「珍しく真面目なレビュー」フロントライン 野球十兵衛、さんの映画レビュー(感想・評価)
珍しく真面目なレビュー
今回はおちゃらけた寄り道は一切しませんね。
疫過による甚大な被害に遭われて不幸にも命を落とされた方々も多数いらっしゃる題材だけに、珍しく真面目に語ってみますね。
この事件はニュースで見たか見なかったか程度にしか覚えていないんですよ。もう長い間、テレビを観るといった習慣がなくなってしまったもので。
加えて、当時はコロナへの恐怖も危機感も持っていませんでした。
後に私も罹患することになったのですが、軽い風邪程度の症状で済んだのは幸運でした。
実話ベースのお話ということで、ある程度の脚色はあるにしても、あからさまなエンタメテイストは避けられていましたね。
それだけに小栗旬のオーバーアクション気味の演技が浮いているように感じたのは本音。どうしても“ルパン三世”に見えてしまって困りました。
一方で松坂桃李は、こういうシリアスな劇で特に映える役者さんだと思いました。
表現者としてのスキルを磨くためにTVドラマへの出演を固辞していらっしゃる窪塚洋介の静と動の振れ幅を見せる演技にも魅入りました。
ですが、あまりにもイケメンの揃い踏みだったので、そこに違和感も覚えました。ここに小日向文世や佐藤二朗やあたりをキャストするなどの緩急をつけてもよかったんじゃなかな?と思いました。
別に小日向さんや佐藤さんがブサメンとは言っていませんよ。
枯れた大人の魅力を存分に発揮できる性格俳優さんがメインキャストにいてもよかったと思って。その点では滝藤賢一の登場はホッとしました。
今事件に限らず、報道という大役を時折はき違えてしまうマスコミのありかたの葛藤をニュースキャスター役の桜井ユキが好演でした。
劇中でモニタに流れるテロップの「ただ正しいだけでは組織は動きません」が大変印象的で重い言葉だと思いました。
正義。そんなものがないことは古今東西、火を見るよりも明らかな事実です。しかし何事においても決断は迫られるわけですよね。そこでリーダーシップ発揮して、なおかつ責任を取れる人物が“正しく”導いてくれないと大変困ります。
それ以前に、個々の決断はもっと大切だとストーリーの中のいくつものエピソードを観て思いました。結城が立松に託した言葉「偉くなってくれ」は旧態依然とした縦割り行政へのカウンターパンチだと思いました。
エンタメテイストを避けたことが、とても効果的に働いていました。実話ベースならではの臨場感や緊迫感がとても上手く演出されていて、飽きさせることなく一気に観せることに成功していたと思います。
なのに★-0.5は小栗旬のルパン三世の件です。小栗さんは何も悪くないです。勝手にそれを連想してしまった私が悪いです。
そして慣れないことをすると、途端に薄っぺらいレビューになってしまいました。
