雪解けのあとのレビュー・感想・評価
全7件を表示
「誠実な思い」に性差は関係ない。
「白いものについて書こうと決めた。春。その時私が最初にやったのは、目録を作ることだった。
おくるみ いぶき しお ゆき こおり つき こめ なみ はくもくれん しろいとり しろくわらう はくし しろいいぬ はくひつ 寿衣
単語を一つ書きとめるたび、不思議に胸がさわいだ。この本を必ず完成させたい。これを書く時間の中で、何かを変えることができそうだと思った。傷口に塗る白い軟膏と、そこにかぶせる白いガーゼのようなものが私には必要だったのだと。」(ハン・ガン「すべての白いものたちの」より(斎藤真理子訳))
高校時代からの親友で、憧れの存在でもあったチュンの死。チュンとユエは40日を超す想像しがたい洞窟でのビバークで、驚くべきことに、一日ビスケット1個の半分でしのぎましたが、その中でチュンはイシャンへの手紙や人生に対する賛歌を数百ページにわたって書き記していたのです。(以下ネタバレあり)
映画の中で、チュンは女性の身体に生まれながら、心は男性であるトランスジェンダーであったことが示唆されています。チュンとユエとイシャンの三人の関係は、いわば恋愛感情と友情が混在する少し変わった、でも強い絆で結ばれた共同体のようなものだったのでしょう。そして死への複雑な気持ちと戦いながら、手記を「必ず完成させたい」というチュンの強い気持ちには、冒頭の小説の主人公における「傷口に塗る白い軟膏と、そこにかぶせる白い軟膏」と同じ効能があったのかもしれません。そしてそれはまた映画作品として世に送り出したいというイオシャンの強い気持ちとも重なっています。彼らが憧れたヒマラヤの山嶺は、全てを癒やすような、厳しくも美しい白銀に覆われていたのも偶然ではないように思いました。
「もしわたしとユエが死んでしまっても、あまり悲しまないで。あなたがすべきことは、人を愛すること。だから愛して。約束してくれる?」チュンのイシャンへの最後の一言が、胸を打ちます。ありがとう。また大切な1本に出会えました。(三人の好きだった「グランブルー」私も大好きです(^_^))
気持ちが先行してしまったかな
 台湾の若い女性監督によるドキュメンタリーです。
 自分も同行する筈だったが体調不良のために諦めたヒマラヤ山行で遭難した女性の友人の足跡を追うお話です。雪に閉じ込められた友人は47日間のビバーグの後に発見されたものの、その3日前に亡くなっていました。
 監督は、友人が山中で書いた膨大なメモと共にその行程を追うのですが、彼女の文章をもっとしっかり紹介しながらの物語にして欲しかったな。さもなければ、死を間近にした友人の声と、その足跡を辿る監督の足音が上手く共鳴出来ないのではないでしょうか。
 また、友人の性自認の問題をサラッと流したのは監督の意図なのでしょうが、そこを深く描いて欲しかったと感じるのは、僕がLGBT問題を特別視してしまっているからなのかな。
 更に、何を撮ろうかやや迷うかのような手持ちカメラの不安定さも少し気になりました。
チュンはビバークの厳しさと闘い、自分は睡魔と闘った
よき旅路だったと納得できました
(初回鑑賞 2024-11-27, 丸の内TOEI開催 "東京フィルメックス 2024" 期間中の鑑賞)
台湾の若者2名が、旅先ネパールの冬山で遭難し、一方が死亡した、痛ましい事故。
故人の親友が、足跡を辿る旅に出て、出来事を振り返り、現地の方々に尋ね、気づきを得る過程の記録。
映像の明るさ/暗さのコントラスト、
旅先でのメモ書き記録の克明さ、
足元を移す映像の移り変わり、
映像の美しさ厳しさ…
すごい見ごたえでした。
(二度目鑑賞 2025-09-12, OttO 埼玉 大宮駅の近所の映画館にて)
旅路の確認をしようと, 同行できなかった親友(映画監督ご本人)が現地に赴き.
遭難中に書き綴られた手紙を頼りに, 現地の人々の助けも借りて.
現地 ネパールで合流する前に, インドで具合を悪くして断念したとか.
足跡を辿ることで, 不在を埋めようとする意志が読み取れました.
それにしても驚いたこと
故人が綴った、数百枚にもなるという大量の手紙では
遭難にあっても 現地の諸々への思いを、ポジティブに綴っているように読めました.
何でも美味しい、景色が素晴らしい、人々が親切、など。
(画面に何度も大写しになったものの読解に挑戦していました. 台湾語で字幕もなく,わずかしか読めず. 誤読もしてる恐れはあるのですが).
最後を過ごしたという、水が流れ続ける沢にて
監督ご本人は、ここには居られないと締めくくっていましたが
山で命を落としたとはいえ、亡くなられた友人ご自身にとっては実り多い旅だったのでしょうか。
納得して締めくくっているように読み取れました。
全7件を表示

 
  


