劇場公開日 2025年5月16日

「考えるな、感じろ」かくかくしかじか ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0考えるな、感じろ

2025年5月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

幸せ

『東村アキコ』の自伝的コミックの映画化。

自身が脚本に名を連ねるだけでなく、
制作委員会にも「東村プロダクション」がクレジットされる入れ込みよう。

彼女の作品は漫画だけにとどまらない。

日本画風の〔NEO美人画〕を描き、
それを「NFTオリジナルアート」として販売する旺盛な創作意欲。

そうした新進の気鋭は、
どのようにして形作られたか。

知りたい、見たいとの興味はあった。

とは言え、ここでまず我々の前に現れたのは
根拠のない自信に満ち溢れる女子高生。

学業は毎回のように赤点も、
昔から得手だった絵の腕前を過信し、
技量があれば美大に合格できるのだとうそぶく。

その天狗の鼻をへし折ったのは、
町の絵画教室の先生『日高健三(大泉洋)』。
熱血スパルタタイプの彼は竹刀を手に、
「兎に角、描け。描いて描いて描きまくれ」と叱咤する。

最初はその意図を理解できなかった主人公も、
次第に『日高』の強い想いに感化され精進し、
無事に美大に合格する。

しかし「金沢美術工芸大学美」に入学後は画をなおざりに。
日々を遊びに費やし、ある種の青春を謳歌する。

そんな彼女の元を訪れた『日高』は、
画が荒れ、画材も使われていないことに気付き、
受験指導の時と同じ言葉を残して去る。
「一日とて手を休めるな。間が空けばそれだけ腕が鈍る」と。

当初の『林明子(永野芽郁)』の造形は、
凡人の我々と何ら違いはない。

独りよがりで、
目先の楽しみに現を抜かし、
理由をつけては怠け、
課題を先送りにする。

しかしそうした性向が
次第に変わって行く過程が面白い。

当初はダメ人間だった『明子』と
彼女の中に才能を見出した『日高』。

二人の師弟関係に
〔スター・ウォーズ〕の『ルーク』と『ヨーダ』の影を見る。

ぶっきらぼうや粗雑に見えても、
教え子のことを常に気に掛ける彼の思いに感じ入る。

九州の宮崎から、北陸の金沢を訪う件は、
驚き以外の何物でも無し。
そこまで、教え子のことを気に掛けられるものなのか。

見込んだ才能を、可能な限り伸ばしてやりたいとの行動は、
鬱陶しさを通り越し、透徹ささえ感じさせる。

「手を休めないこと」「創り続けること」は
芸術を志す者の指針でもあるだろう。

『ピカソ』が生涯に
十五万点もの作品を残したことを思い出す。

制作することは、もはや生活の一部になるべきなのだ、と。

ジュン一
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