「桐島です」のレビュー・感想・評価
全65件中、1~20件目を表示
逃亡の理由
本作は、死者を悼む映画だ。桐島氏は恐ろしい極悪犯やテロリストではないと、劇中で繰り返し歌われる「時代おくれ」をなぞるようにして、彼の半生がじっくりと描かれる。暴力的な役柄から生真面目、内向的な人物まで、作品ごとにガラリと印象を変える毎熊克哉さんが、20代から70歳までを見事に演じ切っており、目が離せなかった。
彼の寡黙な佇まいに加え、繰り返し描かれる部屋の様子と、朝のルーティンが印象的だ。(アーケード街や映画館などもとてもリアルで、往時に迷い込んだような錯覚をおぼえた。)年を重ねるにつれ、部屋の調度品は増え、変化していく。それは、彼の心の余裕の有無や、他者との繋がりをうかがわせる。追われる前の彼は、パフェを食べたりあんみつを食べたりと甘党の様子だったが、逃亡生活パートでは、朝のコーヒーに落とす角砂糖だけが甘味。酒を飲むシーンが増えていくが、時にはお菓子を口にしたのだろうか。(もし、キーナとギター練習の合間に板チョコを分け合って食べたりしていたら、彼らの人生は変わったかもしれない。)また、個人的には、マグカップだけは使い込んでいくのかと思っていたので、節目節目でカップが変わっていくのは意外だった。靴とバッグを常に手元に置いておくのと同じ、逃亡生活を送る上のルールなのだろうか。
一方で、なぜ彼が逃げ続けたのかが、私には合点がいかなかった。破壊活動に一般市民を巻き込んではいけないと発言し、逃亡生活中も周りに親切な人物であったならば、仲間が捕まるなかで、なぜひとり逃げ続けたのか。自分たちのしたことは犯罪でないというならば、単身でも次の「行動」に出たようにも思うが、とにかく彼は身をひそめ、(逃亡というより)隠遁生活をじっと続けていた。死人に口なしで分からない、と言えばそれまでだが、本作なりの答えが示されていたら、もっと芯がある作品になっていたのではと思う。ゆえに、老いていく後半は、彼と周りのずれや、彼が抱く違和感や焦燥が、加齢や時代の変化に片づけられてしまうようで、少し惜しい気がした。
高橋伴明監督・梶原阿貴脚本の前作「夜明けまでバス停で」が、コロナ禍の閉塞に風穴を開け放つ作品だとすれば、本作は、和紙がじわじわと水を吸い破れていくような、静かなる崩壊を描いた作品だと思う。いずれにせよ、対として味わうことで、「バス停」が、ようやく自分の中で腑に落ちた気がした。
『無名の人』では、死ねなかった。
桐島聡の本心は知る由もありませんが、
起こした事件を「申し訳なかった」との気持ちと、
自分の生きた証として、名乗って死にたかったのでは、
ないでしょうか。
映画によると1984年に働くことになる工務店に、
2024年1月に倒れて入院するまでの40年間、
職場で用意した“同じアパート“にずっと住んでいたようだ。
そのことに驚いた。
普通、職場も転々とし、全国津々浦々を転居しつつ“逃亡生活を送る“
なんて思い込みとは無縁だった。
このあまりにも“動かない事“が最高のカムフラージュになったし、
その方が効率的だったとしたら、すこぶる皮肉である。
•運転免許証を持たず、
•携帯電話を所持せず、
•健康保険証も持たないことは、入院して初めて知らされる。
◆歯磨きをするシーンが3回ある・・・穿った見方だが、
桐島は虫歯になり歯医者へ行くことを恐れて、
丹念な歯磨きで、通院を回避していたのかも知れない。
◆指名手配犯となった1975年から、1984年に工務店に勤めるまでの
9年間は空白である。
この間は居場所や仕事を転々としていた可能性がある。
■簡易宿泊所で、衣服を着て靴を履いたまま、寝ているシーンもあった。
その結果として、詮索しない工務店・・・
そこは普通の職場なら当然あるべき、
•所得の申告による納税義務も
・厚生年金(あるいは国民年金)の加入も、
・一年に一度はあるはずの健康診断も、実施しない
★臨時職員(あるいは日雇い?)の扱いを、40年間受け続ける?
★本人が希望したとしても、この工務店は少しばかり謎である。
★この会社の形態で40年間、存続したのも謎である。
だからこそ居心地よくて働き続けて、
40年間も発覚しなかったのではないのか?
余談ですが、
脚本を書いた梶原阿貴は、ベストセラー「爆弾犯の娘」の著者。
父親がリアル爆発犯として14年間逃亡した後に出頭して捕まった、
その逃亡生活を4歳から14歳の娘の視点で生き生きと描いた
ノンフィクションの著者で、
高橋伴明監督からの直々の電話で、脚本を依頼されて、
『5日間で書け‼️お前なら書ける』と、言われたそうだ。
因みに“女優になりたい“と母親に告げると、
若松孝二監督の所へ連れて行かれて女優としてスタート切った
そうである。
【くさやの干物の匂い】で隣人が通報されて警官が来たエピソードは、
梶原の実体験だそうだ。
毎熊克哉が演じる内田(桐島聡)は、大人しく人の良さげな人。
好感が持てるキャラクターである。
毎朝起きるたびに見る《爆破シーン》の夢。
大音響と華々しい猛烈な炎のシーンで目を覚ます。
桐島は、うなされるほどの悔恨にも怯えていた。
一見して柔和な内田(桐島)だが、
内実は用意周到で大胆な冒険家のようなサバイバーだったのでは
ないだろうか?
淡々とした日常は、
実は北極圏のグリーンランドを
犬ぞりを引いて横断する植村直巳みたいな
冒険家のような日々だったのではあるまいか?
(吹き荒ぶブリザードや、いつ落ちても不思議のない氷の穴のような)
そして最期の時、死を覚悟した彼は、矜持を持って、
『私は、“東アジア反日武装戦線“の桐島聡です』
・・・そう言った。
この映画は、日本国を良くしようと、「革命を志した男」
そして40年間を逃げ切った桐島聡の半生を
多分こうであろうと推測した
桐島聡の生き様そして死に様である。
桐島たちのやっていることは資本家が労働者を搾取したり、日本が新興国...
本当のところは誰もわからない
「これは、エンドロールで、監督名がど真ん中で止まるタイプの映画だな」と思っていたら、その通りだったのには笑ってしまった。
それでも、自分は結構好き。なんせ、内田勘太郎のスライドギターが、映像にバチッとはまって、すこぶる気持ちいいから。
後半に出てくる、河島英五の「時代おくれ」もいい。
昔、紅白で歌う河島英五に心を掴まれたことを思い出した。
桐島は、どうして人生の最後に、自ら名乗り出たのか。
捕まらずに逃げ切った人生の種明かしをしたのか。それとも、常に警察に怯えて過ごした人生の中で、最期くらい穏やかに逝きたかったのか。
満期で出所した宇賀神との対比から、色々と想像させられるが、本当のところは誰もわからない。
隣に住んでる甲本雅裕がいい味を出していた。
<ここから内容に触れます>
・それにしても、監督は、奥さんの高橋惠子をどうしても使いたかったんだなぁと…。
大道寺あや子ってことだと思うけれど、賛否が分かれるところだと思った。
あれによって、桐島の人生に、監督の色をかなり強く乗っけてしまったと思う反面、久しぶりの高橋惠子に素直にテンションが上がってしまったのも事実なので、自分は態度保留。
・桐島の元カノ、バーブラ・ストライサンドが嫌いなら、桐島のことも無理だろうなぁと思った。彼女はどんな人生を歩んだのかな。
・北香那、今作でも違った色を発見できて、ますます要チェック。(ばけばけの出演もうれしかったし)
・安倍内閣の2014の「集団的自衛権の行使に関わる憲法解釈変更の閣議決定」が、間違いなく今問題になっている高市首相の台湾有事発言につながっているわけで、公開時よりも、今現在の方が観るタイミングだったかも。
・桐島自身が関わった事件では、映画の通り誰も死んでないのだが、「連続爆破殺人犯」みたいなイメージが今も流布されているのは、ある意味誤った情報の一人歩きという点でちょっと薄寒い。
時代遅れ
空白の時間に宿る現実
青春映画風にして逃げてる感じがした。
穏やかだがどこか寂しい約50年の逃亡生活
自分が子どもの時からいたるところに貼られていた手配書で名前と顔を知っていた桐島聡。逃亡中の彼が末期ガンで入院している病院で「桐島」を名乗ったことで報道されたことを覚えている。50年近くの逃亡生活はどんなものだったのか興味があって本作を観ることに。もう一つ観ることになった要素が脚本の梶原阿貴。テロ事件で指名手配され逃亡生活を送っていた父親と同居していた過去を持っている彼女の脚本に興味を持ったから。
日本の学生運動が徐々に過激化し、内ゲバやテロ行為に走っていったことはいろんなものを見聞きすることである程度知ってはいた。本作に登場するのは、あのあさま山荘事件の後の事件。どの爆破事件も知らなかったが、連合赤軍が起こした事件よりは思想的にまだ理解できる(犠牲者が出ていることには全く同意できないが)。本作でも一般の方が巻き込まれることを是としない考え方が色濃く出ていたのは興味深い。
さて、内田と名乗り逃亡生活を送る桐島の姿だが、予想以上に穏やかなものに見えた。いや、もちろん女性と深い関係を持つことはできないし、自らの罪に向きあっていたと思えるシーンもあったから、いろんな制限があったとは思う。でも、行きつけのバーでライブ演奏を楽しんだり、常連客たちとボーリングをする姿など、好きなものをそれなりに楽しんでいた生活に思える。また、部屋にあるものが歳を重ねるごとに徐々に変わっていったり増えていったりするのは、彼の生活の充実度を示すものだ。他にも、朝のルーティンであるコーヒーを飲むシーンも、使っているものが少しずつ変わっていっても同じことを繰り返す彼の几帳面なところを表現するうまい演出だった。
テロ事件の犯人の逃亡生活と考えると、その穏やかさは簡単には受け入れられない。でも、桐島聡という1人の人間の生きざまを描いた物語としては面白かった。死を目前に自分を偽りたくないと考えたところも。でも!と思う。50年近く逃亡する価値のある思想だったのかと。そんなに意義のあった活動・運動だったとは思えない。そんなことを考えるからこそ、彼の逃亡生活はどこか寂しいものに見えてしまうのだ。
最後に桐島を演じた毎熊克哉が本当に絶妙だったことも触れておきたい。彼の朴訥で優しさが溢れる、それでいて内なる熱さも秘めている演技は素晴らしかった。そして北香那の存在感。彼女の歌声で「時代遅れ」を久々に聴いてみようと思ってしまった。
桐島の人生の一端を知る作品
末期癌で入院して素性を明かした桐島。
それまでずっと小林工務店で内田洋として
うーやんの愛称で呼ばれて働きながら生活していたとは。
よくバレなかったなと率直に思う。
バレそうになったことは劇中同様あったとは思うが、
自分を目立たぬように、影のように潜伏し続けるのは相当な覚悟であったろう。
そのあたりは、キーナ(北香那)の告白を受け入れられない桐島に
その一端を感じた。
桐島が満たされていたであろう、若い時分の小林工務店時代の
キーナとの出会いやパブ?でのはしゃぐ姿、ボーリングを楽しむ姿など、
ここに時間を割き、桐島が普段何を考えて潜伏していたのかは
直接的には描かれず、ビル爆発で毎朝目覚め、安倍首相のスピーチ中に
テレビを壊す、外国人に対する姿勢など、、描き方で人格を表現していた。
客観的に桐島を知るきっかけとなり、学びとなる作品であった。
善良無垢な逃亡犯の話しは、毒にも薬にもならぬ。
目立たぬように、はしゃがぬように
東アジア反日武装戦線のメンバーとして指名手配を受けながら50年近く逃走を続け、昨年病院で亡くなる直前に本名を名乗り出た桐島聡氏を巡る物語です。同じテーマを扱い、今年3月に公開された足立正生監督の「逃走」と対を為す作品と言ってよいでしょうか。
劇中何度も歌われる河島英五さんの歌でお馴染みの「時代おくれ」の歌詞「目立たぬように、はしゃがぬように」こそ彼の望みだったんじゃなかったのかな。それは単に警察から逃れる為にでなく、本当にそんな風に生きたかったんだと思えました。一方で、これも本作で描かれる様に、安部晋三のスピーチに怒り、いつまでも変わらない外国人ヘイトに苛立ちを募らせていたのではなかったでしょうか。それもこれも誰にも分らぬ事であり、想像するしかないのですが。
「逃走」をも「闘争」と読み解く足立正生監督作(これはこれで足立監督らしくて良いのですが)より僕には人間の姿がはっきり見えました。「人の一生って何なんだろうね」と帰り道に考えてしまったと言う事は本作に力があったと言う事です。
名もなき人に名を与える
自首してればどうなってたのか
低予算ながら、長い歳月の描き方が秀逸
気になっていた高橋伴明監督の作品。
1970年代の連続企業爆破事件の指名手配犯、桐島聡が、約半世紀におよぶ逃亡生活の後、最期は本名で迎えたいと素性を明かし、その直後に他界。その知られざる生活を描く。
1970年代、反日武装戦線の活動に共鳴した大学生の桐島聡は、連続企業爆破事件の被疑者として全国指名手配となるまでの部分が前段で描かれるが、スクリーンの空気感は高橋伴明ワールド。
その後、偽名を使いながら逃亡生活を続け、内田洋として、藤沢にある工務店で長きにわたり真面目に勤め、質素な暮らしを送る中、音楽を愛する姿などとともに、「ウーヤン」と呼ばれ、周囲から信頼され好かれる存在となっていく。
その間の葛藤、その軌跡をフラッシュバックを交えながら、ストーリーとして展開していくが、その中で専ら善人として扱われているにも関わらず、結局自首するに至らなかった彼の人生には違和感を禁じ得なかった。
一方、他界するまで主役を演じた毎熊克哉が好演。インスタントコーヒーを飲むシーン、歯を磨くシーンといった日々のルーティンを描きながら、アパートの部屋に家財や本が増えて行くさまに、長い歳月をうまく感じさせる演出。
そのルーティンは、映画「パーフェクト・デイズ」と被るものもあり、低予算ながら映画としての造りは秀逸。
子どもの頃、丸の内に勤務していた父から、三菱重工爆破事件の惨状を聞かされており、長年貼られていた指名手配写真が頭に焼き付いていたこともあって、スクリーンに没入できた。
東アジア反日武装戦線の桐島です
全65件中、1~20件目を表示













