劇場公開日 2025年9月12日

「原作と映画が補完しあっている。上手い。」ブラック・ショーマン あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 原作と映画が補完しあっている。上手い。

2025年9月14日
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鑑賞方法:映画館

原作は2020年に刊行。コロナ禍が収まりかけた地方都市での物語。タイムロスがない。原作者東野圭吾の筆の速さは驚くべきもの。ただそれだけにその筆致には少し荒っぽいところがあって主人公の二人以外の登場人物は多分に類型的、「名もなき町の殺人」というサブタイトルから読み取れるように、平凡な日常の隙間から覗く悪意とか衝動のようなものを描きたかったのだろうが、「幻脳ラビリンス」といった大層な仕掛けを持ち込んでしまったため自己撞着を起こし登場人物が役柄にあった想定内の動きしかしないので、ミステリーとしてはあまり面白くはない。
ただ主人公の二人については完全に当て書きでしょうね。5年くらい先に福山、有村で映画化することを最初から想定して原作を書いているようにみえる。実は原作者が多分、意図的に書き残している要素がある。それは殺人の被害者である英一と弟の武史、そして英一と娘の真世の、心の結びつきというかお互いへの思いである。この部分は原作では奇妙に空白になっていてあえて書き込まれていないように思える。東野圭吾の巧妙なところである。
映画では福山、有村がそこは抜かりなく情感たっぷり演じており、原作の空白をみごとに埋めている。例えばラストシーンで武史の店で、真世が幻の英一と話をするところは原作にはない。
また原作の問題点、登場人物が多くその関係が入り組んでいるところについては映画で極力、整理をしてくれている。例えば生田絵梨花演じる桃子が、映画では武史と真世が宿泊するまるみや旅館の女将をしている設定となっている。実に鮮やかな整理であると思う。
一方で、映画のクライマックスで武史が中学校の教室で種明かしをする部分は、殺人の犯人が明かされる前に、二つほどの真世の同級生たちの秘密が暴かれる。映画しか観ていないと、これは何のことだかよく分からないのではないか。でもこの二つは英一の人となりを理解するために、そしてこの町の事情を知るためには必要なのである。
この「ブラックショーマン」という創作世界は小説と映画の二輪で表現されている。東野圭吾だからこその構造である。だから私は映画を観た人には原作を読むことを勧めるし、原作をすでに読んでいる人には映画を観ることを勧める。多分、その方が、単純に2倍ではなく10倍くらい、世界観を楽しめるから。
フジのメディアミックス戦略にまんまと乗せられているなとは思うけどね。

あんちゃん
ひでちゃぴんさんのコメント
2025年9月14日

仲村トオルは素晴らしい演技だったと思います。

ひでちゃぴん
NOBUさんのコメント
2025年9月14日

今晩は。
 「朽ちないサクラ」は小牧市がメインでしたかね。
 ここ数年、愛知県、岐阜県が舞台の作品が増えた気がします。交通網の発達カナとも思います。ではでは。

NOBU
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