「アルゼンチンから届いた進化しつづける異色作」トレンケ・ラウケン 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
アルゼンチンから届いた進化しつづける異色作
この映画はPart1とPart2で合計4時間を超える。ならばそれに見合う超大作かと思いきや、目の前に広がるのはスケールや量で推し量れない不可思議な構造を持ったストーリー。何よりも特徴的なのは明確な解決や結末が存在しないことだ。劇中では幾人かの女性が姿を消すのだけれど、理由や根拠はまったく示されず、いわゆる謎解きのカタルシスは皆無。その代わり、本作には脈打つ”進化”の過程がある。まるでバトンリレーのように作風がミステリー、メロドラマ、ラブストーリー、SF幻想譚へと変化を遂げるのだ。決して目くるめく衝撃の4時間などではないが、そこには人を焦らせない、ゆったりした時の流れ、黄昏、心のうごめきがあり、人をナチュラルに謎へ向き合わせる心地よい風が吹いている。いまだ私は本作をどう表現すべきか最適解が掴めていないが、主人公と同じラウラの名を持つシタレラ監督がこれから世界的に注目されていくのは確実だろう。
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