劇場公開日 2025年9月26日

「ショパン国際ピアノコンクールという名の戦場」ピアノフォルテ くまねこさんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 ショパン国際ピアノコンクールという名の戦場

2025年10月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

ドキドキ

「ピアノフォルテ」角川シネマ有楽町で鑑賞した。2週前に観たBrian Enoのドキュメンタリー”Eno”上映前にみた予告映像が忘れられずに観たが、見て良かった作品。

世界的ピアニストを輩出してきた、世界最古で最高峰の舞台、ショパン国際ピアノコンクールに挑む若きピアニストたちに迫ったドキュメンタリー映画。

ショパン国際ピアノコンクールとは、ポーランドの首都ワルシャワで、5年に1度開催される大会で、審査は1次から本選まで全4回、21日間にわたって行われる模様を時系列順に追う構成。出場するだけで名誉なだけでなく、入賞すればその後の成功が約束されるコンクールであり2021年のコンクールを題材にした作品。

これは結構ヒリヒリした肌触りの感触であり、一人ひとりの人間模様、生き様、こだわり等々が生々しく画面に滲み出てくるリアリティ。コンクールという名の戦場、闘いでは勝者はたった1人という現実。

とてつもない緊張に負けてしまう者もいれば、その緊張を力に変えて真の実力を発揮できるものだけが生き残れる生存競争。クラシック音楽の世界も本当に大変…。

イタリア出身で眼鏡の天才肌風のアレックスが、「コンクールなんて誰も望んでない。音楽で競うなんて」の言葉が心に残る。個人的には全員優勝🏆で良いと思うが、甲乙がつけられないほど熾烈な競争は本当に切ない…。

ロシア出身の17歳のエヴァはブロンドの長い髪と美貌と煌めく才能を持ってても、コンクールでは優勝できず、ひっそりトイレで泣くシーンは辛過ぎる。
「カメラの前で泣いたら駄目よ!」と注意するコーチの女性も印象的。(この女性コーチがめっちゃ厳しかったね…)

エンドロールで流れる、コンクール出場者たちの幼少時のピアノ発表会の映像も彼らの輝かしい未来を予見される。その街や国でトップレベルだったはずの才能が、ワルシャワでぶつかり合い、そしてそのほとんどが砕け散るのは見てて辛かった。

好きで始めた音楽🎵なのに、決して終わりのない辛い練習、厳しい評価、評判を乗り越えながら突き進む音楽人生、ピアニストという生き方は幸せなのだろうか。

くまねこさん