農民
解説
「ポーランド映画祭2024」(24年11月22~28日/YEBISU GARDEN CINEMA)で上映。
2023年製作/114分/ポーランド・セルビア・リトアニア合作
原題または英題:Chlopi
スタッフ・キャスト
- 監督
- DK・ウェルチマン
- ヒュー・ウェルチマン
- 製作
- ショーン・ボビット
- ヒュー・ウェルチマン
- 原作
- ヴワディスワフ・レイモント
- 脚本
- DK・ウェルチマン
- ヒュー・ウェルチマン
「ポーランド映画祭2024」(24年11月22~28日/YEBISU GARDEN CINEMA)で上映。
2023年製作/114分/ポーランド・セルビア・リトアニア合作
原題または英題:Chlopi
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2024年4月19日 高校の時に『灰とダイヤモンド』〈1958〉を観て以来、アンジェイ・ワイダ監督の大ファン、というより信奉者。
巨匠亡きあともポーランド映画はなるべく観るようにしているので(とか言いながら『フィリップ』〈2022〉は見逃しました)、本作も予備知識なしに観賞したらまさかのアニメ作品。
前にもゴッホを題材にした映画でこんなのあったなと思って調べたら監督が同じだった(『ゴッホ 最期の手紙』〈2015〉監督ヒュー・ウェルチマン、夫人のドロタ・コビエラが今回もアニメを担当)。さもありなん…。
油絵風に彩色された映像はときにはゴッホ風で、ときにミレー風。あるいはセザンヌ、モネ、ブリューゲル…と微妙にタッチを変え、クライマックスの陰惨な場面は初期のムンク作品を彷彿とさせる。
美しいとは思うが、正直言って目が疲れる。
ファンタジーの要素も含んでいるのかと思いながら見続けたがそんな訳でもなく、『ゴッホ 最期の手紙』のように油絵風の演出にした必然性を自分は感じない。
悲劇のヒロインを体当たりで演じたカミラ・ウジェンドフスカも「厚塗り」でない画面で見たいし、ポーランドの美しい民族衣装も彩色どおりなら実写版で観なおしたい。
舞台は19世紀後半のポーランドの寒村。
カトリック信仰が根強い地域性のはずなのに、出てくる人間はそろって背徳者ばかり。ヒロインのヤグナとて例外でなく、アンテクが妻子持ちと知りながら身を委ねる。
因習深く男尊女卑の狭いコミュニティの中で、まるで物々交換のように親子ほども歳の離れた大地主にヤグナは嫁がされるが、相手はアンテクの父親。波乱が起きない訳がない。
森の領有権を巡る争いで父を庇ったアンテクは不可抗力でロシア人を死なせてしまう(ホントはどさくさに紛れて親父を狙撃しようとしてたくせに)。
当時はポーランドの三国分割時代。
正当防衛が認められずに投獄されたアンテクを救おうと奔走するヤグナが複数の男性と接近したばかりに、彼女のよからぬ噂はますます拡がる。
この映画、スマホで調べても詳しいことが現段階ではほとんど分からない。
公式サイトでさえ、監督夫妻と原作者を紹介しているだけ。
アンテク役も彼の父親役も見覚えある気はするけど、はっきり分かるのは村長を演じたベテラン俳優アンジェイ・コノプカ。
ワイダの遺作『残像』〈2016〉での主人公を追い詰める冷酷な公安幹部や、『ゆれる人魚』〈2015〉で人魚に指囓られて悲鳴上げる情けない役やってた人。
懐かしい顔が見られました。お元気そうで何より。
美しい映像とは裏腹に、不幸な人間がとことん虐げられるリアリズムの系譜はワイダのDNAを踏襲しているように感じた。
彼が健在なら、この作品にどんな評価を下すだろうか。
きっとあの人懐っこい笑顔で褒めてくれると思う。
第16回京都ヒストリカ国際映画祭出品作品。
音楽が美しかったのでサントラCD欲しいけど、国内じゃ無理でしょうね。『COLD WAR あの歌、二つの心』〈2018〉の時も手に入らなかったし。