「不合理な感情」九龍ジェネリックロマンス おかずはるさめさんの映画レビュー(感想・評価)
不合理な感情
恋する者が、傍から見て滑稽に見えるのはよくある話。
本人すら恋に落ちた理由を合理的に説明できない場合も多いのだから、周囲の人も不可解に思うのは当然。
70年代、「UFOロボグレンダイザー」などの日本アニメがフランスで大ヒットした。
その後日本のアニメにどっぷり浸かった子供たちは、日本を警戒する大人たちとは違って、アニメの世界と重なる日本の風俗やサブカルチャーになつかしさを感じるようになる。
これも不合理な感情だ
たしかに「なつかしい」は「恋」に似ている。
この作品の主役は香港だ。
近時の「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」も含めて、子どもの頃から今まで香港(香港風を含む)を舞台にした映像作品に親しんだわたしたちは、香港に恋をしてきた。
「恋する香港」の後景にある二人の男女が繰り広げるラブコメに一喜一憂することを目的としたのが、本作「九龍ジェネリックロマンス」である。
映画と同じく終わらない恋は無い。
ジェネテラの崩壊がなくとも、いずれ工藤は鯨井令子の愛によって「終わらない夏」を終わらせる決意をしたと思う。
鯨井Bの死について、工藤に責任があるかは明らかではない。
であっても、責任の有無にかかわらず未来ある者は別の場所で人生を進める義務を負うのだから、この作品の結末は支持されるべきように思う。
それでも、終盤の蛇沼みゆきの悲痛な叫びや終わるジェネリック九龍を目の当たりにしての周の諦観を見た私は、工藤と鯨井令子たちの未来に思い入れることができないのである。
遺される側に対してのみ感情移入ができたということ。
映画館からの帰り、山手線の車内で「サマータイムゴースト」を聴き終えた時点で、わたしの夏は終わった。
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