「涙無しには観られない大感動作ではない」かくかくしかじか K2さんの映画レビュー(感想・評価)
涙無しには観られない大感動作ではない
...です。
宣伝ではそういう文脈で描かれているフシがありますが、実際はもっとリアルな"実話っぽい"ストーリー。作者が実体験を通じて感じたこと(つまり、恩師への感謝)をそのまま伝えようとしているように見えます。そして、それがリアリティをもってビシビシ伝わってきます
実話ベース、と云うだけじゃなく、本人が直接"伝えたい想い"を描いた物語だからですね、きっと
恩師の絵画教師は、こと「絵画を描くこと」にだけには桁外れの情熱を示すものの、客観的に見れば(社会的な)欠点も多く、現代(令和時代)でいえば"不適切"とも言える言動を繰り返す。主人公も「あり得ない!!」と反発を繰り返す
しかし、なぜか師弟関係は長年続き...という展開。正直、劇的な出来事や美しいドラマはあまり描かれず、ある意味、物語(主人公の成功に至る人生)は淡々と進んでいく
恩師の一見"ひどい仕打ちの数々"が、主人公や家族、周りの人々の中で"許される"のは、恩師の中に一切の悪気がなく、純粋に「描きたい絵を描くことが人生の目的であること」が明らかに伝わるからです。この辺は、(悔しいけど(苦笑))演じる大泉洋さんの演技力、見事です
しかし、同時に無視できないのは、九州地方、特に中でもいわゆる"いなか"の部類に属するといっていい宮崎県の(当時の都会、特に関東の都市圏とはかなり異なる)保守的、封建的な文化的背景があるからと感じます
主人公のキャリアを考えても、恐らく昭和ではなく平成時代の話しが殆どなので、普通に考えるとちょっと違和感があるぐらいの大らかさ、なんですが、恐らくこれが当時の、あの地域の、リアルな雰囲気であり受け止めだったのだと感じらます。イチからの他人の創作ならこのようには描かれない気もするのですが、かえって、実話ならではのリアリティが伝わってきます
映像の中で舞台として描かれる、本当に美しい背景の自然や景色も、そのリアリティを見事に後押ししてくれます
芸術を志す、しかし殆どの場合、実際はそれだけでは食っていけない若者たちの群像劇としても、誇張も矮小化もないリアル感のある物語として説得力があります