「求道者ゆえの痛みと哀しみ、そして果てのない旅路」MR. JIMMY ミスター・ジミー レッド・ツェッペリンに全てを捧げた男 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
求道者ゆえの痛みと哀しみ、そして果てのない旅路
ジミー桜井さんという人が、とにかく自分の道を突き進む。それも自分オリジナルの道ではなく、レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジそのひとのように演奏したいという一念で、修行僧のように自らをジミー・ペイジに近づけていくという、ジャンルが違えば人間国宝にでもなりそうなドキュメンタリーである。
この人すげえな、ムチャクチャだな、笑っちゃうけど憧れるな、でも決してなりたいわけじゃないな、ジミー・ペイジにもジミー桜井さんにも……なんて勝手なことを思いながら楽しく観ていたのだが、ふと、ジミーさんが追求している道は、賽の河原の石積みのようなものではないかという気がしてくる。
だって、還暦を越えてまだまだ学ぶことばかりですと言っているジミーさんが究極的に求めてるのは、自分の同じくらいの情熱と技量と知識を持った、もうひとりのロバート・プラントでありジョン・ボーナムでありジョン・ポール・ジョーンズと一緒にレッド・ツェッペリン以上にレッド・ツェッペリンなバンドを組むことで、いくらなんでもそんなフォーカードは揃わないよ、と思ってしまう。
しかし果てのない旅路だからこそ、ジミーさんの孤高の生き様が輝くとも言える。実際にお会いしたジミーさんはとても陽気でポジティブで楽しそうな人だったけれど、この映画には求道者の痛みや哀しみが捉えられていて、いい映画が生まれたものだとジミーさんだけでなく監督のことも讃えたい。
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