劇場公開日 2025年2月8日

  • 予告編を見る

「骨太で、誠実な作品」みんな笑え sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0骨太で、誠実な作品

2025年4月20日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

映画を観ているうちに、これはドキュメンタリーなのではないかと感じてしまうほど、登場人物たちのやり取りが自然だった。「落語は業の肯定」という言葉は、談志の名言として知られるが、その業をまさに自身で体現しているかのような、主演の野辺富三さんが素晴らしかった。
太紋(二代目勘太)が背負わされている環境は確かにハードだが、それだけを理由にはできないどうしようもなさや情け無さ等が、やっぱり観ている観客は、自分に重ねる部分があって、愛おしさを感じるのだと思う。
この映画は、そうした「業」の描き方にごまかしがなく、なおかつ、無理にエモさを出すための不自然な演出や背景説明なども皆無。けれど、カメラワークやその時々の画面構成は、内容に合わせて神経が行き届いており、キチンと不特定多数の観客を信頼して誠実につくられた作品であることが伝わってきた。それに、脇を固める、希子役の辻凪子、希子の母の陽子役の片岡礼子、父であり師匠の先代勘太役の渡辺哲、弟弟子役の今野浩喜、そして、ヘルパー役の和田光沙の演技が、それぞれに本当にすばらしい。
内容は観てのお楽しみということで、ここではあえて触れないが、自分は所々に目頭が熱くなる場面があった。(もちろん笑える場面も様々な上で)

公開劇場は多くないかもしれないが、お近くで上映されていたら、是非足を運んでいただきたい佳作。
また、本日の上映は、鈴木監督と主演の野辺さんのアフタートークありだったのだが、その中で視覚障害がある観客の方から、バリアフリーの音声ガイドの出来が素晴らしかったとの発言もあった。様々な方に楽しんでいただけるような作品になっていることも付け加えたい。

sow_miya