劇場公開日 2025年3月7日

「徹底した子ども視線による「世間」でのサバイバルを描く。」Playground 校庭 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0徹底した子ども視線による「世間」でのサバイバルを描く。

2025年3月9日
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原題は「Un monde」。世間とか世界とかの意味になるが、これは初等学校(ベルギーでは日本と同じ6年制の初等教育がある)に入学したばかりのノラから見た世界の全てを表す。ノラは父親と兄アベルと暮らしている。母親は離婚したのか姿は現さない。元々、狭い3人での暮らしが全てであったのが学校に行くことによってノラの世界は広がる。最初は学校の中でもアベルの姿を追い求めるノラだがだんだんと順応できてくる。
ところが実は学校の中ではアベルはいじめられており、兄を助けたい思いと、自分は巻き込まれたくない思いが、ノラを板挟みにする。
このいじめに対する学校側の対応がいかにもマニュアルベースであるところ、安易にいじめに加担してしまう子供がいること、いじめの被害者は時として加害者に入れ替わってしまうこと、多分失業中で家にいる父親が干渉することで子供たちの立場が悪くなるところ、いかにもという話ではあるのだが、これはそういったことを告発する作品ではおそらくない。
ノラにとっての全世界である学校、親子関係、兄妹関係の中で、ノラが必死に見て、聞いて、考えて、行動する姿を描いている。つまりそこにあるのはサバイバーとしての全世界との対峙である。
それは痛々しく、でも瑞々しく、そして我々自身の社会との関わり合い方をも思い起こさせてくれるのである。

あんちゃん