「桐島です」のレビュー・感想・評価
全4件を表示
焦点が絞り切れていない
テーマの焦点が絞り切れていなくて平板なメロドラマ風になってしまっている。また、全体的に説明的なショット・シークエンスが多かった一方、コーヒーを淹れる場面、歌唱の場面等必然性が感じられない場面もあり全体的に単調な感じがした(一貫して流れている同じ調子のギターのBGMも単調さを後押ししている)。
監督のロマンティシズム・センチメンタリズムは反映されているのかもしれないが、“桐島のリアル”は見えてこなかった。
彼の生き様は海を超えたけど、いずれ再び、日本に戻ってくるのかもしれません
2025.7.9 イオンシネマ久御山
2025年の日本映画(105分、G)
実在の人物、東アジア反日武装戦線「さそり」のメンバー・桐島聡の逃亡生活を描いたヒューマンドラマ
監督は高橋伴明
脚本は梶原阿貴&高橋伴明
物語の舞台は、1970年代の東京
東アジア反日武装戦線のメンバー・桐島聡(毎熊克哉)は、ボスの黒川芳正(伊藤佳範)、同胞の宇賀神寿一(奥野瑛太)とともに、労働環境を改善しない企業に対して、爆破テロ行為を続けていた
世間を震撼させた三菱重工の爆破テロ事件以来、公安は目を光らせていたが、桐島たちはその目を掻い潜って、爆破事件を繰り返していた
ある日のこと、黒川が逮捕されたことをきっかけに逃亡生活に入った桐島と宇賀神は別行動をすることになった
安いアパートを借りて、日雇いなどで生計を立てていたが、桐島は東京を離れることに決めた
湘南の海辺の街に辿りついた桐島は、そこにあった小林工務店に転がり込む
この頃から内田洋と名乗るようになった桐島は、小林社長(山中聡)の信頼を得て、同僚の金田(テイ龍進)たちと佐官などの仕事を行なっていく
会社が借りているアパートで生活を始めることになった桐島は、奇妙な隣人(甲本雅裕)などに警戒をしながら、日々を積み重ねていくことになった
だが、爆破の悪夢を繰り返し見るようになり、穏やかな日は訪れようもなかったのである
映画は、2024年に桐島が病院で名乗ったことをきっかけにして、偽名を使いながら47年間も続けた逃亡生活がフォーカスされるようになっていた
本作はドキュメンタリーではなく、あくまでも架空の話になっていて、このような生活を送っていたのではないかというものを、様々な資料や証言などから構成している
だが、当時を知る人が「=桐島だった」と認識はしておらず、死亡のニュースが流れても、使われたのは20代の頃の写真だっただろう
なので、どこまでの人が「あの時の彼が桐島だったのか」と思ったのかはわからず、同胞だった宇賀神たちの持っているイメージというものが色濃く出ているように感じた
物語は、企業による労働搾取問題に抵抗する様子が描かれていて、それに対抗する手段が爆破テロだった、という時代になっている
学生運動が盛んな時期で、日本赤軍なども活動していた時期なのだが、今の若い世代はほとんど知らないと思う
私の世代でも、生まれた頃に起きた事件で、しかも関東圏のことだから身近に感じることはなかった
全国的に指名手配されているものの、取り立てて興味を持った覚えもなかった
今の時代も労働者の搾取問題は取り沙汰されるが、もっと巧妙で、当時以上に法律の目を潜り抜けているものが多い
現在進行形で様々な問題が報道されているのだが、映画の中の時点でもすでにクルド人の不法滞在問題なども登場しているので、2014年くらいからのパートに関しては聞き覚えのあることも増えてきていた
桐島は、安倍総理の演説にブチ切れたり、新入りのたけし(和田庵)の差別的な発言にキレることもあった
根底にある労働者の搾取構造に対して、どんな運動を行なっても変わらず、ますます悪化していることを肌で感じていたと思う
失われた30年の中で逃亡生活を続けていて、自分の近くに来る人たちも変化してきたと思うのだが、そう言った部分はあまりふれられていないように感じた
ラストでは、中東地域のどこかの武装勢力が描かれ、AYA(高橋惠子)の元にメッセージが届いていた
そのメッセージに字幕がついていないのはアレだが、アラビア語で「神の御加護がありますように。桐島聡氏は亡くなりました」と書かれていた
彼の思想や生き方が現代にも根付いていることを意味し、その行動は国内を飛び出しているということになるのだが、この状況を桐島が望んでいたのかは何とも言えない
それでも、色んな国が辿る道でもあり、未来の日本も転落して高度成長前まで戻ってしまうのなら、同じことが繰り返されるのかな、と感じた
いずれにせよ、かなり訴求する層が少ない映画で、劇中の桐島たちの思想に共感する若者もほとんどいないと思う
人に怪我をさせないと言っても、どこかの工場を爆破させたツケは現場の底辺に押し付けられるだけで、企業の体質が変わるということはない
社会構造が変わっても、企業はどんどん巧妙になっていくだけなので、そう言った時代の中でどう生きていくかというのは二極化していくのかもしれない
どのレイヤーで生きていくかを選ぶ時代になっていて、そう言った構造を根本から覆すよりは、構造の中に新しく自由な構造を作る以外にはない
その方法はたくさんあると思うが、とりあえずは世の中の仕組みを理解して、自分なりの角度で築き上げるしかないのかな、と思った
計算した演技なんだか素なんだか境目が分からない
楽しみにしていた映画。
私としては、結構面白かった。
49年間に渡って逃亡を続けた桐島聡という人物とその思想を、物語の表面的には肯定的に描いているように見えて、実は人生の本質的な部分で、大きな疑問を投げ掛けているように私には思えました。
主役は毎熊克哉さん。
今回の映画でも、計算した演技なんだか素なんだか、いつもの境目が分からないような演技が良かったです。
毎熊さんの相手役に北香那さん。
何にでもなりきってしまう演技が好きです。今回の役はとてもキュートでした
ただし、毎熊さんに60歳を超えてからの演技を求めるのは、ちょっと無理があったのではないかな。
足立vs髙橋夫妻
部活を辞めた謎の人物が登場する作品ではない!笑。
さて、促成された「逃走」(足立正生監督)から遅れること4カ月。高橋伴明監督版の満を持した〈指名手配犯・桐島〉である。足立版はアヴァンギャルドな舞台演劇的な演出やアジテーションシーンがめだった。本作は、映画的な文法で粛々と『内田ヒロシ』として生き続ける桐島を描写していく。しかし映画後半の近年部分になると、安倍内閣の安保法制や、クルドや朝鮮半島へのヘイトといった、果たして桐島のエピソードにあったのか?という製作者の主張のような、興醒めしてしまう要素が目立つ。その点において、髙橋版は〈潔く無い〉と思う。最終シーンで髙橋惠子が大道寺あや子らしき役柄で桐島の冥福を祈る。まあ、そうなるよね。
全4件を表示
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。