劇場公開日 2025年1月17日

「エンタメの定型をみごとに再活用したアグレッシブなバカ映画」ディックス!! ザ・ミュージカル 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5エンタメの定型をみごとに再活用したアグレッシブなバカ映画

2025年1月31日
PCから投稿

リンジー・ローハンが子役時代に主演した『ファミリー・ゲーム/双子の天使』、つまりは原作であるケストナーの児童文学「ふたりのロッテ」が下敷きになっていることは、わりと重要だと思う。つまり、生き別れた双子が再会し、別れた両親のよりを戻させようと奮闘するのは、王道ストーリーにパロディだからで、その王道展開にどれだけバカげた下ネタギャグやミュージカルナンバーを盛り込んで、世間の常識をつつきまくって笑い飛ばすかという勝負をかけているのだ。

下ネタ一辺倒かと思いきや、下水道ボーイズなどもっとシュールに突き抜けたネタも多く、不謹慎だがスリリングなアジテーションとしても成立している。もちろん中身は空っぽなんだけど、いや、空っぽだからこそ、ミュージカルや映画としての盛り上げが限りなく純粋に機能していて、エンタメって本来空っぽなものなのかもしれないし、それいいのだ、なんて思ってしまう。中身なんてなくたって映画は感動できるし、笑えるし、楽しめる。映画ってすごい。

いや、でも最後には「すべての愛は気持ち悪い」というみごとな真理を謳い上げてくるのだから、空っぽどころかとてつもないメッセージを投げつけてくる映画なのかもしれない。ほんと油断のならない二人組に大きな拍手を送りたい。自分ひとり分だけかもしれないけども。

村山章