「空前絶後の大スター高難度スタント自演シリーズを完遂したトムに感謝。ファイナルゆえのお別れ会的側面も」ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
空前絶後の大スター高難度スタント自演シリーズを完遂したトムに感謝。ファイナルゆえのお別れ会的側面も
前作「デッドレコニング」のレビューで、「二十数年にも及ぶ長寿のアクションシリーズでありながら、主演俳優が交代することなく、しかも回を追うごとに難易度を増す独創的なスタントに主演スターが自ら挑み続けるという、映画史上例のない壮大なプロジェクトに、私たち観客はずっと立ち会っているとも言える」と書いた。その壮大なプロジェクトも8作目でついに完結。一世を風靡したアクションスターは多くとも、トム・クルーズのように危険を伴う高難度スタントを長年にわたり積極的に自演してきた俳優は過去にいなかった。抜群の身体能力、危険な撮影を恐れない精神力を備えていたことがまず前提としてあるが、シリーズ第1作「ミッション:インポッシブル」の撮影時で33歳位、この若さで製作陣に名を連ねる権力をすでに得ていたことも大きいだろう。自身の身体的限界に挑戦するスタントを活劇の最大の見せ場にする、そのプロデュース能力こそがシリーズ成功の要因でもあったはずだ。
「ファイナル・レコニング」はまた、脚本も兼ねるクリストファー・マッカリー監督が5作目以降手がけてきた“マッカリー四部作”の最終回としても位置づけられる。4作目までは1作ごとに監督が交代し、ストーリーもその都度完結。だが第5作「ローグ・ネイション」以降はマッカリー続投の影響でストーリー上の連続性が強まり、7、8作目に至っては企画当初から一続きのストーリーの前後編として開発された。この「ファイナル~」の序盤に説明台詞が多く、進行がややもたつくように感じられるのは、ストーリーを前後編に分けたことの弊害と言えるかもしれない。
ただし、シリーズ過去作からの映像がたびたび挿入されたり、第1作の印象的な脇キャラが再登場したりと、MIシリーズのお別れ会的な側面もある。そう考えると、若干の冗長さもまあいいかという気になってくる。
撮影中の事故で怪我を負ったり、サイエントロジーへの傾倒や奇行でキャリアを危うくしたりと、シリーズの約30年のあいだにいろいろあったが、映画史に残るスパイ活劇シリーズのミッションを成し遂げた偉大な映画人、トム・クルーズに心から感謝と喝采を送りたい。
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