劇場公開日 2025年6月13日

「「これが真実」と言われると、安易に信じて熱狂する観客たち」フロントライン おきらくさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0「これが真実」と言われると、安易に信じて熱狂する観客たち

2025年6月22日
iPhoneアプリから投稿

同じコロナ禍のダイヤモンド・プリンセス号を舞台にした話なのに、HBOのドキュメンタリー『ラスト・クルーズ』とはかなり印象が異なった。
率直に言って、本作の内容が真実とは思えなかった。

本作は関係者への取材に基づき、「DMATの人々がひどく報道されているのが許せないから、本当の姿を知ってもらいたい」という動機から制作されたようだ。
この話を聞いて兵庫県知事選の件を思い出した。

「通訳」や「自死しようとする外国人女性」といった描写には「本当なのだろうか?」と疑問が拭えない。
仮に「自死しようとする外国人女性」が真実だったとしても、それを物語に組み込むのは品位に欠けるように感じた。

『ラスト・クルーズ』で描かれていた「外国人労働者に対して適切な感染対策がなされていなかった件」が本作では割愛されていたのも不信感を抱く要因。

この映画ではマスコミの製作陣が極悪に描かれているが、マスコミの中にも「医療従事者を差別するのはやめよう」と訴えていた人がいたように思う。
そういった視点を描かないのは、それこそ「切り取り」ではないか。

この映画の内容が真実かどうかはおいておいても、個人的には人間が多面的に描かれている作品を好むため、「DMATは正義、マスコミは悪」といった単純な構図も、この映画を好きになれない理由。

たしかにコロナ対応にあたった医療関係者を差別するのはひどいことだと思うが、中国以外では初めて集団感染を引き起こしてしまったのは事実である。
差別問題とは別に反省すべき点はあるはずなのに、問題点を指摘した感染症対策専門の教授を鼻で笑うような場面は不快だった。

おきらく
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