「スパルタだけではない「深い情」こそが描くべきポイントなのではないか?」かくかくしかじか tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
スパルタだけではない「深い情」こそが描くべきポイントなのではないか?
今の時代では絶対に認められないようなパワハラ教師の話だが、まったくと言っていいほど不快感を覚えないのは、大泉洋のキャラクターと、それを活かしたコミカルな味付けのせいだろう。
特に、ダウジング試験対策とノストラダムスの大予言のくだりでは、思わず吹き出してしまった。
ただし、主人公だけでなく、思いのほか多くの生徒が絵画教室に通っているのは、先生が、単に厳しいだけではなく、「深い情」の持ち主でもあるからだろう。
そうした、先生の情の深さは、腹痛のふりをした主人公をバス停まで背負って運んだり、受験前にさりげなく御守りを渡したり、炎天下を原付きで1時間掛けて絵画の指導に駆けつけたりといったエピソードで、分かりやすく描かれている。
その一方で、終盤になると、先生が、ひたすら「かけ!」と言っているだけの人物のように描かれていて、余り「情」が感じられないのは、残念としか言いようない。
確かに、理不尽な圧力が、精神的な強さを養うということはあるのだろうが、これだと、昭和のスパルタ教育を懐かしんでいるだけになりかねないし、先生に期待されながら、絵画教室を継ぐことも、2人で個展を開くこともできなかった主人公の「悔恨の念」も伝わって来ない。
例えば、ラストで、「先生は、主人公の漫画が掲載されている本を買い揃えていて、漫画家としての主人公の成功を喜んでいた」みたいなことが明らかになったならば、最後まで生徒のことを思いやっていた先生の「情」が感じられて、もっと感動できたのではないかと思えるのである。
確かに、大学時代の自堕落ぶりはリアルでしたね。
それだけに、せっかく金沢まで会いに来てくれた先生に冷たく接してしまったことも含めて、先生に対する主人公の悔恨の念を、モノローグだけでなく、しっかりと描いてもらいたかったと思えてなりません。
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