劇場公開日 2025年3月28日

「ステージにいるのは、ロビーの精神を具現化した自己評価だと思う」BETTER MAN ベター・マン Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ステージにいるのは、ロビーの精神を具現化した自己評価だと思う

2025年3月28日
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鑑賞方法:映画館

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2025.3.28 字幕 MOVIX京都 Dolby Cinema

2025年のアメリカ映画(137分、PG12)
実在の人物ロビー・ウィリアムズの外見をチンパンジーで描いた伝記音楽映画
監督はマイケル・グレイシー
脚本はサイモン・グリーン&オリヴァー・コール&マイケル・グレイシー

原題の『Better Man』は、「より素晴らしい男性」という意味

物語の舞台は、1982年のイギリス北部の田舎町

そこで育ったロビー・ウィリアムズ(モーションキャプチャー:ロビー・ウィリアムズ&ジョノ・デイビス)は、周りの同級生たちよりも成長が遅く、それがコンプレックスとなっていた

彼の父ピーター(スティーヴ・ペンバートン)はキャバレーなどを中心に展開する歌い手で、ロビーは父のことを誇りに思っていた

テレビ番組で敬愛するフランク・シナトラの曲が流れれば一緒に歌う仲の良い父子だったが、父は「才能がない人間には価値がない」と考えるような人だった

ロビーは幼少期から自分の価値について悩むようになり、自分には才能がないと劣等感に苛まれていた

ロビーが15歳になった時、彼は幼馴染のネイト(フレイザー・ハドフィールド、幼少期:リーサム・ブリサンド&ジャスパー・ホール)とともにイギリスのポップアイドルのオーディションを受けることになった

ロビーは何とかオーディションに合格するも、メンバーについていくのがやっとで、それでも何とかして目立ちたいと考えていた

さらに、ステージなどの重積からドラッグに走るようになったロビーは、公私共にメンバーから疎まれるようになり、とうとうメンバーから外されてしまうのである

物語は、前半が「Take That」で駆け上がるまで、後半はソロ活動をメインに描かれ、その中で常に自分の幻影に悩まされる様子を描いていく

グループに入ってからも劣等感を感じていて、それでも虚勢を張っていくのだが、これは自己防衛に近い印象があった

様々な時代の自分自身が自分を引き摺り下ろそうとしていて、それから逃れるためにドラッグに逃げるものの、さらに自分自身が増殖し続けていく

ドラッグが入ってからの心象風景が映像化されているために展開が目まぐるしく、細かなカット割で繋がっていくイメージがあるのだが、意外と混乱することはない

また、その時々の心情を表す楽曲がミュージカルっぽく演出されているが、さほど違和感なく入ってくるのは凄いと思う

チンパンジーをビジュアルにしているのだが、これに関しては最後まで慣れないと思う

それがノイズになるとも思うが、発育不足、実力不足などが伴っていて、精神的に成熟していない「中身が露出している」と思えば意外と受け入れられる

ラストのコンサートにて、人間の姿になるのかなと思ったが、父と和解を果たしても、まだ成長は足りないということなのだろう

また、彼の中にある幼児性というものが楽曲や表現に生かされているとも言えるので、永遠にあの姿を維持するのかもしれない

彼が人間になった時、それはアーティストとしての役割を終え、ステージを降りる時なのかな、とも思った

いずれにせよ、音響重視でドルビーシネマで観たが、さすがの迫力だった

カット割が激しいシーンが多いので前すぎると辛いと思うが、視界にちょうどスクリーンが収まるぐらいならOKだと思う

Dr.Hawk
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