陪審員2番のレビュー・感想・評価
全49件中、41~49件目を表示
C.イーストウッドらしい直球勝負
脚本、演出・演技がお互いを補い合って本当に素晴らしい。例えば国選弁護人役。裁判ではまったく活躍しないが、最後の検事の決断に重要な役割を果たす。物語の都合上存在するある意味人工的な役割だが、最低限のショットとセリフ、的確な演技で見事に存在の肉付けがなされていて、映画全体の芯になっていた。
絵作り的には非常にシンプルで、「雑に早撮りしてるなあ」と思える箇所もある。予算の都合もあるのだろうけど。
音楽もシンプルで的確。見終わった後、どんな音楽がついていたのかまったく覚えていない感じ。
トニ・コレットがとてもよかった。ニコラス・ホルトも難しい役を見事やってのけていた。
本作で引退とも言われているイーストウッド御大が僕らに託したもの
彼がいかにドラマと真摯に向き合い、それ描くことに長けているかということを再認識させられるような力作。さながら現代版『十二人の怒れる男』ならぬ"唯一人の悩める(秘密を抱えた)男"。
90年代まではよく作られていたものの、現代では(実話を基にした一部の黒人冤罪モノなど除いて)めっきり作られなくなったタイプの法廷スリラー(サスペンス、ミステリー)で、今最も目が離せない役者ニコラス・ホルトが道徳観や倫理観そのジレンマに苛まれ葛藤するさまを体現する、ポスタービジュアルのまま重苦しく鬱々とした作品。
大丈夫か?良心の呵責。自分が生きる上で大事にしている指標・行動原理に「後ろ暗いことはしない(後ろ髪を引かれることはしない)」という想いがあるけど、本作はそのよく描かれた脚本とストーリーテリングの巧みさも相俟って、息の詰まるような自分(私)事になっていく。正義と真実の天秤に揺れ動く圧巻の110分で、ひたすれ疲れる鑑賞体験。
共演にはこの裁判に自身の進退という政治的側面がかかっている検事トニ・コレットに、どうやらただ者ではなさそうなJ・K・シモンズ、そして主人公の妻ゾーイ・ドゥイッチなど。これだけ科学捜査など進んでいる現代でも様々な要素が絡み合って十分起こり得る冤罪に、"確証バイアス"確証がないのに協力的な目撃者の老人など司法制度の抜け穴も。
FAITH
ハイリスク妊婦
"Too many maybes are reasonable doubts."
LIFE ROSE ON(ライフ・ゴーズ・オンと掛けている)
司法制度に乾杯、完璧じゃないが無いよりマシ
「僕が家族を守る」
IN GOD WE TRUST
「疲れた顔ね」「嵐が去ったな」
揺れ動く良心の呵責
ニコラス・ホルト演じる主人公ジャスティン・ケンプを始めとする
登場人物それぞれの正義と家族愛で揺れ動く良心の呵責を描いた作品です。
ジャスティンは事件当時、鹿を車で轢いてしまった疑惑を自分自身にもっていて、
それが陪審員として選ばれた事件の轢き逃げだったのではないか?と
やや確信めいた判断をしているところが、すごく重要です。
おそらく轢いたのはジャスティンで間違いないものと思われますが、
直接的な表現は避けていて、ここも「そうだろう」的な見え方になっています。
容疑者は、普段の悪い素行が背景にあり、事件当時の様子からも
犯人と断定され、目撃情報も曖昧ながらも、冤罪となっていく様は
すごく恐ろしいなと思いました。
日本のドキュメンタリー作品でも、こういうことはあるんじゃないかと思う作品に
出会いますが、冤罪のつくられかたを見せられている気がして怖くなりましたね。
ジャスティンは自分が犯人だろうから、容疑者が犯人じゃないことはわかっていて、
そこで最終的には家族や自分の人生との天秤にかけていき、
正義が客観的なものではなく、主観的なものとして貫かれていく。
そんな会話を、ラスト近くで検事とする。ここが本作のクライマックスでしょう。
ラストは検事(検事長に昇進していますが)がジャスティンの玄関先に現れて終わるのですが、
検事は検事で自分の正義を貫くつもりなのでしょう。
おそらくジャスティンを容疑者として裁判が開かれるのでしょうね。
直接的にはそこまで描いていませんが、私はそう捉えました。
正義の脆さみたいなものを突きつけられた気がします。
何と奥深い作品なのでしょう。
クリント・イーストウッド監督の期待に応えているニコラス・ホルト、天晴れだと思います。
素晴らしい作品でした。
できれば劇場で鑑賞したかったです。
世知辛いのはわかるけど、もったいない
アメリカでも公開館数は少なく不当な扱いを受けたイーストウッドの最新作、邦題 陪審員2番
今のムービーシーン、スクリーミングがメインになっていく潮流からするとリスクヘッジは当たり前で、(前作、cry machoが大コケしたので)そりゃお前たちオーディエンスがこないから、当然の処置だってのもわかる。ただアメリカのレガシーつくっていくひとつはムービーじゃないの?あまり蔑ろにしないでほしいなとは思う
当然、日本でも劇場公開しない。ただ𝐔-𝐍𝐞𝐱𝐭で20日から観れます。陪審員に選出されたニコラス・ホルトの苦悩をとてもうまく描きだしていて、ラストの余韻がまあ素晴らしい。94歳、イーストウッドの妙手、まだこんなの撮れるのかと敬服しました。映画ファンと自認するのであれば𝐔-𝐍𝐞𝐱𝐭でどうぞ。あーもう少しスリムなサービスにできないかね、𝐔-𝐍𝐞𝐱𝐭さん
最高の引退作
クリントイーストウッド引退作。引退作としては惜しみたくなる傑作だった。
ニコラスホルトが演じる主人公は陪審員に選ばれる。殺人事件の裁判であり被告人が殺人の有罪か無罪かを問う裁判。
被告人は過去に反社会行動をし直前に加害者の女性と喧嘩もしている。しかし確固たる証拠はなく、状況証拠と陪審員の早く事を終わらせたい気持ちからさっさと有罪で終わらせたい者が多い。
そんな中ホルトは事件の本当の容疑者は自分じゃないかと疑う。
もちろんこちらも確固たる証拠はないのだが事件を追えば追うほど自分が加害者だったと確信に近づく。
罪悪感からなんとか被告人を無罪にしようとするも、前任一致でなければ次の陪審員達に委ねられることになり事件の真相を追われることを恐れる。最終的に自分が陪審員の立場で事件を終えることを望み被告人を有罪にする決断をしてしまう。
ホルトの罪悪感と自己保身の狭間をうまく描いた作品であっという間の120分だった。
自分がホルトの立場であったらどういう判断決断をするのか、それらを自分に置き換えながら見ると心苦しく見られる。もちろん悩んでる時点で自分も善良な人間ではないのだろう。
何が正しのかはもちろん分からない。ただ一つ言えることは真実を隠す事なく伝える事が正しいのであって、そこから逃げ隠れ、嘘をついてしまった時点でホルトが正義を語る資格は残念ながら失う。
そんな正しい判断ができない立場の人間でも人を裁く立場になりうる陪審制度の欠陥もまた実感させられ恐怖を覚える。
クリントの作品はこれまで何作も鑑賞し貴重な時間を過ごさせてもらった。引退作というのは寂しい限りだ。それ以上にこんな偉大な監督の引退作を日本では劇場公開スルーというのがあまりにも残念。
しかしながら配信でも傑作に変わりはない。1人でも多くの人に見て感じで欲しい作品だ。
クリントイーストウッドに改めて敬意を表したい。
恐らく最後の監督作となるクリント・イーストウッドが共同製作・監督、...
恐らく最後の監督作となるクリント・イーストウッドが共同製作・監督、ジョナサン・エイブラムスが脚本を担当した『十二人の怒れる男』を彷彿とさせる法廷サスペンス。
物語は注目を集めた殺人裁判の陪審員を務める男性が、被害者の死に自分が責任があるかもしれないと気づくが、、、
引き込まれるストーリーで役者の演技がさえる!
製作はイーストウッドが93歳だった2023年6月に始まり、ジョージア州サバンナやロサンゼルスなどで撮影されたが、2023年のSAG-AFTRAストライキのため7月に中断。ストライキの終結に伴い11月に製作が再開。2024年10月27日にAFIフェスティバルで世界初公開され、2024年11月1日にワーナー・ブラザース映画によって米国で公開。この映画は批評家から好評を博し、全米映画批評家協会によって2024年のトップ10映画の一つに選ばれた。
クリントとフランシス・フィッシャーの娘のフランチェスカ・イーストウッドも出演。
ニコラス・ホルト
ジャスティン・ケンプ
陪審員に召集されたジャーナリスト
トニ・コレット
フェイス・キルブルー
カーター事件を起訴する地方検事補
J・K・シモンズ
ハロルド・チコウスキー
元◯◯の陪審員
クリス・メッシーナ
エリック・レズニック
サイスを弁護する公選弁護人
ガブリエル・バッソ
容疑者ジェームズ・マイケル・サイス
ゾーイ・ドゥイッチ
アリソン・「アリー」・クルーソン
ケンプの妻で地元の教師
セドリック・ヤーブロー
陪審員マーカス・キング
レスリー・ビブ
陪審長デニス・アルドワース
キーファー・サザーランド
ラリー・ラスカー
アルコール依存症匿名会のスポンサー
エイミー・アキノ
テルマ・ホルブ判事
エイドリアン・C・ムーア
陪審員ヨランダ
福山智可子
医学生で陪審員の恵子
ゼーレ・アヴラドプロス
アイリーン
犬のトリマーで◯◯の交代陪審員
フィル・ビードロン
陪審員ヴィンス
ブリア・ブリマー
執行官ウッド
ジェイソン・コヴィエロ
庭師兼陪審員のルーク
フランチェスカ・イーストウッド
ケンダル・カーター
レベッカ・クーン
陪審員ネリー
ヘディ・ナッサー
陪審員コートニー
ドリュー・シャイド
陪審員ブロディ
オニクス・セラーノ
陪審員エリ
一人の青年の身に起こる事件《正義と良心の呵責》
10月下旬に全米で短期間・小規模で公開された
クリント・イーストウッド監督の最新作
「陪審員2番」が、12月20日から、
U-NEXTで配信が始まりました。
陪審員を題材にした法廷ミステリーです。
陪審員制度の問題点、
司法制度の盲点を考えさせられる良心作でした。
評決の有罪と無罪の間に、グレーゾーンの判決
(例えば、執行猶予や交通事故での禁固刑などがありますが、)
有罪でなければ、その反対は無罪しかないのか?
私個人としては、
この2択しかない狭さ、そして怖さを感じる映画でした。
《ストーリー》
陪審員に選ばれた青年(ニコラス・ホルト)か、
審議する事件の内容を聞いて顔色を変えます。
「審議する事件」
ある夜、バーで恋人と激しく言い争うカップルがいました。
怒ったガールフレンドは雷雨の中を徒歩で帰宅したのです。
翌朝、彼女は崖下の小川で、頭を砕かれた死体で見つかるのです。
そして言い争いをしていた男性が、殴って殺して捨てた罪で
逮捕されます。
ニコラス・ホルトには心当たりがあったのです。
その夜、問題のバーに立ち寄り、車で現場近くの道を帰り、
《鹿にぶつかった》との感触があり、車を修理に出していたのです。
興味深いことに陪審員の中には、J・K・シモンズ演じる元警官で
刑事だった男が含まれていました。
彼はすぐに【ひき逃げ事件】だと判断するのです。
J・K・シモンズは、修理工場をあたり、16件の当日後に修理された
車のリストを揃えてきます。
そのことが、陪審員が【捜査をしたりしてはならない】
この規則を破ったために彼は陪審員を外されます。
実に良く出来た脚本です。
陪審員2番であるニコラス・ホルトの中で、
真実を告げるべきという良心と、しかし自首したら妻を守り、
生まれてくる子供を育てられない・・・2つの葛藤がせめぎ合います。
彼の保身と狡猾な面も、徐々に明らかになってきます。
人間の弱さや保身が浮き彫りになります。
アルコール依存症でグループセラピーを受けて4年経つこと。
飲酒運転の微罪があること。
事故当日には妻が最初の双子を流産した直後だったこと。
ラストの展開は半ば予期したこととは言え、辛いものがありした。
正義は成されるのだとの思いと、被害者に落ち度はなかったのか?
などと考えさせられて複雑な思いを抱きました。
それにしても一人の人間の終身刑のような重い刑が
決まるもしれない評決が、
陪審員の下す「有罪」で、いとも簡単に決まってしまう事。
陪審員の多くはさっさと役目を片付けて普段の生活に戻る・・・
その事で頭の中は一杯です。
状況証拠と怪しい目撃証言に検死医の簡単な所見のみで、
有罪が決まるとしたら、本当に恐ろしい。
いち早くクリント・イーストウッド監督の93歳での
最新監督作品を配信で観る事が叶い感謝します。
地方在住者や名作座が遠いなどの場合もあります。
近年は真面目で娯楽性の薄い作品は劇場公開が厳しいようです。
悲しい事ですが、前向きにとらえて、観る機会に恵まれて
本当に嬉しく思います。
捻じ曲げられる正義
陪審制度の危うさを描いた「十二人の怒れる男」。本作はそれにプラスアルファ、陪審員に選ばれた主人公の抱く葛藤や苦悩、そしてサスペンスフルな展開が見る者を魅了する作品。
ある殺人事件の陪審員に選ばれた主人公。彼はその事件の詳細を知らされ事件の被害者を誤って車ではねたのが自分であることを知ってしまう。唯一真実を知るのは自分だけ、しかし他の陪審員たちは被告人をほぼ有罪と判断。このままでは無実の人間が有罪になってしまう。
誠実な性格の主人公ははじめこそ無罪の主張をするものの、被告人の無罪を主張し続ければいずれ自分に追及の手が伸びてきてしまう。真実を貫くか、自己の保身に走るか苦悩する主人公。出産間近の妻、そして自身も依存症と戦う身である主人公は究極の選択を迫られることになる。
過去のアルコール依存症の経歴から自分の罪が重罪で裁かれると知った主人公は自首をためらう。しかし被告人をこのまま有罪にもできない。何とかして自分の罪も免れ被告人を無罪に持っていきたいが、ひき逃げの可能性があるという説が注目されると陪審員の中の元刑事が事故車の調査に乗り出し主人公は追い詰められていく。このあたりのサスペンスは秀逸だった。
そして主人公がとるべき道を見る者に丸投げする強烈なラスト。あなたならどうしますかという投げかけであり、裁判員制度が採用される日本でも他人ごとではない。さすがにこういうシチュエーションに置かれることはないにしても。
とても内容が濃くて骨太な法廷ドラマ。しかし御年94歳のクリント・イーストウッド監督の引退作ともささやかれてる作品ながら、劇場公開は日本では見送り。本国アメリカでも短期間の小規模上映だったとのこと。
正直、巨匠の作品に対してこの扱いは信じられないが、映画評論家の町山氏によると最近のハリウッド映画では映画好きが好むようなこういう作品が冷遇されてるとのこと。
子供に受けるアニメやシリーズ物のように大きく採算が取れる作品ばかりが重視されて、儲けが少ないこのような通好みの作品には出資者も金を出さないとのこと。
ただ、このような現象は邦画界にも如実に表れていて先日公表された今年の映画興行ランキングでは、ベストテンはアニメとかテレビ局出資のテレビ映画ばかりで洋画はランキングにも入っていなかった。
洋画なら今年は「人間の境界」、「オッペンハイマー」、「関心領域」、「DUNEパート2」などなど素晴らしい作品が多かったにもかかわらず。ちなみにベストテンの作品は一本も見ていなかった。
ハリウッドでは今後本作のような作品はますます作られにくくなるという。もしそうなら映画業界の未来は暗い。
あなたはそれでも正義を行使するか
全49件中、41~49件目を表示