「胸が痛くてつらい」フロントライン やあやあさんの映画レビュー(感想・評価)
胸が痛くてつらい
これ、日本人ならみんな知ってるよね、という日本でコロナが出だした当初のダイヤモンドプリンセス号のお話。
ノンフィクションベースであることは鑑賞前から前提として分かっているからこそ胸が苦しかったです。(当然、映画用に脚色した部分もあるのは承知の上で)
あれから5年かあ。
これが戦国時代とか戦争ものとかだと、ノンフィクションとは理解しつつも自分が体験していないからかどこか俯瞰して見られます。
けれど今回はその時代を全部体験してるからこそ、つらい。
いや、体験しているけれど、映像で見たらどういう感情が沸き上がってくるかは自分でも想像つかなかった。結果、鑑賞後は胸が痛くてつらい、ということになりました。
胸が痛いとかつらいとか、そういう感想に終始するのはせっかくこういう作品を作り上げた制作側に失礼かもしれない、とも一方では思うのだけど。
フロントラインは最前線の意味ですね。まさしく生死を分ける最前線。
ダイヤモンドプリンセス号ニュースの頃、自分はまだまだお気楽に考えていました。
大変だねえと当時の職場のランチで話題にしていたのを思い出します。
あの時、船内では何が起こっていて何が行われていたのか。
医療従事者といえど生身の人間で、未知のウイルスがはびこる閉鎖された船内へ入ることが怖くないはずがない。
それをつき動かくのは陳腐の言葉のようですがやっぱり「使命感」なんでしょうね。
いくつかのセリフでは涙がこぼれました。
きっと私なら逃げる。実際、逃げるという選択肢もある。それでも命を救うために船内で頑張る。
あの頃から日本中がコロナで浮足立ちはじめましたよね。
マスコミの報道しかり。いやこれ、マスコミに対する痛烈な嫌味も含んでますね。
「今日も政治はちゃんとしていて日本はまあまあ平和です、なんてそれじゃマスコミは用無しだろ」かあ。(うろ覚えなので細かい表現は違うかも)
用無しにならないためにマスコミは平和じゃない日本を意図的に作っていくってこと??
職業に貴賤はないというけれど、どうもこう、DMATとの志の落差が・・・。
そういえば身内に医療従事者がいますがやはり当時は家に帰っていませんでした。
家族に迷惑がかかるから。
ラストになり、船からの下船も始まり、ダイヤモンドプリンセス号での物語も終わりが見えてくる。明るい兆しも知らされる。
けれど、本当のコロナ渦はこれから始まるのだということを、観る者はみんな知っている。
やっぱり、胸が痛い・・・。
夫と一緒に見に行ったのですが、最近仕事で嫌なことが続いたようでぶつくさ言っていた夫が、映画を見終わった後は
「このくらいで弱音吐いちゃいられないな」
と、きりっとした顔で言ってたのが印象的でした。
うん、分かるよ、そういう気持ちにさせてくれる映画だよね。
上映中、仙道役の役者さんが誰だか分からず、斎藤工?違うよね?とか思いながら見てましたが、エンドロールを確認してびっくり。
窪塚洋介さん!!分からなかった!!
ずっと表舞台に出ていなかったと思うけれど(私が知らなかっただけ?)味のある役者さんになってましたね。
あと、踊る大捜査線を思い出させるセリフが一瞬あって、なんだかくすっとしました。
喉元過ぎればなんとやら。
今になって振り返ると、コロナってなんだったんだろうと思ってしまいそうになりますが、そんな日常が戻ったのはこうやって奔走してくれた方々がいてくれたおかげだということ。
いつかまた見返したいなと思いました。