ピアノフォルテのレビュー・感想・評価
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【”若き野心の努力の過程と耐圧と結果。”今作は優勝すればピアニストの道が拓けるショパン国際ピアノコンクール出場者達の姿を追った”さあ、明日から頑張ろう!”と言う気持ちになるドキュメンタリーである。】
ー 今作では、世界最高峰のショパン国際ピアノコンクールの若き出場者達数名の、一次、二次、最終選考会に挑む姿と共に、出番が来るまでの焦燥、苛立ち、自信喪失、無理やりの過剰な自信過多で自らを鼓舞する姿が、映し出されていく。ー
■特に印象的なのは、
1.ロシアの40以上の表彰実績がある、メンタルがタフそうな、けれども指導者の高齢女性の叱咤が物凄いエヴァである。
プレッシャーに強い筈の彼女が最後に流した涙は、幼い頃から努力を重ねて来た者にしか流せない、貴重なモノだと思うのである。
2.ポーランドのイケメン青年、マルティンが耐圧の為か体調を崩し、棄権するシーンは”辛いだろうな”と思いながら観ていたのだが、エンドロールのテロップを観て救われたな。
3.我が道を行くイタリア人のアレックスが一番、冷静に大会に臨んでいたように見えたな。
4.中国人のハオは、失礼ながら大きな団地に住んでいて、経済的には恵まれていない感があったが、ショパン国際ピアノコンクールには出れなかった母の強い支えの元、頑張る姿からは、元気を貰ったな。
<彼らの演奏を聴く、多くの聴衆たちが涙を拭いながら観ているシーンも、彼らの未来を拓くために懸命にピアノを弾く姿から出るオーラに触発されたモノである事は間違いがないであろう。
今作は優勝すればピアニストの道が拓けるショパン国際ピアノコンクール出場者達の姿を追った”さあ、明日から頑張ろう!”と言う気持ちになるドキュメンタリーなのである。>
挑戦する者が「得る」ものと「失う」もの
今回、ポーランド映画祭で計3回上映されたが、全て発売後、即完売御礼。
そんな中、運よく良席での鑑賞が叶った。
舞台は、2021年に開催された第18回ショパン国際ピアノコンクール。
出場者たちの舞台裏の表情がありのまま映し出される。
5年に一度しか開催されない大舞台に臨む出場者たち。
ここで栄誉を勝ち取るか否かで、その後のピアニスト人生が大きく変わる。
本選にまで辿り着いた出場者の実力は、プロのピアニストとしてじゅうぶん認められる腕を持つ者ばかり。
実力伯仲の厳しい競争の中で、優勝はもちろん、ファイナリストにまで残ることができれば、今後ピアニストとして世界中から出演オファーが殺到する〝スポットライト〟が確約される。
そんな舞台に挑む世界中の若者たちの緊張や苦悩は、コンクールの進行とともにどんどん増していく。
そんな姿がむき出しに映し出されていくスクリーンと対峙して、観ているこちらの胸まで苦しくなっていく。
今まで、書籍や雑誌、ウェブ記事など、文字ベースではこのコンクールの緊迫感を知っていたが、実際の映像(コンクール演奏直前直後の控え室での様子まで映し出されていた)を見ると、その圧が半端ないことを再認識する。
若き天才たちの苦悩と素顔
期待されていた地元ポーランドの若手ピアニストは、あまりのプレッシャーに耐え切れず、結局、自分の演奏時間直前に棄権を選んだ。
出場者の誰もが半端ないプレッシャーを抱えているはずだが、ショパンが生まれた国出身の演奏家は、さらに何倍ものプレッシャーがあるのだろう。
上っ面で見ている側からすれば、「地元の利」が有利と思っていたが、むしろこれだけ伝統あるコンクールで、世界的レジェンドの出身地から出場するというのがどれほどのプレッシャーだったのか。
約90分の映画の中では、地元ポーランドのピアニストの他は、ほとんどがファイナルに残ったピアニストたちのコンクールに臨む姿を追う映像が軸となっていた。
しかし、きっとコンクールが始まる前から映画化は決まっていて、今回の映画でフォーカスされた出場者以外にも、何人ものピアニストたちが、コンクール前から密着取材を受けていただろう。
そんなコンクール中に脱落していった若き挑戦者たちの絶望の先に、今回の映画に登場したファイナリストたちの歓喜が垣間見えていると想像すると、一層光と陰の格差は増していく。
今回は、2位の反田恭平さんや4位に入った小林愛実さんら上位に入った日本人たちはほぼ映らず。
三次予選まで進んだ角野隼斗さんが少し、あとは最後のファイナリストからの順位発表の場で見切れる程度。
反田恭平は出場者たちの中では風格ある様子で、ファイナリストたちみんなと仲良くやっていた印象。
一方で、ファイナルまで進んだ中国人の高校生ピアニストは、先生の中国人女性と2人だけでみんなと離れた場所にいて、少し気の毒に見えた。
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