BETTER MAN ベター・マンのレビュー・感想・評価
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一人のシンガーの苦悩と栄光を描ききった超大作
正直、ロビン・ウィリアムズ氏に関しては何も知らず、ただ、予告編で超絶格好良くマイクを振りかざすお猿さんの姿に魅入られ、映画館の事前予約を選んだ、ただそれだけの理由で鑑賞しました。
いや、物凄かった。気の遠くなるほどのカット数、それを贅沢にも怒濤の勢いでつなぎ合わせて押し流し、その一つ一つも懲りに凝ったカメラワーク。映像的にも面白く、流石は大歌手、数々の歌が、意味が判らなくとも素晴らしく聞き惚れてしまった。でも、何故猿なのか。
ティモシー・シャラメさんが演じたボブ・ディランのようにそっくりに役作りする手でも出来たかもしれないけれど、そこは映像的なインパクトも狙ったアイデア勝負だったのでしょう。どういう意味かは、自分に読み解くには難しすぎる。誰とも違う、特別な自分とか? そんなよくあるチープな言葉しか思いつかない。でも、お猿さんという「キャラ立ち」のお陰で、本物のロビン・ウィリアムズ氏をよく知らなくとも、あれがそうだと、映像を見ていてすぐ判る。そして、観客に交じる「自分自身を責め立てる」ための虚像の「自分自身」。
精神の病に関しても、これまたよく判らないけど、うつ病にありがちなことなのでしょうか。それが足かせとなってマイクを握るその手に、踊るその足に、枷となって纏わり付く。観客に混じる彼ら=自分自身の姿が一目で分かる。その映像を見てて、お猿さんに例えた演出の大勝利確定だった思います。
そして超絶のリアリズムのあるライブ映像。あれ、本当にやり直したのかな。お猿さんは当然ながらCGの力でしょうけど、ライブを実際にやり直したのなら凄すぎる。そして、ロビン・ウィリアムズ氏のプレッシャーが高まるにつれ、それこそ数万人の自分自身と血みどろの戦いを演じて、病は頂点に達した。そして、カウンセリング。自分に纏わる、数々の人々との和解。そして、自分自身をようやく受け入れるエンディング。これ、「ビューティフル・マインド」に通じるものがありますね。事前に見ておいて良かったと思った。
そして歌う「マイ・ウェイ」。特に意味は無いだろうけど、「歌詞の知らない人は歌わないで」というセリフに強い意味があるように思えてなりません。自分にも覚えがある。例えば「しゅわきませり」って意味も判らずクリスマスに歌っていたとかw 多分、ウィリアムズ氏が父親と一緒に歌っていた子供の頃とは違い、ようやく歌詞の意味、歌の意義を理解して歌っている自分自身に気が付いて、意味の知らなかった子供の頃に対する気恥ずかしさがあったためではないか――ちょっと深読みのしすぎでしょうか。
そして、その歌う姿こそ、その頃の映画冒頭で見せたシーンとオーバーラップさせたこのエンディングは正に映画の様式美。ああ、最初と最後で同じように病院で歌う、ボブ・ディラン伝記「名も無き者」に通じるものがあるなあ。そしてマイ・ウェイの和訳、「我が道を行く」ではなく「自分の決めた心のままに」という名翻訳が実感できる良いエンディングでした。
あと余計ごとですが、その名エンディングでようやくお猿さん顔を見ていて気が付きました。お猿さん顔の芸能人てチラホラいますよね。ウーピー・ゴールドバーグさんとか岡村隆史さん。いやもう、最後には岡村さんにしか見えなくなってしまった。お元気ですか。チコちゃんでそのお姿を拝見してます。この映画とは関係ないけど、応援してます。頑張ってくださいね。
実話に基く映画とは
試写会で観ました。
猿が踊って歌ってという作品なのかなー
って思ったら全英で有名なロビーウィリアムスのことだったのか。という感じでした。
終わるまで全く分からなかったという印象でした。
R指定あるらしいけどR18以上にしたほうが良いという印象でした。
主人公を猿で描く意味
猿が主人公でしかも歌手という意味不明な設定に興味を惹かれた本作。幸運にも試写会に当たったので、一足早く鑑賞させていただきました。主人公が猿である理由を、観る者にいろいろと考えさせる作品であったように思います。
ストーリーは、イギリス生まれで歌うことが大好きな少年ロビー・ウィリアムズが、ショーマンである父に憧れ、自身もスターになることを夢見て受けたオーディションに運よく合格し、ボーイズグループ「テイク・ザット」」のメンバーとしてデビューして人気を博し、グループ脱退後もソロアーティストとして活動しながら国民的スターへと上り詰めていくが、その裏で苦悩する姿を描くというもの。
主人公ロビー・ウィリアムズは実在する世界的ポップ歌手らしいですが、音楽に疎い自分は全く知りませんでした。本作では、彼の幼少期から話を起こし、家族や仲間との関係性を織り交ぜながら、トップスターになるまでの紆余曲折を描いており、とても勉強になりました。近年、有名アーティストの自伝的映画が多く、そのほとんどが成功とともに酒と女とドラッグでボロボロになっていく主人公の姿を描いていますが、本作も似たような展開となっています。
冒頭は、何の脈絡もなく猿として描かれるロビーが、友達からも家族からも普通に受け入れられている様子に強烈な違和感を覚えます。というのも、本物の猿が人間と共演しているとしか思えないほど、映像がリアルだからです。さすがアカデミー賞で視覚効果賞にノミネートされるだけのことはあります。とにかく、ここを飲み込まないと、なかなか話が入ってきません。それでも、デビュー後のパフォーマンスには、目を奪われるものがあります。中でも、序盤の「ラ・ラ・ランド」を思わせる街中でのミュージックビデオ風シーンは、多数のダンサーを投入し、さまざまな工夫を凝らしたパフォーマンスが圧巻です。
そこから先は、栄光と転落を見せられ、なんだか苦しくなりますが、不死鳥のように蘇るロビーの姿には、彼の意地やプライドのようなものを感じます。とはいえ、常に自身の内に弱さや不安や劣等感のようなものを抱えて、ギリギリの崖っぷちで踏みとどまっているように見えるのが痛々しいです。
幼少期から周りに認められたくて頑張っても結果が伴わず、大好きな父からも見捨てられたかのように感じた彼は、常に不安定な思いを抱いていたのではないでしょうか。そんな彼をありのままに受け入れ、絶対的な安らぎを与えてくれたのが祖母。その最愛の祖母を失ったロビーが自分を保つためには、もはやドラッグしかなかったのでしょう。
そんな彼が、薬物依存から脱却し、ラストで父と共にステージに立つ姿が、本当に沁みます。もちろん冒頭で父と熱唱した「マイ・ウェイ」の回収なのですが、これまでのロビーの生き様、父との関係性などを振り返り、ロビーが力強く前に踏み出したことが伝わる、圧巻のステージに胸熱です。
主人公が猿である理由は結局わからずじまいでしたが、私は、ロビー自身の苦悩のように感じました。人は誰しも、大した力はなくても、何者かになりたいと願うものです。でも、いざ立場を得ると、今度は自信のなさが不安や劣等感を生みます。ロビーは、周囲が求める自分と本来の自分とのギャップに悩み、虚栄心と自尊心の狭間で苦しんでいたのかもしれません。客席に幻覚のように現れる過去の自分の姿は、ステージ上にいる偽りの自分を客観視する本当の自分のようです。それとも、名声を手にして進化の止まった自分を冷ややかに見下される恐怖の具現化でしょうか。あるいは、よりよき人になりたいと願いつつ、まだなりきれない自分を、人ならざる姿として描いているのでしょうか。タイトルの「BETTER MAN」とあわせて、さまざまに考えられて興味深いです。
主なキャストは、ロビー・ウィリアムズ、ジョノ・デイビス、スティーブ・ペンバートン、アリソン・ステッドマンら。ロビー本人の歌声が、本作に確かな説得力を与えています。
ミュージカルシーンは目を奪われるよう
採点4.3
ユナイテッドシネマ特別試写会に行ってきました。
ポップスター、ロビーウィリアムズの自伝ミュージカル作品。
彼の「パフォーミングモンキー」を採用したのか、全編チンパンジー姿という驚きのアイディア。これが実に面白い。
何者でもない少年からテイクザットに、そこから脱退と転落、ドラッグとアルコールで沈んだ生活、そして奇跡的とも言える復活。
そのヒット曲にのせたミュージカルシーンは、どれも本当に見事。目を奪われるようでした。
またライブシーンもすごく、ネブワースやアルバートホールでのパフォーマンスはその熱量が本当すごい。映画屈指のライブシーンでしたよ。
クライマックスの「マイウェイ」は、彼の夢や想い全てが詰まっていたように見え、涙が止まりませんでした。
外でコード引っ張って、おばあちゃんとポテチ片手にTV観るシーンも好き。
そのキャリアの光と闇を、これ以上無いくらいドラマティックに描いた作品。
これは素晴らしかったです。
R18/薬物と乱れた性
試写会に当選し鑑賞しました。
R12でしたが、思ってた以上に薬物と乱れた性が描かれており、カルチャーは理解していますが得意な映画ではありませんでした。
中高生には見て欲しくないし、大人の自分も気持ちよくは見れません。
映像は凄く、広告に使われているシーンなどはエンターテイメント感を派手に楽しく見ていましたが、それらは僅かで、それ以外のシーンはほぼ薬物による幻覚と現実の境界がハッキリしておらず見ていて辛いというか、気分が悪くなりました。
この映画の最大の特徴でもある主人公をサルで描いている点がとても良かったです。
人間だと目も当てられないシーンもサルだと若干まろやかに…
映像技術にもとても関心しました。
Forbidden Road
ポスターと予告をサラッと観るだけで鑑賞しに行くスタイルが裏目に出てしまいました。
ロビー・ウィリアムズは名前は知ってるけど曲は聞いたことない…半自伝作品だけどロビーは猿に置き換えての作品ということでカオスが乱れまくっていました。
試写会で先行しての鑑賞で特典はポストカードでした。
猿であることに最初こそ疑問を抱いていましたが、段々慣れてきましたし、特段説明なくても半自伝的なこういうのもありだよなと飲み込むことはできました。
外見で判断してはいけない的なメッセージも込められているとは思いますが、猿なのに何も触れられないと観ている側もゾワゾワする前があり、その考えも製作陣からしたら思うツボなのかなとは思ってしまいました。
スターダムに駆け上がっていく流れがすっ飛ばし感があり、実際はもっと綿密に駆け上がって行ってるはずなのに、テイク・ザットの売れ方がピンと来ずのまま会場がガンガンでかくなっていくので、その辺のギャップも上手いこと咀嚼できなかったなぁとは思いました。
序盤は完全にフィクションだよなーと思いながら観ていましたが、途中でオアシスが登場してから「こういう作品って実名のバンドを登場させてもいいんだ」と思ってからの、にしても事が上手いこと運びすぎてるな、もしや?といった流れで伝記映画だという事に気づけてスッキリしました。
ミュージカルシーンは本当に素晴らしく、街中でテイク・ザットが駆け回るシーンはワクワクしっぱなしでしたし、船上での煌びやかさは最高でした。
ミュージカル色強めの作品だったら印象も変わっていたのかなとは思いましたが、実在する人物の物語を華やかにするのも難しいのかなと考えさせられました。
幻覚描写は実際に薬をやったらこんな感じになるという疑似体験としては良いと思うんですが、ライブシーンで盛り上がっているところにそれをぶち込みまくってくるのでライブシーンが全然盛り上がれない悪循環が発生していてモヤモヤしました。
昂っているところに過去の自分が問いかけてきて暴言を浴びせ、フェスのシーンでは何故か乱闘が発生したりと現実と虚構が入り乱れまくるので中々にこんがらがせてきます。
大スターってどうしてこんなにも薬に溺れてしまうのか、忙しさだったり自分の理想にたどり着けないというのも分かるんですが、何故薬へ行ってしまうのかといったところがどうしても気になってしまう伝記映画が何年も何年も…そこは型に悪い意味でハマっていたような気がしています。
史実がどうだったかは分からないのでなんとも言えないところですが、母に感謝するのは勿論当たり前なんですが、父にまで感謝してしまうのか?とはなってしまいました。
ロビーの人格を歪ませてしまったのは勿論、息子だ息子だと宣伝しまくる都合のいい性格なのになぁ…とどうしてもそこは納得いきませんでした。
ハッピーエンドにむむむってなるのは久しぶりでした。
期待する方向をミスっててイマイチ乗り切れないところはありましたが、それでも映像表現は圧巻でしたし、マンネリ化してきた伝記映画に喝を入れる形になっていたのは良かったと思います。
ただこれ日本でのヒットはキツイだろうな…宣伝部の努力が実るか乞うご期待。
鑑賞日 3/4
鑑賞時間 18:30〜20:46
座席 M-5
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