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映画レビュー
第一回日本ファンタジーノベル大賞受賞作
原作は酒見賢一の『後宮小説』
監督は鳥海永一。
テレビのスペシャル番組として制作された。
【ストーリー】
腹英三十四年(西暦一六〇七年)、素乾皇帝腹宗が崩御された——と同時に各地で行われる宮女狩り。
かつての後宮を解体し、見目麗しい者を集めて新たな後宮が作られる。
その中に銀河という少女がいた。
取りたてて眉目秀麗というわけではなかったが、背筋の伸びた素直な心根を持っていた。
齢十四、「三食昼寝付き」の噂を信じて親元を離れた彼女は、地元の宦官・真野の元をたずねる。
宮女たちは後宮に入る前に「女大学」にて高度な教育を受ける。
新たなる皇帝は素乾史上もっとも優れた資質を持つと言われた双槐樹——槐宗。
だが辺境では幻影逹と渾沌と名乗る輩たちが、怪しげな動きを見せていた。
「腹上死であった、と記載されている」
というフックの効いた冒頭文から、素乾帝国の成り立ち、宮女狩りの歴史やその方法から教育法、後宮の慣わしまで「素乾書」「乾史」「素乾通鑑」といった古文書や、西洋の研究者の残した書物を紐解いてその絢爛な文化を羅列してくれます。
まあ全部ウソなんですけどね(笑)
思春期に読んでしまった愚かな自分、完全に信じちゃいました(笑)半年ぐらい(笑)うけるー(笑)
(笑)じゃないわよ!返してよ!アタイの半年返してよ!
と作者の胸を両手でポカポカ叩きながら抗議したいぐらい悔しかったです。
ただ自分が世界史も知らないおバカちゃんってだけなんですが、とりあえずこの本に出会って以来ずっと酒見賢一ファンをつづけてます。
さて、アニメはジブリ風のデザインで作られていますが、製作はスタジオぴえろ。
作画監督に近藤勝也を迎えてジブリスタッフを使えたことが、画風の理由です。
近藤勝也は『魔女の宅急便』や『ポニョ』などの作画監督を務めた、ジブリのトップアニメーターの一人。
その後押井守を招んで同作者の『墨攻』を企画した際も、作画監督には近藤勝也を予定していたそうです。
『墨攻』は残念ながらポシャってしまいましたが、監督の鳥海永一は押井守の師匠格と考えるとますます見たい気持ちが湧いてきます。
さてこの「ファンタジーノベル大賞」なるコンテスト、大賞受賞者には500万円もの賞金が出たことでも話題になりました。
その後も鈴木光司、佐藤亜紀、小野不由美、恩田陸、池上永一、畠中恵、森見登美彦、仁木英之などなど錚々たる面子を世に送り出しております。
第二回優秀賞に輝いた鈴木光司の『楽園』も、同スタジオでアニメ化してます。
おい、小野不由美はティーンズハートでデビューしてただろ!というツッコミをくれた貴方はありがとうございます。
この賞で刊行された『魔性の子』が、後の『十二国記』シリーズ第一作目なので、どうしても列挙したかったのです。
冒頭文ではないですが、作者はこの秋(2023年11月)に亡くなられてしまいました。
悼む気持ちと共に、彼の残した作品群にもう一度光が当たることを、願ってやみません。
そこにはただ草原が広がっているだけ
架空の中華風の国(素乾国:そかんこく)。
戦乱に巻き込まれた、
国の長と奥さんを中心とした切ないお話。
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前皇帝が崩御し、国は上を下をの大騒ぎ。
というのも、政に口を挟む前正妃。
彼女を女狐と称し、
よく思わない者が多く、
皇帝は彼女の手によって葬られたのではないか
と黒い噂が流れるほど。(理由は
自分の息子を皇帝の座に置きたいがため。)
陰謀渦巻く素乾国。そこにいる宦官達は、
私欲のため新しい妻候補生を集めんとし、
宮女狩りに出た。(宮女狩りとは、宦官達が
自分の故郷へ赴き、妻候補生となる女性を
見つけて連れてくること。もし連れてきた
妻候補生が正妃に選ばれたら大出世。)
そんなことも知らず、3食昼寝付きと
学問ができるとの言葉に喜んで宮女に
応募する主人公。
地頭がよくお喋りで好奇心旺盛の主人公、
銀河。(後の正妃)
眉目秀麗で身分を隠さざるを得なかった皇太子、
コリューン。
この2人はのちに夫婦になりますが、
運命は残酷に2人を引き裂きます。
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素乾国は滅び、最後、瓦礫と化した王宮は
やがて朽ち果て、
そこにはただ広大な草原が広がっているだけ。
そんな光景でこの映画は終わります。
タイトルの意味がわかる気がしました。
エンディングの曲も素晴らしいです。
原作を知らないのですが、
このアニメも良作だと思います。
悲しい話ですが、美しい映像と、
民族的であったり面白かったりの音楽も
素晴らしいです。
宜しければ、ぜひ。