「犯人探しは最後まで楽しめるが、犯行の動機に今一つ説得力が感じられない」ブラック・ショーマン tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
犯人探しは最後まで楽しめるが、犯行の動機に今一つ説得力が感じられない
福山雅治が演じているせいか、主人公のキャラクターが、「ガリレオ」の湯川教授とダブっていると感じてしまうのは御愛嬌か?
それよりも、新鮮なのは、福山雅治と、有村架純が演じるそのバディが、親族関係にあるということで、叔父として、姪が事件に深入りしないように気遣ったり、彼女と婚約者との仲を心配したりと、他人同士の間柄にはないような一歩踏み込んだ距離感が面白い。
犯人探しのミステリーとしては、仲村トオルが演じる被害者が、東京で誰と会い、そのことを知っていたのは誰なのかといった謎や、金銭トラブルとか不倫とかといった怪しげなエピソードが散りばめられているせいで、最後まで「真犯人は誰なのか?」という推理を楽しむことができた。後から思えば、途中で漫画の作風が変わっていたり、中学時代に亡くなった同級生に対する追悼のスピーチが事件の鍵だったり、中華料理店での同窓生の集まりで有村架純が2人きりで話をしていたりと、数々のヒントが示されていたのだが、前述のような「ミスリード」を駆使して、犯人について確信が持てないようにしていたのは良かったと思う。
ただし、最後まで犯人が分からなかったのは、ミスリードのためだけではなく、犯行の動機が、有村架純も「そんなことのために?」と憤ったような、些細なことだったからでもある。
そもそも、漫画を創作するに当たって、原作と作画の担当者が別々なのはよくあることなのに、犯人が、どうして、そうまでして原作者を隠蔽しようとしたのかが納得できない。ましてや、原作者は既に死亡しているし、犯人と原作者が親友同士であったということを踏まえれば、今から真実を公表したとしても、仲村トオルが考えたように、「美しい友情の物語」として世間に受け入れられたとしか思えない。
それだけ、犯人が、正常な判断能力を失っていたということなのかもしれないが、それでも、やはり、事件の動機は、人間の「業」とか「宿命」とかを感じさせるものであって欲しかったと思えるのである。
それから、被害者の家に犯人の卒業文集だけが無いことを発見したり、中学時代に亡くなった同級生のパソコンの中身を確認したりすることは、遅かれ早かれ警察もできていたはずで、事件について、「警察では無理だが、マジシャンだからこそ解決できた」と思えなかったところも、少し残念だった。
いずれにしても、ラスベガスで福山雅治に何があったのかとか、有村架純の婚約者に関する告発メールの中身は本当なのかといった謎は残されたままなので、これらへの解答も含めて、次回作に期待しようと思う。
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