「あなたは見て見ぬふりできますか。」見える子ちゃん レントさんの映画レビュー(感想・評価)
あなたは見て見ぬふりできますか。
否応にも霊の姿が見えてしまう見える子ちゃん、その名も三重琉子と言います。違うかな。そんな彼女は親友のこれまた霊に憑かれやすい憑かれ子ちゃんのために奔走します。
突然見えるようになった霊に対してどうふるまえばいいのか、ネットの不確かな情報をもとに彼女は無視をするのが一番だと教わります。無視していれば絡まれることもない、がん飛ばしただろうとイチャモンつけられることもありません。彼女は霊を無視し続けました。
本作に込められたメッセージとはなんでしょうか。現代社会に生きる我々はついつい目の前のことから目を逸らしてしまいがちです。思わず見て見ぬふりをしてしまう。目の前の懸案事項を日々の忙しさを理由に先送りにして何事もないかのように過ごしてしまう。そして気がつけば取り返しのつかないところまで来てしまうような。本作は現代人がやりがちな見て見ぬふりという行為に対して警鐘を鳴らした作品だと言えるのかもしれません。
そんなわけないか。
いわゆる本作はポストシックスセンスと言える作品。あの名作をコメディー映画としてリメイクしたような。もうオチはまんまシックスセンス。あの名作をご覧になってない方が本作を見たなら、なんてよくできた作品だろうと感動するでしょう。こんな安っぽい映像でJKの可愛らしさしか売りの無いような作品かと思われた作品がまさかのどんでん返し。しかし、シックスセンスを知る観客には逆にマイナス効果。ただの焼き直しだと思われ評価は下がることでしょう。でもそのあとの二段落ちが見事でした。あれがなければ評価はもう少し低かったけど見事に騙されました。これはただのパクリではなくオマージュと言えるのではないでしょうか。
思えば観客に違和感を抱かせながらその違和感を回収するオチが見事。なぜ主人公の彼女が両親がいる家庭で食事を日々作っているのか。また教室は女子ばかりなのにあの会長と言われる男子と、ちょこちょこ出てくる男子生徒の姿。ご丁寧に女子クラス、男子クラスなる言葉が会長から発せられ、そういう学校なのかと思わされながらも違和感はつのる。そんな二つの違和感を見事にオチで解消。これは大したもんだと言いたい。
確かにもう少し遊び心があってもよかったとは思う。最初、霊と人間の区別がつかない状態をもう少し続けた方が面白くできたのではないか。周りには見えないまとわりつく霊を追い払おうとする主人公の姿は周りから見たら奇異なものに映る。それを笑いにつなげられたはず。例えば妊娠してる教師に近づく霊にあっち行け、しっしっ、みたいな感じで見せたりしたら笑えるシーンも増やせたのではないか。学園祭でお化け屋敷は霊が集結するということでその場面で皆がダンスを練習するところに一緒に踊る霊の姿を入れるとか、いろいろなアイディアが入れられそうだっただけに少々残念な気もする。
霊の描写がやたらと古臭い昭和のにおいを感じさせるものなのはどうなんだろうと思っていたが、それはオチを悟らせないようにするためのものでなかなか工夫も効いている。
原作はチラ見した程度だけど、霊の姿はどちらかというと今風のハリウッドホラーに出てくるクリーチャーのような姿。意表を突くその姿にどこまで知らんぷりができるのか、牛乳を口に含んで笑いをこらえるバラエティー番組みたいな遊びもできたかも。
小ぶりながらいい作品だと思う。配信スルーのつもりでいたけど、レビュアーの誰かが拾い物だと書いていたので鑑賞。拾い物という言葉には弱い。それこそが映画鑑賞の醍醐味。期待しないで見た映画がことのほか面白かったという体験は映画好きにはたまらない。だから本作をあえておっさんの私が恥ずかしさをこらえて鑑賞した。結果正解だった。
JKたちが学園祭の準備を楽しそうに行う姿は遠い昔の青春の記憶を思い起こさせた。意外な幸福感も味わえた。
霊を無視することで霊にこの世界はあなたのいるところではないと悟らせ成仏させる。ラストで父の霊とあの交通事故死した小学生の霊が手をつないで主人公のもとを去る映像を入れたなら号泣は必至だったでしょう。
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