「共感」「桐島です」 ぱんちょさんの映画レビュー(感想・評価)
共感
小学生の頃から見ていた「桐島聡」だし、学生運動への興味は以前からあったし、で鑑賞。
まさか高橋伴明監督作とは思ってなかったが、事前の予想に反してまさに今撮られるべき作品になっていた。
正直、全共闘世代ど真ん中の高橋伴明に物語られるのは若干モヤるものが無いではないが、それでもやはり現在の日本を射抜く作品になっているのは流石。
本作のテーマはまさに桐島に捧げられた「やさしさを組織せよ」ということば通りだった。
潜伏50年(ほぼ)ということで事実はほぼ不明ながら、同士であった宇賀神氏への聞き取りなどから、『「指名手配の爆弾犯」桐島』でなく、大日本帝国の先兵となってアジア諸国を搾取しながら責任を取ることのない日本企業や政府そのものへの責任を問うひとりの青年としての桐島聡を描いている。彼はきっと昨年初に亡くなる前には、在日朝鮮人への差別には「そんなわけないだろ」と言い、クルド人差別にはその境遇を理解しようとする、そんな人だったろうと描かれる。
そうだろうなと思う。彼らが武力闘争を選び爆弾テロを行ったことは間違っていたが、そもそもは「やさしさ」から始まっていることであり戦後誰も問わず取らなかった「責任」を問うているのだから。
序盤で桐島は「学生運動なんて時代遅れだし、上場企業に就職したいし」という理由で彼女に振られる。私が全共闘世代を許せないのはそこで、彼らは社会変化運動をファッションとして消費し「時代遅れ」と葬ったうえで転向して体制側に加わった。その後の社会変革運動はすべてそこに飲み込まれてしまい、その結果として今の日本がある。
現在の日本社会に蔓延るヘイトや差別は当時もあり、桐島たちがそれに抵抗していたにもかかわらずそれは今も温存され、再び猛威を振るっている。
我々は桐島の「ごめんなさい、こんな日本で」という贖罪に共感すべきだ。共に謝り共に未来に向かうべきだ。でなくては、彼らの爆破闘争は正しかったということになる。
高橋伴明監督のそういう想いは伝わったし、そこに本当に共感する…
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