フロントラインのレビュー・感想・評価
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人道を基準にする模範解答
目に見えぬ圧に気を遣いすぎてやしませんか?
国宝があっという間の瞬きするのも惜しい3時間だったのがまだ記憶に新しいだけに、映画館の中では特殊な時間が流れているのだなと思う。家だと確実に倍速で観てしまう。
ダイヤモンドプリンセス号から人を外に出すまでだけが描かれて居て、テンポ悪し。音楽悪し。重苦しい空気がずっと続く。
ただ、キャスト良し。演技よし。
滝藤賢一の缶コーヒーのシーン、ほんの少しの出演なのに爪痕残してる。
外国人の少年兄弟が抱き合うシーンも良かったなあ。
小栗旬はいつも通りの小栗旬、英語の問診かっこいい。
松坂桃李はお役人ということでどうしても御上先生を思い出すがもっと分かりやすくとても仕事の出来るいい人。
窪塚洋介はぶっきらぼうなしゃべり方が合っていて1本筋の通ったかっこいい役。
池松壮亮は、この人がいることで作品全体の質をあげていた。最後家に戻ったときはまずはシャワーを浴びてからと抱きつく妻を制止しろとツッコミ入れたくはなったけど。
それにしても、DMATと厚労省のプロモーションビデオとして模範解答が必要なの?人目を気にしてこんな仕上がりになっちゃってるの?
人道を基準にするのはとても素晴らしいことだと思うしかっこいい見せ場。
しかし、YouTube動画に反論しないのもモヤモヤ。
フィクションなんだからもっと颯爽とかっこよく描いても良かったんじゃないのかな。
事実を知りたいならドキュメンタリーを観る。私はかなりドキュメンタリー映画を観ているので、この作品はそうじゃないだろ?と期待していた。映画なんだからドラマとして人の心に訴えかける様な作りに吹っ切ってほしかった。
現実に最近起きたことをフィクションとして描いたものではタクラボの「神様お願い」が理想的。これを作った人は宅間孝行が安倍元首相暗殺事件を扱ったこの作品を観ておいてほしかった。
あの頃…
マスクの痕
当時は海外にいたので、プリンセス号のことはニュースで見ていました。もう5年も経つのですね。ガラガラの飛行機で帰国するたび、空港で駆け回るボランティアさんに「ご苦労様です」と思っていました。文句を言ってる人も多かったですが、ホテルで隔離される際も誰かが対応しているわけで、極限下のお仕事に頭が下がりました。あの頃は誰も彼もが何もわからぬまま必死に生きていて、この映画で描かれているような「名もなき方々の尽力があってこその今」だと改めて感謝する次第。実話ベースというのもありますが、傾向的に近い「新幹線大爆破」や「ラストマイル」などと比べると過剰な演出もなく、とても好感が持てました。医師たちの片言英語や吃音気味の検疫官など、とてもリアルでしたし。マスコミはハエかゴキブリのような扱いでしたが、おそらく現実もあんな感じだったのでしょうね・・・。小栗さんがカッコ良すぎたのでマイナス1ですが(笑)、窪塚さんや池松さんも良かったなぁ。あと「何かが抜け落ちてる」と感じたのは「政府の対応」でしょうか。厚労省の若手職員にすぎない松坂さんの独断ではあそこまで動かせないはずなので、裏側でもっと大変なことが起きていたはず。彼ら役人の苦悩や葛藤がもうちょっと見えたら良かったのにと思いました。
何が正しいのか…よく考えなくては
あの苦しかった時期の色々な日々を思い出した。忘れつつある現在、観る価値があるなと感じた。
ストーリーはあらすじ紹介の通りなのでネタバレもなにもない。
実話をベースとした話で、この世界的な騒動がまだ数年前の話だったんだよな、でもその数年前なのに、終息に向かったおかげで忘れつつあるのか・・・と自分に色々問いかけたくなりました。
一応ストーリー展開上、感動やお涙頂戴に繋がる話はあるものの、よくあるワンパターンな人間ドラマではなく、そういう人も居ただろな、キツく辛い状況だよなと心に痛みを感じるシーンも多々。当時、まだ詳細が見えずただただ「なんか危険度の高いヤバいウイルス」というマスコミ報道による情報しか知らなかったから、実際船の外ではこんな反応だったよなあと、…なんと言うかね。マスコミの印象操作や情報操作に実際振り回されていたよね、実際に対応していた人たちの事なんて考えていなかったよね皆んな。うん。
そういう何とも言えない後味で終わりました。
でも、駄作という意味ではない。とてもしっかり作られています。
いろいろと考えさせられる結果になりました。
でも。最初に書きましたが。
みなさん、新型コロナウイルスのあの2年半、まだ鮮明に憶えていますか?
徐々に忘れつつある、って人はこの映画を見て、当時を思い出すべき。
そんな映画です。
最前線(フロントライン)で戦うものたちよ
娘を初めて映画館へ連れて行ったのは3才の時で「トイ・ストーリー」だった。
もう30過ぎたが、今でも年に数回は一緒に映画館へ行く。「F1」に行くかと聞いたら「興味ない」と言うので「フロントライン」へ。来週私の誕生日が来るので娘のオゴリである。
6月28日(土)
新宿ピカデリーで「フロントライン」を。昼前の回でも結構入っていた。
最近は備忘録の意味でストーリーを割りと細かく書いているのだが、今回は書かない。2020年2月に実際に起こった、事実に基づく物語だからである。
あのニュースも観た。あの動画も観た。ワイドショーでも連日報道されていた。
船内で治療にあたっていたDMATがウイルス専門医ではなく災害派遣医療チームである事は報道されていただろうか(情けない事に記憶にない)。
乗客乗員56カ国3711名と医療従事者はダイアモンド・プリンセス号の船内で大変な思いをしていたのだと改めて気付かされた。
当時、船が一度離岸すると発表された時、何故?と思ったが、生活排水処理と給水のためと知り、港に停泊したままでは出来ない事だと納得した。確かに、そういう事は報道されていた。
大学教授の動画に便乗して船内の隔離状況を批判し、あおっていた政治家もいた。
最初に厚労省の役人・立松(松坂桃李)が登場した時、また現場を混乱させるような事をするのだと思っていたら、DMATの指揮官・結城(小栗旬)の意見を取り入れ、積極的に解決に向かって努力していた。彼のような役人も存在したのだろう。結城は立松に言う「偉くなれよ」。
船内で対応にあたるDMATの真田(池松壮亮)、仙道(窪塚洋介)も尽力していた。医療従事者には頭が下がる。陽性患者を受け入れた藤田医科大学病院の宮田(滝藤賢一)が搬送時に7人の重症化した患者が出る中、なんとか無事に受け入れを終え、缶コーヒーで真田と乾杯するのである。
また、乗員(クルー)も大変だっただろう。乗客が全員下船するまで、彼らも下船出来なかった。感染のリスクがある中で誰かが面倒を観なくては乗客は船内に留まる事も出来ないからだ。そして映画でも彼らの努力は描かれていた(少しだったけど)。ドアに貼られたクルーへの感謝の言葉の数々。
多くの人たちの努力と献身で非常事態を乗り越えたのだ。
エンドクレジットで、映画的に複数の人達を一人に集約して描かれている旨の説明がある。最後に下船したのは船長だった事を告げて映画は終わる。
あれから5年でよく映画化出来たものである。ある意味、骨太な映画だった。
マスコミが最大の敵
2025年劇場鑑賞194本目。
エンドロール後映像無し。
観たい映画が毎週重なりまくって、でもこの映画なら3週目でもまともな時間にまだやっているはずと信じて今週まで我慢していました。
職場で唯一コロナに感染せず、家族が感染しても自分だけ感染しなかった自分ですが、福祉施設の責任者として、コロナが利用者に出たと聞いた時は、4DXでもう券を購入していたキングダムを諦めて休日出勤して対応に追われた記憶が蘇りました。今ならLINEで5日お休みしてくださいで済むのですが、当時は誰が濃厚接触者の可能性があるのか全員確認し、家族1人1人に電話して次の日利用するかどうか数時間かけて聞いて回ったものです。
そんな自分のエピソードなど全然大した事ない、本作はダイヤモンドプリンセス号のコロナ発生に関わった方たちの話で、遠く離れたクルーズ船の事などなんとなくしか覚えておらず、なんか数カ月隔離されてたんだっけくらいの誤認識していたほどです。
当時のニュースでも船内環境の酷さみたいなのが報道されていましたが、別に誰かが悪意を持ったり、頭悪すぎてそういうことになっていたりするわけない、というのは分かっていましたし、医療従事者当人やその家族を罪人のように扱うのは自分も腹が立っていて、自分の所で感染者が出た時も本人にも責任なんかない、申し訳ないとか思わなくていい、周りの人にも絶対に、責めることがあってはならない、と固く言っていましたが、逆にそういう注意をわざわざしないといけない程当時のコロナに対する恐怖や嫌悪感がすさまじく、それをいたずらに助長していたのが報道だというのがこの作品の裏テーマだと思いました。「でっちあげ」のマスコミといい、マジでいらんことするな。マスコミのせいで亡くなった方がいるかもしれないと思うと腹が立ちました。
また、ダイヤモンドプリンセス号に関わった人たちだけでなく、当時風評被害にさらされながら、自分が感染するリスクもあるのに頑張られた方々に改めて感謝の意を述べたいです。
松坂桃李演じる官僚がほんと頼りになってカッコよく、この前の御上先生の官僚もカッコ良かったので、カッコいい官僚俳優としてこのまま新たな官僚ヒーローを演じて欲しいです。あと窪塚洋介もカッコ良かったのですが、最初フルーツポンチの村上だと思ってました(笑)
マスコミの扇動が怖い
これが真実ならDMATの医療団体、お役所仕事ではなく臨機応変に対応していた厚労省の人達は本当に頑張っていた事が判る。
物語の最初辺りからマスコミがよりセンセーショナルな内容で煽っていて、医療責任者から「面白がってませんか?」の問いに段々現場に寄り添う取材にするマスコミの記者。
未知と言うのは恐ろしい。
無知と偏見。
解らないから現場で活動している医療従事者の家族をバイキン扱いをする。
自分もコロナのパンデミックの時にガラガラのバス、マスクをしてない人への冷たい眼差し。
割と最近の出来事だった。
モデルになっている医師の記事を読んだ。
「解らない事に恐怖するのは当然の事だけど、その事で誰かを攻撃する事はしないで頂きたい」この言葉は重かった。
乗客を演じる外国人の人達の演技が良かった。
「逃げそこなった人達」の映画
「君子、危うきに近寄らず」の社会で、
「危うき」から逃げなかった人たちの映画。
というか、責任感のあまり「逃げそこなった人達」の映画。
未知な感染症に対して行政が機能していない孤立無援な状況で、
感染症の専門家でもない「逃げそこなった人達」が、
過剰な責任を負わされて右往左往しながら、
その場その場でイチカバチカの決断を繰り返していく。
避けがたい流れとして、彼らは責任を問われる状況に追い込まれる。
テレビは無責任に叩くし、政府は責任どころか説明責任すら果たさない。
当たり前が壊れた時、当たり前なルールは通用しない。
この混乱した状況で、我々にとって最も大切な「ある原則」が提示される。
そういう映画。
「逃げそこなった人達」の全員がカッコイイ。
この映画は、深刻に観てもいいし、笑って観てもいい。
現実というものは、悲惨で滑稽なものだからだ。
しかし、少なくとも我々には「逃げそこなった人達」を守る義務があると肝に銘じたい。
マジで。
で、ちょっと気になった部分がある。
感染対策の問題点を指摘した「専門家」の扱いはどうよ?
いまとなっては、この「専門家」の指摘に間違いがあったことがわかってはいる。
新型コロナは空気感染するし、
あの船の空調システムは汚染された船室の空気を回収して各船室に循環させるため、
あの船の中に安全だと言い切れる場所なんてどこにもなく、
安全な場所と危険な場所を分けるなんてできっこなかった。
しかし、あの船が非常に危険な状況にあるという「専門家」の指摘は的確だった。
さらに、この「専門家」もまた、責任感のあまり、あえて顔と名前を晒して告発した、「逃げそこなった人達」の一人だ。
少なくとも我々には「逃げそこなった人達」を守る義務がある。
だから言うけど、
この「専門家」の指摘に対して真摯に対応するのが政府の責任だった。
しかし、政府は責任を果たさなかった。逃げた。
だとしたら、悪者は政府だったはずだ。具体的には自民党政権だ。
いまだに、自民党政権はワクチンの問題にもコロナ禍への対応についても、真摯に反省も対応もしていない。
しかし、この映画はそこには立ち入らなかった。
つまり、この映画のスタッフもまた「君子、危うきに近寄らず」なのかな?
それとも娯楽映画だから立ち入らなかったのか?
どっちにしても、「逃げそこなった人達」どうしを対立させて、「逃げた人達」を見逃すのは良くない。
豪華客船の中でどう対処したのかは理解できたが。
豪華客船ダイヤモンドプリンセス号の中で医療従事者達が患者達と向き合い、どう対処したのかは理解できたが、肝心の最初の患者からどう感染していったのかまでは残念ながら書かれていなかった。それは中国に対し、忖度したのか?とさえ思ってしまう。そもそも中国でのウィルスを、持ち帰ってきさえしなければ、ここまで問題にならなかったと個人的には思っている。悪いのは中国で、未だに責任を取っていないし(視点はずれるが、日本に対しては未だに慰安婦問題等で難癖つけてくるのに)。ただ、豪華客船の中でただ何もしていなかった訳でなく、医療従事者はじめ、厚生労働省は働きかけていたのだと言う事実のみは観ている者に伝わったのではないか?と私は感じました。
政治家はどこにいる。
増本淳氏が企画、脚本を担当している。
彼は元フジテレビプロデューサー。あのテレビ局の内情は内部告発であり信憑性が高い。
全編、DMATの医師・看護師、クルーが不当に評価されてきたことへの怒りと、その名誉回復への情熱に満ちている。
身を挺して救命に尽力している人々が激しい差別と排除に遭い、口惜しさと情けなさ、彼らへの感謝で、涙なしには見られない。
ただ、こうなると、どこまでが事実であるのかが気になる。
①厚労省の役人 立松(松坂桃李)はウソをついてでも、入院先を確保する。
②テレビ局の現場取材を行う、女性が報道の仕方に躊躇を感じる。
③400人を受け入れた愛知の病院はその後どうなったのか?
④現場のリーダー 仙道は具体的に、特定の人物として存在するのか?
彼はコロナウイルスを上陸させないことよりも目の前の命を救おうとする。
全て事実だとしたら驚くべきことだ。
組織とルールに逆らってでも、自分の信念を守り通す姿勢が、現場のスタッフのみならず、厚労省の役人や、患者を受け入れる病院にも広がっている姿には感謝しかない。
DMAT指揮官・結城(小栗旬)が報道の女性に「どこか面白がっていませんか?」の言葉に女性は答えることができない。あの忸怩たる思いは事実だと思いたいが、ここは信用できない。
ただ、あのマスコミの態度を助長しているのは私たちなのかもしれないとも思う。
ひとつ気になるのはこの映画の中で「政治家」は全く登場しないことだ。
立松が意見を上申するのは厚労省の役人だ。政治家ではない。
そこは暗澹たる気分になった。政治家が何かを決断した形跡は見えない。
最後に、立松は医師が行うべき判断を独自にして、陰性の兄と陽性の弟を同室にする。
おそらく明確なルール違反であろうが、それが尊い。
最初いけ好かないいなややつに見えたが、結城との関係がどんどん親密になっている。
「偉くなれよ、お前みたいな役人がいてくれれば現場の俺たちはもっと働きやすくなる」
なんという賛辞であろうか!
いつの間にか厚労省の役人をお前呼ばわりしているのもこの映画の真骨頂に思えた。
仙道医師(窪塚洋介)真田(池松壮亮)も素晴らしい。書きたいことありすぎ。
キャスティングにも配慮された佳作❤️
下馬評通りの佳作。あのダイヤモンド・プリンセス号で何が起きていたのか、人の生命を救うことに必至だった人々を描いた、愛と感動と涙の物語。本作は、医療従事者だけでなく官僚もマスコミも登場人物殆どみんな良い人に描かれてて、唯一の悪者 報道番組の上司も普段誠実な人柄の役が多い光石研さんで、脚本だけでなくキャスティングにも配慮された作品でした💕
但それだけに、世界を未曾有の大混乱に導いたコロナ禍の現場って、本当はもっともっと大変だったんだろうなぁと思わせる所もありました。
アフターコロナの世界より
記録映画として観るのが正解なのかな
他の方の評価が意外と高いのに驚いた。全般的にキャストの演技が控えめで淡々と物語が流れていく。主演が小栗旬なのでDMATがメインで話が進んでいくのだが客船に派遣されるまでの隊員たちの葛藤とか未知のウイルスに対しての不安など描かれることもなく(池松壮亮の家族だけサラッと)、また厚労省の役人である松坂桃李も患者の受け入れ先を何の苦労もなく(そう見える)決めていったりしてウラでどんな苦労があったのか全然見えない。DMATもどれくらいの隊員が派遣されたのかもわからず、窪塚洋介が現場で指揮を取っていたが全体像が全くわからず消化不良に終わってしまった。
医療従事者の方々には本当に感謝しかないのだが、取材したことが活かせてないのでは思ってしまった。喜びや悲しみ、葛藤や衝突などドラマとしての見せ場もなく中途半端な感が否めない。エンタメにするのが憚られる(?)のであるのなら記録映画としてきっちり作り込んでも良かったのでは。
ウィルスよりも怖いもの
メディアを疑うリテラシー、これ大事
観てよかった
この世界は誰かの献身の上で成り立っている
まずドキュメンタリーと言うものはなかなかに難しく、それが映画となると尚更だ。現実を元にしたフィクションと言われた方が気が楽だし、映画としては受け入れやすい。民間のメディア作品は一定の収益を求められるし、映画である以上、映画である事を多くの場合は求められる。娯楽や感情に刺激を与えてくれる芸術か物語か?現実の記録となると、この複雑で多面的に移り変わりゆく世界を正しく捉える事ができるのだろうか?ドキュメンタリー映画と聞くと、少しそう構えてしまう。今回はコロナ初期に、乗客約3700人が隔離されたダイヤモンド・プリンセス号における、政府と医療従事者、船のクルー側の観点から描いた作品だ。
物語は有事の際の仕事として行政の箇所は淡々と、そして時に仕事の上での人道と現実のぶつかり合いが起きて進んでいく。そこはリアリティが高いし、実際の現場でもそうなるだろうと言った内容だ。役人の無茶も現実にあり得そうな範囲の勝負だし、病院の調整も現実に起き得そうな議論だ。なので、そこまで劇的なイベントはなく、圧倒的なヒーローもいない。ただ映画的には目立たなくても、現実では大半が頭を抱える問題であり、向き合っているそれぞれが名もなきヒーローであり、主人公だ。
風評被害を恐れて、感染者を受け入れたくないと言う病院側。コロナに関わった医療従事者に子供を触れさせたくない親達。その気持ちは分かるが、今回はその被害を受けた行政や医療従事者側の苦しさや辛さを描いている。特に、DMATの隊員である池松壮亮が吐露する家族への心配や不安のシーンには心を打たれた。「僕の家族、隊員の家族のことは、誰が考えてくれるんですか?」子供を持つ親なら悔しくて泣きたくなる、自分は誰のために頑張ってるんだ?と叫びたくなるその状況。DMATはボランティアで成り立っていると映画では説明されていた。ボランティアで頑張っている人達が、悪気はないにしても迫害されてしまう世界。簡単な事ではないが、我々は誰かの犠牲や献身の上で、この世界が成り立っている事を忘れてはいけないと改めて思った。そして、彼のあの話し方は変わらずしっかりとした重みを持って、メッセージを腹の底に届けてくれる。小栗旬が病院内での議論で、「こんな非常時に対応するための医者だろう!」と言う言葉は、現実と、本来のその職業の役割とのぶつかり合いで、白熱した仕事の場で見られる情景だった。仕事の種類が違っても起きうる事だ。胸が苦しくなった。とは言え、普段は利益や利害で動いていても、ぎりぎりの所で残るのは自分の仕事への矜持ではなかろうかとは思うのです。最後の下船者は船長だった、この一文にも彼の仕事の矜持を感じ、皆がプロフェッショナルとして最善を尽くしたんだと思った。
一方で、乗客側の目線からすると、必ずしも十分と感じられる対応でなかった所があったのも事実だろう。ダイヤモンドプリンセスの中での対応に不満を挙げている人達も複数いる。常に満点の対応なんて難しい。現場は現場で最善を尽くすしかない。そして、それでも全てがハッピーエンドにはならないのがこの世界だ。ただ、このダイヤモンドプリンセスでの経験が、その後のコロナ対応に大いに役に立ったと言う事には当事者ではないが、当時の論調を考えると救われた気がした。
自分が好む映画的なイベントはあまりなかったが、俳優陣達はしっかりしていて、安心して観ていられたし、プロデューサーの増本さんが相当に取材を重ねた事が伝わってくる。結城役の小栗旬と仙道役の窪塚洋介は逆の配役の方もしっくりくると思ったけど、座長は小栗旬の方が良いんだろうから、そうするとこの配役になるのかと思った。何でもないシーンで泣いている場内の観客の人達は被害者か、関係者か、同じような状況にいた人達なのか。盛り上がるシーンじゃない所での、その人達の嗚咽がコロナと言う災害の苦しさや辛さを表しているように感じて、胸が苦しくなった。毎日ニュースで流れていた出来事や、周りが苦しんでいた状況を思い出す。時間が経って、コロナとは何だったんだろうか?と思う事もある中、忘れてはいけない事実を再認識させてくれた良い作品でした。
与えられた役割
小6の冬、突如として新型コロナウイルスが影を落とした。
卒業式までずっと休校。「普段通りなら」2時間程ある卒業式は、卒業証書を次から次へ渡す流れ作業の30分。写真撮影は無し。歌も無し。
中学2年生でもその猛威は続き、「普段通りなら」秋に行く予定だった修学旅行は、直前1週間前に中止となった。隣の中学校は時期を前倒したことで、第3波だか第4波だかが来る前に修学旅行に行けた。
中学3年生の卒業式、生徒代表のあいさつで語られるのは、「普段通りなら」学校行事や修学旅行の思い出。
壇上にあがった生徒代表のことばの大部分は、中止になった修学旅行が占めていた。
スーツケースに服やカメラを入れたこと。お金を靴下にかくしたこと。巡行ルートを話し合ったこと。部屋決め、班決め…
みんな泣いていた。
ニュースの画面に、「一斉休校」「緊急事態宣言」の文字が映し出されたとき、父が「お父さんが子供の頃にはこんなものなかった」と言ったのが忘れられない。
コロナ禍は前例のない、「普段通り」が通用しない、まさしくフロントライン(最前線)だったのだ。
フロントライン
今作、一ヶ月前から楽しみにしてました。
ダイアモンドプリンセス号でなにが起きていたのか?当時のぼくはよくわかってなかったので、「なにがどうなっていたのか」知るために観に行きました。
社会をもし演劇とするなら(僕が演劇部なので例えに使っちゃいます笑)、それぞれ与えられた役があるでしょう。では、もしそんな劇に、こんな役があったら?
「未知のウイルスの最前線に飛び込み、恐怖におののきながら、世間からバッシングを受けながら、家族が差別にあいながらも、患者のために全力を尽くす」
誰もやりたがらないと思います。そんな役、死んでもごめんです。
今作はそんな役割を与えられた者たちを描く作品。
次々と起こるトラブル、メディアの偏向報道…
まさにとんでもないフロントライン。
なにがおきるのか?このウイルスはなんなのか?
それも分からず、現場で咳を浴び続けた名もなき人たちに頭があがりません。
作中のセリフに「次また同じようなウイルスがでたとき、また同じ対応をしますか?」というものがありました。
ポストコロナが今後現れたとき、そのときどうするのか?僕は、後輩たちに僕のように中学校の青春を失ってほしくありません。
大学は経済学部に進学して、社会の仕組みを学ぼうと考えています。
コロナ禍以降ディーマットにウイルス災害対応の一文が追加されたように、
過去の失敗に学び、社会はまた組み替えられていく。そしてその積み重ねが防災、減災につながっていく。
本当に感動しました。
追記
自殺しようとした女性を、さいごに止めたのは人とのつながりでした。どこまでも与えられた役割を演じ、責任転嫁が巻き起こる社会でも、根本で大切なのは人と人の関係なんだと強く思いました。
英語、もっと話せるようになりたいですね!
英語の勉強が楽しくなりそうです笑
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