「「逃げそこなった人達」の映画」フロントライン 田中さんの映画レビュー(感想・評価)
「逃げそこなった人達」の映画
「君子、危うきに近寄らず」の社会で、
「危うき」から逃げなかった人たちの映画。
というか、責任感のあまり「逃げそこなった人達」の映画。
未知な感染症に対して行政が機能していない孤立無援な状況で、
感染症の専門家でもない「逃げそこなった人達」が、
過剰な責任を負わされて右往左往しながら、
その場その場でイチカバチカの決断を繰り返していく。
避けがたい流れとして、彼らは責任を問われる状況に追い込まれる。
テレビは無責任に叩くし、政府は責任どころか説明責任すら果たさない。
当たり前が壊れた時、当たり前なルールは通用しない。
この混乱した状況で、我々にとって最も大切な「ある原則」が提示される。
そういう映画。
「逃げそこなった人達」の全員がカッコイイ。
この映画は、深刻に観てもいいし、笑って観てもいい。
現実というものは、悲惨で滑稽なものだからだ。
しかし、少なくとも我々には「逃げそこなった人達」を守る義務があると肝に銘じたい。
マジで。
で、ちょっと気になった部分がある。
感染対策の問題点を指摘した「専門家」の扱いはどうよ?
いまとなっては、この「専門家」の指摘に間違いがあったことがわかってはいる。
新型コロナは空気感染するし、
あの船の空調システムは汚染された船室の空気を回収して各船室に循環させるため、
あの船の中に安全だと言い切れる場所なんてどこにもなく、
安全な場所と危険な場所を分けるなんてできっこなかった。
しかし、あの船が非常に危険な状況にあるという「専門家」の指摘は的確だった。
さらに、この「専門家」もまた、責任感のあまり、あえて顔と名前を晒して告発した、「逃げそこなった人達」の一人だ。
少なくとも我々には「逃げそこなった人達」を守る義務がある。
だから言うけど、
この「専門家」の指摘に対して真摯に対応するのが政府の責任だった。
しかし、政府は責任を果たさなかった。逃げた。
だとしたら、悪者は政府だったはずだ。具体的には自民党政権だ。
いまだに、自民党政権はワクチンの問題にもコロナ禍への対応についても、真摯に反省も対応もしていない。
しかし、この映画はそこには立ち入らなかった。
つまり、この映画のスタッフもまた「君子、危うきに近寄らず」なのかな?
それとも娯楽映画だから立ち入らなかったのか?
どっちにしても、「逃げそこなった人達」どうしを対立させて、「逃げた人達」を見逃すのは良くない。
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