「変わるきっかけはふとした出会い。人生って捨てたもんじゃない」シケモクとクズと花火と みずしまさんの映画レビュー(感想・評価)
変わるきっかけはふとした出会い。人生って捨てたもんじゃない
静かで不器用な大人たちの、ちいさな再出発の物語。
舞台は広島の小さな居酒屋「まめすけ」。
路面電車の走る鷹野橋交差点、呉の穏やかな海、安登駅。観光地ではない「生活の風景」が、登場人物たちの感情と静かに重なり合っていきます。
登場人物たちはみんな、ちょっとクズで、ちょっと不器用。
でも、誰かと関わることで、自分の人生を少しずつ見つめ直していく。
大きな出来事じゃない、些細なきっかけで、人は少し変われる。
その“変化”を、押しつけがましくなく、でも確かに描いている映画でした。
印象的だったのは、まるで日常にひびが入るように繰り返される“異質な光景”。
日常から少し外れたその描写が、この作品をただのヒューマンドラマにとどまらせない力を持っていました。
主演の遠藤祐美さんは、舞台挨拶で「タバコを吸ったことがない中でどう末子らしく見せるか悩んだ」と語っており、役に対する真摯さが印象的。
山岸謙太郎監督の「観光名所ではなく“生活の広島”を描きたかった」という言葉も、この作品の世界観そのものだと感じました。
主題歌・近藤夏子さんの「Good day by day」も、物語にそっと寄り添うような優しさがあって素晴らしかったです。
ラストまで観て、ふとまた最初から観たくなる。
2回目に観ると、違う印象が胸に残る、不思議な作品です。
この作品は現在、広島にて先行公開中ですが、今後全国上映も予定されています。
おすすめする映画です。
コメントする