劇場公開日 2025年7月4日

「桐島聡の周辺をぐるぐると巡っているだけのセンチメンタルな巡礼の旅」「桐島です」 Freddie3vさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0桐島聡の周辺をぐるぐると巡っているだけのセンチメンタルな巡礼の旅

2025年7月10日
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鑑賞方法:映画館

本作は1970年代に爆弾テロを実行した過激派のメンバーで全国指名手配され、50年に及ぶ逃亡生活の後、昨年死亡した桐島聡の半生を描いた作品です。桐島聡に関しては今年3月公開の『逃走』という作品が先行してあり、私も4月に観てここにレビューをアップしています。そのレビューで、7月には『「桐島です」』が公開されるので非常に楽しみの旨、記したのですが、今度のは若干、期待はずれだと感じました。

確かに、この作品は『逃走』よりも商業映画としての完成度は高いかもしれません。俳優たちはそれぞれの持ち味を活かし、そこそこいい演技をしていますし、ユーモラスなエピソードもあり、なかなか楽しめる、いい映画風ではあります。でも、この映画では途中から桐島聡を見失います。かわりに工務店で働く 善良な市井の人「内田洋」なる人物を見続けることになります。まあ完全に桐島聡を消し、内田洋になりきったから逃げ切れたとも言えますが、ここで描かれた内田(桐島)には決定的な何かが欠落しているように感じました。社会運動に身を投じ、それにのめり込み、爆弾テロまで実行した男。全国指名手配され、隠れ続け、死の床まで捕まらなかった男。そんな男の持つ情念みたいな何かがこの作品では描かれていない、そんな印象を持ちました。

登場人物のある人とある楽曲のエピソードが繰り返し語られます。とてもセンチメンタルです。センチメンタルすぎて見てるこっちが気恥ずかしくなります。まあ謎の人生を送って死んでいった人物についてのことなので、高橋伴明監督のこの描き方も方法論的に間違っているとまでは言いませんが、桐島聡という人間の本質には迫りきれていないと感じました。

Freddie3v
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