光る川のレビュー・感想・評価
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【フィトンチッドの香り漂うが如き深山の緑が美しい自然を背景にした、里の娘と山の漂泊の民である木地師の男の恋物語。今作は、環境破壊への警鐘を鳴らしつつ、人間と自然との共生を描いた幻想譚である。】
ー 高度経済成長期の或る山村で、奥地の山林を伐採する計画が持ち上がる。激しく反対する老婆(根岸希衣)の言葉を聞きつつ、少年ユウチャは紙芝居屋(堀部圭亮)の”鵜の眼の伝説”と言う紙芝居を見る。
すると、物語はその中に入り込んで展開される。
そこでは、美しい娘およう(華村あすか)が、山の漂泊の民である木地師の男さく(葵揚)が作った丸い木のお椀を川で見つけ、それがきっかけで二人が恋に落ちる様と、娘を思うが故にそれに反対する父(安田顕)の姿が映される。
さくも、木地師を纏める男(渡辺哲)から激しく反対され、約束した月夜に草笛を吹くことなく去り、おようは滝つぼに身を投げるのである。-
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作の監督、金子雅和監督作「アルビノの木」「リング・ワンダリング」はいずれも好きである。自然と人間との関係を描いた作品で、今作に通じるものがあるが、岐阜市出身の松田悠八氏の小説を原作にした今作は、更に一歩踏み込んでいると思う。
・ユウチャは、おようの悲しみが今も地元に洪水を起こしているという言い伝えを聞き、台風迫る中、老婆の教えで昔の里の民が山に入る時の姿になり、里で汲んだ水を盃に入れおようが飛び込んだ滝つぼにその水を入れる事で、彼女の悲しみを抑えようとするのである。
■おようとさくが恋に落ちる際の周囲の山々の緑深き美しさは、深山にいるかの如くであり、暫く行っていない南アルプスの奥深い山々や、東北奥羽山脈の広大なブナ林を思い出す。
この映画の素晴らしい所は多数あるが、自然光による自然描写の美しさも、その一つであろうと思う。
・そして、ユウチャが里の水を滝つぼに流し込むと、舞台は昔に戻り、さくが木地師を辞め駆け付けると、おようは滝つぼの前の崖に横たわっているのである。そして二人は強く抱き合うのである。
<舞台は現代に戻り、台風が吹き荒れる中、ユウチャは待っていた父と老婆と再会するのだが、その際に強い風は止み、陽光が降り注ぐのである。
今作は、、環境破壊への警鐘を鳴らしつつ、人間と自然との共生を描いた幻想譚なのである。
<2025年5月11日 刈谷日劇にて観賞>
■エンドロールを観ていたら、岐阜車体さんがスポンサーで就いていた作品であった。企業メセナをしっかりと、やられているなあ。
リバー、別れないでよ
『悪鬼のウイルス』と『Sin Clock』でそれぞれ印象的だった、華村あすかと葵揚を目当てに。
冒頭は取っ掛かりづらかったが、紙芝居の枠から過去に移る演出にシンプルながら上手さを感じた。
そこで描かれる悲恋の話は、ベタベタのテンプレ。
お葉と朔が惹かれ合った理由なども特に語られないが、紙芝居の内容と捉えればそんなものだろう。
華村あすかの顔…違った、肌が綺麗すぎたり言葉が今っぽかったりはある。
しかしそれが見やすさにも繋がっており、イントネーションで没入感を損なわないラインは保たれていた。
どこまで意識的に作られたのか、脇とのバランスも適切。
現代に戻ってからも特に捻りはなく、都合のよい童話的な話になってゆく。
しかし、枝郎が喋れなかったことやお葉の入水シーンのアングルなど、脚本からカメラまでが効いてくる。
有山実俊くんが兼役なのも意味があった。
あれは過去の事実なのか、改変が起きたのか、それとも時間の狭間の夢か…
どれであってもおかしくない余白が非常に巧み。
そういった仕掛けと質の高い芝居、そして魅力的な画作りによって、大人が観られる御伽噺になっていた。
まぁあの条件であれば、自分なら彼の半分も水は汲まないが。笑(台無し)
特に印象的だったのは、葉や苔、川の水などの緑。
光と影、晴れと雨などシーンによって素朴さや神秘性、畏ろしさなど様々な自然の側面が表れていた。
演技としては安田顕が圧巻。
声色だけでなく、姿勢で背を小さく見せて(周りが高身長なのもあるが)あの時代の男らしく映っていた。
華村あすかの美しさや、綺麗なあばれる君こと葵揚の不器用な雰囲気もハマり役。
オープニングのアニメーションからエンディングのBGMまで、よく纏まった秀作だと思う。
ユーロスペース最終日
「光る川」の引き込まれていく物語の始まり方がとても好きです。
私の中でこの物語は3度のはじまりがあると思っていて、その3度に水が落ちて丸く円になる映像が映し出されている。
それぞれ生活や時代は違えど、確かに同じ場所でおきた出来事が、静かな川の流れから激しい流れへと変わっていく。
川の流れだけでなく、人の心や思いも変わっていくのもリンクしていておもしろかったし、じわじわと心に残った。
町娘のお葉が朔に出会う前と出会ったあとの顔の表情が違うのも印象的だった。
恋をする女性の顔つき、目がふわっとしていたものが、目に色が濃く、美しさが増してほんと素敵に見えました。
ユウチャが紙芝居を観たあとに、川の上流から器が流れてきて、バッチャに昔話を聞き、ユウチャが青い淵を目指し進んでいく姿はまるで、ジブリの映画を想像させられるように、まっすぐで勇敢で、だけどなんだか可愛くて、2人を惹き合わせる瞬間は感動的でもありました。
ちゃんと草笛を持ち帰らず捨てている姿、だけどまだ子供らしく、お父さんに最後はおんぶされていて、すべてがキレイに終わる本当に素敵な映画だった。
また好きな映画が増えました。
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