満ち足りた家族のレビュー・感想・評価
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「イタリア版を撮影する」
色々と考えさせられる魅力的なサスペンス
この映画を観て思うのが、人は見かけによらないということ。そして、人は変わってしまうということ。当たり前とも言えることだが、やはり物語として提示されると色々なことを考えてしまう。
冒頭のシーンから人の感情を揺さぶってくる。割り込み運転をした男が注意されても悪態をつく感じも嫌だったが、バットを振り上げて他人の車に殴りかかろうとする男もヤバい。そして金と権力がある人間の親族はかなりの恩恵を受けられるということも嫌な気分になるには十分な要素だ。
クールな現実主義者と熱いヒューマニストの対立という構図に見えた兄弟関係が徐々に変わっていく。また、兄弟それぞれに影響を与える妻も見え方が変わっていくのが面白かった。そしてあの2人の子どもたち。お互いのことを思いやる優しい気持ちは持ち合わせている少年少女なのに。人間は一つの側面だけではできていないということだよな。
後半に4人でテーブルを囲んで食事をとるシーンはとても緊張感があって締まったものになっていた。やはりソル・ギョングとチャン・ドンゴンの存在感は大きかったということ。ただ、ラストは若干中途半端に思えた。あれでは何も解決しないから。それでも、収入も社会的地位も高い兄弟夫婦の家族が綻びを見せて崩れ落ちていくのを観るのはとても苦しくなる。サスペンスとして十分魅力的だった。
どちらにしても最悪しかない家族の決断
何度も映画化されているオランダの作家ヘルマン・コッホの小説「冷たい晩餐」を韓国の名匠ホ・ジノ監督が韓国の社会問題も加味し改めて映画化した。
境遇の異なる兄と弟の2組の家族の子供たちが侵した罪をめぐり、2組の夫婦が倫理観で対立するサスペンス。
何度も映画化されているだけあり、対立軸が分かりやすくエンタメ的な展開も映画らしい映画だ。
兄のジェワン(ソル・ギョング)は権力になびく利益優先の弁護士として富を得ている。一方弟のジェギュ(チャン・ドンゴン)は正義感の強い小児科医で認知症の母親の介護もしている。
2人の兄弟は妻を伴い月に一度高級レストランで会食をすると決めている。
ジェワンの二人目の妻ジス(クローディア・キム)は若くて美しく子供が生まれたばかり。ジェギュの妻ヨンギョン(キム・ヒエ)は義母の介護と学校で孤立する10代の息子の事で疲れている。
境遇も倫理観も違う夫婦の対立構図がわかりやすく面白い。
ある日、いとこ同士で仲のいい兄弟夫婦の子供たちが、重大事件に関わった疑惑が浮上する。
事態を収拾するための話し合いの過程で出てくるそれぞれの家庭の問題や伏せていた不満が噴出し兄弟も夫婦も険悪になっていく。
答えは一つしかないはずなのだが、自分の保身や子供たちの将来のことで家族の対立は深まるばかり。
子供たちの善悪判断の希薄さや過保護すぎる親など、韓国の学歴社会の歪みをホ監督は今回の再映画化の主題としたようだ。
ただ、エンタメ映画とはいえ罪に対して曖昧なまま結末を迎えるため星は3.5とした。
優しそうに見えて怖い人
面白いが、しかし……
どんな人間にもある二面性がよく表現できている。特に金目当てで後妻に収まったような若妻の使い方がうまい。彼女が一番実は人間味に溢れてるというのはよかった。
また弁護士の兄の変化も展開が巧妙で納得できる。あんな映像見せられたらそうなるでしょと。
出てくる子供がみなサイコ的なのは笑ってしまった。いや違うか。大なり小なり子供なんてあんなものかも。とりあえず自己弁護するよな、全子供が。
問題は弟の医者の変化がちょっと不自然に感じること。彼への追い込み方が足りない。だからあのラスト、ちょっと無理があると思う。そこが減点ポイント。
※ その後原作を読んでみた。これは原作のほうが圧倒的に面白い。正直改悪されてる。特に「弟」を原作では「信頼できない語り手」として使ってるのにそこをばっさりなくしたのは大きな失敗だ。
この親にして…
登場人物の先入観が徐々に崩されていく過程がお見事
冒頭のイカれた金持ちのボンボンが引き起こす、衝動の末の殺人である「事故」、
この「事故」に関わる人物の印象が新たな事実が出てきてコロコロ変わる。
ここからすでに、この映画の仕掛けが示されている。
ドライブレコーダーに殺人(故意または未必の故意)を示唆する明確な記録が残っていながら小さな穴を見つけて顧客の大物のバカ三男を軽い刑に導こうと画策、だが極力大金積んでの示談推し、で進める敏腕弁護士の兄ジェワン。
彼は道徳はさておき物質的な利益が優先、年下のトロフィーワイフ(2人目)を持ち、10代の今風だが良い子の先妻との娘らと豪華なマンションに暮らしている、という敵役のステレオタイプ。
対して小児科医の弟ジェギュは、良心的で熱血の小児科医。年上の妻ユンギョンと10代の息子とそこそこの住まいに暮らし、痴呆の母の介護にも献身的に尽くす、こちらも正義派のステレオタイプ。
まず人物感に強い先入観を植え付けらるが、話が進むにつれ、それぞれの人物像に違和感が出てくる。
ジェギュはそもそも、良い人ぶりがなんだか嘘くさい。チャン・ドンゴンの暑苦しいくらいの濃い二枚目のルックスからも、綺麗事しか言わない自分大好き人間のような空気を感じる。それが決定的に露見するのが、兄弟と妻たちが囲む、月に一度の高級店の個室での食事会。多分兄の奢り。
痴呆の母を高級施設に入れる提案をする兄。費用は自分が多く出すつもりでもある。
世話を丸投げされているユンギョンを気遣っての提案だが、ジェギュは親孝行したいからと拒否する。ユンギョンは提案を受け入れたくてうずうずしているが強く表明できない。自分が面倒見ると言うが実際妻に丸投げでまるで他人事、「親孝行な自分」でいることが大事なのがジェギュ。嘘くさい印象は気の所為ではなかったと知る。
一方兄は、母がユンギョンにお金を取られたと言っている、と聞いても、「ほら、いくら尽くしてもユンギョンさんは報われないじゃないか」と理解が深い。
この食事会以降、人物全員に対する先入観が覆されていく作りなのだろうと確信して見ていくようになる。
娘、息子の悪事が明らかになる辺りでは、あきらかに各人物の「違和感」の成分のほうが多くなり、決定的になるのが、やはり兄弟夫婦4人で囲む、同じ場所での食事会のテーブル。
あのラストは食事会の時点で予想できてしまうが、弟夫婦のあからさまになった人間性が衝撃的。
人物全員の、当初の印象とまるで間逆な実際の人物像が徐々に明らかになる脚本が綿密で上手い。無駄なくテンポよく、最後まで集中力が途切れず一気に見られた。
単純に善悪に分けられないのが人間で、悪人寄りの人たちの言い分にもご尤もなところはあって、ユンギョンに「いつも金で無罪にするくせに、何故自分たちの子供には罪を償わせるのか」と罵られたらその通りで、ジェワンは反論できないですね。
娘・息子の真実が明らかになる設定が上手い。ベビーモニターとは。
全部聞いたところで子どもたちの本性にぞっとする。
特に娘はケンブリッジ大に現役合格するほどの頭脳を持っている分狡猾で恐ろしい。
サイコパスではないか。
これを知ってしまって、親として怪物になる前に矯正したいと思うか、我が子可愛さ、というか自分可愛さから隠蔽しようと思うか。
弟夫婦のどうしようもなさは、最悪の手段に出たところでも分かる。
誰にもいいことがない。
事故と言い張っても、兄の妻ジスはすべてを暴露するだろうし、さらに父親がこんな事件を起こしたとあれば、世間の目も経済的にもどん底に堕ち、庇いまくった息子の将来もあったものではない。
後先考えずに激情に走るラストは、原作にもあるのだろうか。
私にはとても韓国的なものに思えました。
ソル・ギョングとチャン・ドンゴンが、ミスリードする気満々のキャスティング。
兄ジェワン、頭が切れ器が大きく懐が深い。頼りがいがあって、普通に良い男ではないですか。
冒頭の事故の被害者に極力示談を推すのも、裁判より示談にして大金ぶんどる方が彼らの利益になるからだろう。
確かに金大好きで自慢げで嫌味、趣味がハンティングで殺生楽しいのか?なところはあるが、完璧な人間はいません。
痴呆の母が、「面倒見ている」弟ではなく兄のほうが好きなのは、兄弟の人間性を見抜いていたからでは。
実は思慮深く人情も常識も(そして美貌も!)あるジスは金目当てというより、ジェワンの人物に惹かれて結婚したんだろうと思う。
映画のタイトルは、邦題の「満ち足りた家族」が皮肉が効いてて、原題の「A Normal Family」より内容に合っていたと思いました。
構成がお見事
チャン ドン ゴーーーン
怖いな。
ちょっと救いのない辛い映画だった。
お金が大好きな長男と善良で正直な次男。
2人の子供たちはが一緒に罪を犯し,その事実に善良だった次男が少しずつ壊れていく。この映画で親たちは自分の子供を必死に救おうとする。自主するのか改心させればそれでいいのか、親である立場の人が見たら全員突きつけられるだろう。自分ならどうするのかと。
体裁のために隠蔽しようとした長男が先に娘の本性に気がついてしまう。自分のやった罪を罪とも思わず平然と正当化し、反省しているふりで親も欺く。息子と分かり合えたと思っていた次男はそんな息子の真の姿と向き合えなかった。強いと思っていた善良な彼はあっという間に変わってしまう。ここがとても怖いと思った。この壊れていく父親をお久しぶりのチャンドンゴンが見事に演じ切った。
相変わらずイケメンだわぁ。
すごい映画だった。
何も満ち足りてない!
韓国の政治がまともになることを祈ります
ユン大統領が非常戒厳を出して以降、韓国は政治空白が続いている。当然国の競争力低下は免れないので大企業や富豪にも打撃が出てくる。この映画に出てくる悪どい弁護士のような奴らもこれからは仕事が減るであろう。
登場人物やストーリー全体は韓ドラでよくある話だが、さすが映画である。冒頭の車による殺人事故(過失致死ではない)からラストの衝撃の結末まで息つく間もなく楽しめた。もし仮に同じような事象が自分に降りかかったらと誰もが思うが、逃げ切れる訳もないし自首させ反省を促し更生させるしか生きる道はない。結局、自分のことを第一に考えると歪んだ結論を選択するのだと思う。選択を間違えたことにより最悪の結果がこの満ち足りた家族に襲いかかったのだ。
クローディア・キムはハリウッド作品にも出る国際女優だが近年の韓ドラ「京城クリーチャー」ではおっとりした日本語を話す京城一帯を仕切る権力者前田由紀子役で物語の重要な役割を担っていた。今回はソル•ギョングの後妻役だったが、この家族の中で結局一番まともな神経を持っていたのが皮肉であった。
衝撃作!とてもいい映画
冒頭のシーンはかなり衝撃的だったが、そんなのはこの後に起る事の序章に過ぎなかった。命の重さについて考えさせられる作品だった。本来、命に重さなんてなく、皆平等なはずなのに、その人の立場や関係性によって【人の命】の価値が違うことをこちらに見せてくる。それは人の場合もあるし、動物や虫、様々な命を提示しこちらに問いかけてくる。とても考えさせられた。とても後味が悪い、いい映画。あとは、善悪も、映画の見せ方によるものだが登場人物たちの印象が最初と最後では全然違う‼️本当にこちらの心をうまく誘導して気持ちの変化をつけさせてきて、最初から最後までずっと楽しかった。この映画を見て何を思えばいいのか、まだ気持ちの整理がついてないが、とにかく面白かった💦
常に倫理観を揺さぶり続けてくる衝撃の109分
金欠なのに1月は映画館で映画を14本も観てしまった。
依存症って怖い…
今年に入って観た映画の中だと
『I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ』
『アプレンティス ドナルド・トランプの創り方』
『敵』
『室町無頼』
『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』
あたりがとても面白かったが、個人的には月末になって観た本作が今のところ2025年ベスト映画。
とにかくぶっ飛ばされた(「車」にではなく「ストーリー」に)。
冒頭、煽り運転から口論になり、お互いが後先考えず感情の赴くままに行動していった結果、凄惨な事態に発展。
人が車にはねられる映像は、撮影技術が発展したおかげで最近の映画でよく見られるようになったが、本作は長回しワンカットでそれを見せてくるので、よりショッキングな映像に感じた。
映画を最後まで観ると、なぜこの場面から映画が始まっていたのかも納得。
弁護士の兄・ジェワンはこの事件を引き起こした金持ちのバカ息子を弁護することになり、バカ息子を救うために示談を画策。
一方、小児科医の弟・ジェギュは事件に巻き込まれて意識不明の重体となった子供の命を救うために奮闘。
ジェワンが示談を成立させるために次々と繰り出す手法が法律ギリギリの悪質な手口で、「なるほど」と思いつつ、「金持ちはこうやって金で無罪を買えてずるい」とも思った。
子供を救うにはすぐに手術する必要があるが、子供の母親は貧困で治療費が払えず、だけど示談に応じれば大金が手に入る、という構図が胸糞悪かった。
ジェワンとジェギュはこの事件に対して第三者として関わることになるのであくまで「他人事」だったが、話が進むと別の重大な出来事が発生、その結果、同じような状況に対して今度は「自分事」として対峙しなければいけなくなる。
この構造が凄いし面白いところ。
「他人事」だととても冷静に対応していた人たちが、「自分事」になったとたん冷静さを失っていく様子を見て、「これぞ人間」と思った。
自分が信じている考え方は本当に正しいのか?
映画を観ていて、何が正しくて何が間違っているのか、わからなくなってしまった。
倫理観の揺さぶり方が絶妙。
こんな映画体験は初めてかもしれない。
個人的には2015年公開の『ジャッジ 裁かれざる判事』で示された考え方が正しいと思って観ていたが、中盤、それまで感情を表に出さなかった人物が涙を流しながら後悔と反省を口にするのを見て、「もしかして自分の考え方は間違っていたのか?」となり、ところが終盤のスマホで盗聴された音声を聞いて、あまりの衝撃に発狂しかけた。
たぶん自分以外にも倫理観を揺さぶられまくった観客は多いと予想するが、それは映画に出てくる登場人物たちも同じ。
兄・ジェワンと弟・ジェギュ、それぞれが独自の強固な倫理観に基づいて行動しているように見えたが、劇中の出来事によって苦悩し続けることになり、その結果、思いもよらない一面を見せるようになっていくのが面白いし、この映画凄いと思った。
人間が多面的に描かれていると思った。
ジェワンの妻・ジスとジェギュの妻・ヨンギョン、妻二人の方は考え方自体は終始変化していなかったように思うが、二人とも前半は家族の中で一歩引いた立場だったのに対し、後半は意思をはっきりと表明するキャラに様変わり。
「血のつながった息子」と「血のつながっていない娘」という違いで、事件への対応の仕方が二人の母親の間で温度差があるのも考えさせられる。
ジスとヨンギョンは20歳ぐらい歳の差があるため、家族の中での扱われ方にも違いが見られたが、どちらも描かれ方がリアルで、そのため妻側が抱える苦しみに共感してしまう女性は世の中多いのでは?と思った。
この映画の最初と最後に出てくる「2組の夫婦による高級レストランでの個室ディナー」の場面が凄すぎる。
パッと見は同じ場面。
でも中身がまるで違う。
「おれがあいつであいつがおれで」状態。
このアイデアを具現化した監督に感服。
子供を悪く描きすぎなのは気になった。
監督が子供を信用していないのはよく伝わった。
実際にこういう性格の子供は実在するとは思うが、でももう少し「救い」みたいなものがあってもよかったのではないかと思う。
キャストの演技良かったですね。 やはりソル・ギョング、チャン・ドン...
クソみたいな人間関係なのね
お互いの子供が起こした事件で隠蔽するのか自白させるのかで揉め事起きまくる韓国らしいイヤーな話で大好物のジャンルで演技もめちゃくちゃ凄いんですが😋 🪱みたいなグラフ📊の内容で無限に平行線で下がりも上がりもしないからダメとも言えないし最高とも言えないので本当に普通としか言いようが無いです🙁
オチは良かったけどわかりやす過ぎる伏線あったから あー〇〇れるんだれろうなと🚗💨思っていたら案の定アッサリ普通に〇〇れて終わり🔚😂🤣👋
韓国作品て構成が複雑だったりもっと血生臭い作品多いから期待が過剰になり過ぎたせいなのかアレ?ってなってしまいましたね。
劇場にいるおばあちゃん六人くらいがあのラストのシーンで思い切り飛び上がっていて大爆笑するところでしたよ🤫
後味悪め
何の不自由もない満ち足りた家族がどんどん崩壊していく様子は、どこからボタンをかけ間違えたのかと心が痛むシーンが多いが、映画のストーリーとしては面白かった!
ただ最後の後味が悪すぎることと、この先をもう少し描いてから終えて欲しかった。ハッピーエンドにはならないが、せめて悪い結末だとしても、この中途半端な終わり方は本当に後味が悪い。
ストーリーとして盛り上がり、どうなる?自首?隠し通す?いろんな結末を想像し、自首へ方向転換するのかと大詰めのところで殺すという終わり方。
韓国らしいといえばらしいのですが、そこでエンドロールか、、、という残念さ。
結末はご想像にお任せします系が好きな人には良いかもしれないが、ある程度しっかりすっきり終えてくれ系の人にはおすすめできないな。
もやっとしたまま終わる。
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