る程でもないかもと思っていたが、鑑賞後は本当に見て良かったと思う。
感染症の専門ではないDMATが対応にあたったこと、切迫した状況でも隊員やクルーは逃げずに一人でも多くの命を救おうとしたこと、コロナによる差別やマスコミによる偏見報道など、この映画を見なければ知らなかったことがたくさんあった。
当時最前線で対応したDMATの方々に最大限の敬意を払うと共に、今後未知のウイルスが国内に来たとき、今回のような偏見や差別が起きないよう、さまざまな情報を鵜呑みにせず、自分で調べることも重要だなと感じた。
あと余談ですが、滝藤賢一さんの役どころが「見える子ちゃん」に引き続き泣かされました。
ドラマスペシャル
メディアは批判ばかり、でも実際は。
あのとき日本中が注目していたので、これを見ると皆さん何かしらの想いが込み上げてくるのではと思います。
私も当時、どうなってしまうんだろうと不安になっていたことを思い出しました。
メディアでは対応の批判などネガティブなことばかり報道されていましたが、実際の現場ではこんなことが起きていたんですね。
日本史上にも残る大きな出来事の中で、現場の方たちがどのように尽力されたかを知れる良い作品だったと思います。
ちなみに、私はハンカチ無しでは観れませんでした。
作品自体は
骨太で見応えがあって素晴らしい。
マスゴミが製作委員会に入っていないこともあって、違和感なく観られた。
DMATをはじめとする関係者の方々のヒロイズムには涙した。
そこから始まったコロナ禍下での彼らの献身には感謝してもしきれないし、
尊崇の念を禁じ得ない。
小栗旬や松坂桃李、池松壮亮の演技にも引き込まれた。
その上を行って異彩を放ったのが窪塚洋介で見事だった。
良い映画だろうということは想定していた。
興味もあった。
それでも足を運ぶことに二の足を踏んだのは
今まさに感じているようなどす黒い感情が渦巻くから。
本作の中にあるようにマスゴミは確かにひどい。
これでも何らかの忖度をしていて描き切れていないだろうと感じるほどに。
そして、その後押しをしているのがワイドショー民と揶揄される
小泉の米パフォーマンスに踊らされるような方々だろう。
このテーマを扱うからにはここを避けては通れない。
派手でない分ある意味リアルで上記の感情が次々湧いた。
観客の皆様は自分はそうじゃないと思ったのかな。
ほとんどの方はもうマスクはしていなかったし、
ワクチンも打っていないだろうけれど・・・・。
折角観賞したのに気分がだだ下がりなのは本意ではない。
今だからこそ観るべき作品
そとの人の無責任さが際立つ事件だったと思う
この映画はドキュメンタリー風のエンターテインメントと思う。Fukushimaと同じだね。
Fukushimaとの違いは,例のポンコツ総理が自分が主導するんだとめちゃめちゃにしたのに対し,今回は前例のないウィルスとの戦いを政治家ではなく現場の医者やクルー,官僚などが道を切り開いていく物語だったと思う。
その意味で,結城医師(小栗)は精いっぱい頑張っていたし,立松(松坂)は一見クールで四角四面な官僚かと思いきや,虚実をうまく使って周りの者たちを動かす辣腕ぶりを発揮した。こんな医師や官僚なら,きっとこの先の未来は明るい・・・はずだった。
そうだね六合医師(吹越),いたねー。確かに専門家かもしれないけど,結局この状況の経験は全くなかったことが露呈して,ただ,混乱と悪意を振りまいただけのア〇医師。
この映画では,現場の足を引っ張るヒーロー気取りのマスコミやユーチューバー,あるいは事なかれ主義と保身しか考えない政治家や官僚はあまりでてこなかった。そこはいいところ。
エンターテインメントとしてみると,映画が始まったときに感じた「チリチリとした皮膚感」は当事者だった経験が当時のことを想起するからだろうか?また,一番の盛り上がり場面は藤田総合病院に輸送する場面か?しかし緩い。事実だとしても演出次第で心に残るものになっただろうに,なぜか尻すぼみに感じた。役者はとても誠実に丁寧に演じていただけに演出的な緩さを感じた。とはいえ,ハリウッド映画のように血を吐いたり,パニックになったり,ゾンビが登場したり,殺し屋とハントの一騎打ちがあったなんてことはない。だがしかし,そこが惜しい(必要だとは言っていない)。ひたすらお仕事に徹しているだけの映画にも見える。
じゃあどうしろと?事実に近づけば地味になるし,過度な演出を付ければ嘘くさくなる。この辺が落としどころなのかな?
無力感を味方につけた傑作。
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