「作者のナルシストが滲み出ている」かくかくしかじか 肩幅さんの映画レビュー(感想・評価)
作者のナルシストが滲み出ている
映画としては極々普通で、大泉洋と永野芽郁を始めとした俳優陣の演技はとても良かった。大泉洋は世界に溶け込んでいくのが本当に上手い。演出やカメラは特筆することはない。
予告の時点で感じていたが、恐らく作者は生粋のナルシストだと思う。
また、作者本人が本内容を美談と思って書いてるかは知らないが、美談風の演出になっているのが気になった。
最後まで見ると、結局なにも起きておらず何を伝えたいのか全く分からない映画となっている。
大学時代に二度も改善のチャンスがあったのに、何も変えずにサボり続け、先生が肺癌になって顔だけ見せたあと、もう一度会うこともなく、ただただ作者の全てを先延ばしする性格をまざまざ見せつけられただけ。
自叙伝でなのでリアルなのは当たり前だが、それにしたって脚色が少なすぎるので作者本人が著名な漫画家になったこと以外は何の華やぎもない話を映画で表現する意味がわからない。
何度も二人展をやろうと言ってくれていた先生の気持ちを汲まず、結局二人展もやらないで感謝の気持ちだけで弔った気になっている。先生が亡くなった後でも、今からこの映画きっかけでも二人展をやって「二人展をしたい先生の夢が叶った」というような終わり方にしておけば、それこそ美談のようになったろうが、軽く調べた感じではその様な催しはなかった。(していたら、その要素を入れるだろう)
ラストの幻想の先生が去っていくシーンで、どうせ大量の紙を飛ばすのであれば、紙が目の前を横切って先生が消えている演出ならかっこよかったのに、フワ〜ッと透明になって消えていくのがダサくて溜息が出そうになった。
この映画から伝わってきたのは、先生が情の深い生粋の画家であったことと、無意識な作者の「罵倒ばかりの先生が絵の筋が良いと認めてくれていて、ヤンキーを絵の道に導いたこともあり、教える才能もあって、漫画の才能もある自分」に対する自信や自慢。無意識なところがタチが悪い。
おもろくない、とは言わないが、私は好きではない。
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