「「弱さ」が全てを狂わすという事」ブラック・ショーマン HGPomeraさんの映画レビュー(感想・評価)
「弱さ」が全てを狂わすという事
本作、面白かったです。
個人的には「新参者」に似た作風だなぁと冒頭から感じ、その通りの展開と雰囲気だったと思いました。
そもそも初手から、不明な「他殺」である事の発表と、神尾武史と神尾真世の「なぜ殺されなければならなかったのか真実を知りたい」という、物語の「根幹」の設定が早々に確定されたので、私の中では「あ、新参者の展開だ!」と。
※サントラもどことなく雰囲気が似ていた。
そして周りには(神尾武史・真世含め)怪しい隠し事を匂わせる登場人物ばかりだったので、私の中では完全に「新参者」(特に麒麟の翼のイメージ)感覚で「犯人探し」や「秘め事」の考察を楽しむ作品となりました。
全体的には面白さを感じましたが、物足りない部分、不明な部分も在りました。
それが以下、
①神尾武史が「サムライ・ゼン」時代の話をNG扱いにした理由。
②神尾武史の「守銭奴」意識が強い理由と、どうやってBARを存続経営できているのか。
③神尾真世が神尾武史と一緒に真実を追う事を誓った時の、あのスマホの映像の意味と関連性。真世は英一に虐待されてた?でもそうなると英一の性格像と関連するその思考に筋が通らなくなる気が……。謎。
④神尾真世の婚約者、中条健太の「本性(本音)」と「その真偽」。
……以上が最後まで分からなく、「モヤモヤ」した気持ちを残しました。
もしかしたら、原作ではハッキリしている「ふくみ」なのかもしれませんが、映画のみを鑑賞をした限りではハッキリしなかった気がします。※見逃してたら不覚ですが。
それ以外は推理ドラマよろしく、終始考察を楽しむ展開が随所にちりばめられ、最後の真実の公表までとても楽しく見入ることが出来ました。
それに、それぞれの関係者の「裏の真実」も、そんなに複雑にしておらず受け入れやすい種明かしでした。
神尾武史の、「ハッタリフェイク画像」も、最初はやや強引な手法に感じましたが、「マジシャン」という職業柄を上手く使いこなした手法だったかなと思えました。
種「事実」(目なんかつぶっていない事)を知ってる人物なら、おもわず声を上げてしまう事が理解できる。
あれで、自白と完落ちに上手く誘導する形になりましたしね。
そして一番目立っていなかった人物が犯人であり、またその動機も大きな憎悪では無く、弱さゆえの勘違いと妄想に捕らわれた、ある意味最低最悪の殺人だった事は、じわじわと怒りを感じることができて、あのラストは良く出来ていると思いました。
神尾武史の釘宮に対する最後の言葉「生きて苦しみ続けろ」は、まさに象徴的。
釘宮と津久見の友情は美しいし尊いが、釘宮の「犯行」を決行させた「意識」があまりにも「無責任」過ぎたのが、じわじわと怒りの沸点に辿り着きました。
神尾英一は、作文の公表を控えることを約束したのに、釘宮は現代の情報技術の「拡散力」と「破壊力」だけを意識し、「証拠の消去」しか方法は無いと決断したその余りに自己中すぎる理論。
恩師を信用する事も出来ず、事情を説明して懇願する事も出来ず、ただただ「消去」することしか考えなかった。
そして絞殺をも実行してしまった。
映画としては良い意味で、心から許せない犯人に昇華しました。
同時に、現代の「決断能力」のない時代を憂いているメッセージ性が有るようにも思えました。
重要な決断、声を出すべき時に実行できない人が多い世の中で、それがこのドラマでは最低最悪な「殺人行為」に辿り着いてしまった。
そんなに重大な悪意をもって実行したわけでは無かった(盗作の事)。
が、なんと惨い無自覚の非道の連鎖だろう。
①「魔がさした」のかもしれないが、津久見がそのノートを託したという事は、その「物語」を実現してほしかったはず。
その想いに気が付けなかった自己中。
②あれよあれよと「栄華」に溺れ、「その物語」を使う事、使った事を、一言でも津久見の母に伝えなかった自己中。
③神尾英一を信じることが出来ないばかりか、「放火」などと安直な蛮行に辿り着いた最悪の思考の自己中。
しかも自分の手で恩師を絞殺。
以上、救いようがない。
「弱い思考」と「強い意識の経験不足」が故の、最悪な自己中の「アンパイ」解決策しか考えなかった。
弱いがゆえに酷い行いを無神経に行ってしまう「代表的パターン」と言っても過言ではないと思う。
弱くても良いのに。
大事な事、大事な局面でしっかりと「思いやり」をもって行動する一欠けらの「勇気」だけ持ってれば、全て上手くいったのに。
そんな事を考えさせられた事件物語でした。
「新参者」とは違い涙は流れませんでしたが、全体的な構成としては面白かったと言いたい作品です。
※ちなみに、大変失礼ながら最後の最後まで、神尾真世が、有村架純さんだとは気が付きませんでした……!
もうちょっとふっくらしたとした愛らしさが有ったようなイメージが強かったので……すっかり綺麗になられて。
そんな意識もあって、若い綺麗な俳優さんかと思っていたので、伊藤淳史さんと婚約者同士の役回りって、一回り以上年の差あるんじゃ?などと、見てしまっていました(笑)。
年下彼女役には変わりはないけど10歳も離れてないから、そんなに不自然ではなかったのねと、思いました。
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