「心を打つものに乏しい、事実に基づくドラマ」フロントライン Toruさんの映画レビュー(感想・評価)
心を打つものに乏しい、事実に基づくドラマ
万人受けしそうな俳優陣、ストーリーと予想しつつ、封切初日に鑑賞。
関根光才監督作品、2020年2月に新型コロナウイルスの集団感染が発生した大型客船ダイアモンド・プリンセス号において、未知のウイルスに最前線で挑んだ人々を描いたドラマ。平日とはいえ劇場の入りは上々。
自らも経験した未曾有のウイルス感染。その序章ともいえる大型客船という閉鎖空間における感染拡大。
これに対処する人たちを、小栗旬、松坂桃李、池松壮亮、窪塚洋介らのキャストで描いた作品。
事実を元にしたという点で、福島原発の事故をもとに制作された映画「Fukushima 50」、Netflix配信ドラマ「THE DAYS」などと似た構成。
愚かな興味本意のメディア報道、その裏側で実際に起きていた現実を描くことで、真実を見極めることの難しさ、大切さを響かせたところはマル。
未知のウィルス感染という経験のない状況に挑む災害派遣医療チーム(DMAT)や奮闘する厚生労働省の担当官の姿、感染した外国人旅客と家族の戸惑い、乗務員の奮闘などを含めを描くも、先に挙げた福島原発事故の再現映画・ドラマと比べると、想定内のストーリーで然程のインパクトはない。
また映し出される場面の多くが、船内と対策本部ということもあり、どうしても地味な展開を余儀なくされ、医療従事者、その家族、濃厚接触者などに対する差別に関しても中途半端な描き方になっている。
俳優陣の中では、窪塚洋介と松坂桃李が好演、小栗旬のくどい演技には若干辟易。池松壮亮の演技は特に印象を残さずといった感じ。
2時間9分と多少長めの尺をしっかり作り込んだ映画だが、題材自体エンタメ性に欠ける側面もあり、深く印象に残ったり、心を打たれたりという感覚に乏しい映画。
予告編以上のものがなく、既定路線、テレビドラマの域を超えなかったというのが正直な感想。
とはいえ、そんなコロナ禍の始まりから5年しか経っていないことには、改めて驚かされた。
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