「霊がそこに居るのは転生を待つまでの暇つぶしで、彼らに存在価値を与えてしまうのが生きた人間の業なのだと思う」見える子ちゃん Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
霊がそこに居るのは転生を待つまでの暇つぶしで、彼らに存在価値を与えてしまうのが生きた人間の業なのだと思う
2026.6.9 イオンシネマ久御山
2025年の日本映画(98分、G)
原作は泉朝樹の同名漫画
ある日突然、霊が見えるようになってしまった女子高生を描いた青春ホラーコメディ
監督&脚本は中村義洋
物語の舞台は、群馬県桐生市の茶臼山
そこにある高校に通う四谷みこ(原菜乃華、幼少期:奈良澪)は、ある日から突然、霊のようなものが見えるようになっていた
街角に少年の霊(木下瑛太)を見てしまったみこは、彼に気づかれてしまって、追いかけられてしまう
いつしか家に取り憑くようになっていたが、彼は何をするでもなく、ぼうっと突っ立っているだけだった
ある日のこと、親友でクラス委員のハナ(久間田琳加)の肩に「青い手」のようなものを見つけてしまう
ハナはいつも以上に旺盛に食事をし出していて、さらに強かったくじ運にも翳りが見えてきた
そんな折、除霊に興味を持ったみこは、オカルトチャンネルの言葉を信じて、ハナを地元の神社に連れていくことになった
一緒に鳥居をくぐると、霊はハナの体から離れて、鳥居のところで足止めをされてしまっていた
その後、みこは学校のいろんなところで霊を見るようになり、その様子に気づいた写真部のユリア(なえなの)が近づいてきた
彼女は「霊が見える」と公言している生徒で、さらに生徒会長の権藤(山下幸輝)までもが絡んでくることになった
権藤は、かつてこの学校は崩落事故が起きて、50人以上の人が死んだと言う
そして、死んでいることを理解していない地縛霊がたくさんいると続けた
文化祭で起こった悲劇で、その日は彼らの命日になっていて、近づくに連れて活発化してくる、と言うのである
映画は、文化祭を中心に描き、新しい担任の遠野先生(京本大我)に憑いている霊との戦いが描かれていく
オカルトホラーにありがちな謎の能力者というのは登場せず、ユリアがそれっぽいことをしても効果がない
最終的には「霊を無視する」というこれまでにはなかったような解決策が提示され、それを実行に移す様子が描かれている
そしてさらに、物語は2段階のサプライズを用意している
一つ目はパンフレットや予告編をじっくり見るとわかるもので、二つ目に関しては映像の隅々まで見ていないとわからなかったりする
全ての伏線がキレイに収まる流れになりつつ、霊に気づいていながらも無視することで日常を戦ってきたみこの母・透子(高岡早紀)の選択も良いと思う
彼らが無視をしても霊はそこに居続けるのだが、元々の邪念のようなものが消えていくのは「浄化」と言えるのかもしれない
はっきり見える霊には「存在価値と行動原理」があるのだが、それがない霊はうっすらとして見えている
遠野の霊に関しては、母・典子(吉井怜)の怨念がありつつも、遠野自身がそれを受け入れている部分があったのだが、それがみことの関わりの中で「ダメだ」と気づくのも良い
そこから小鳥の話を合わせる遠野は、まるで自分に言い聞かせるように「巣立ち」の話をするのだが、これは彼自身も母親離れをしていなかったことの表れであり、彼自身のその性質が母親を悪霊化させている部分があったと気づいたのだろう
霊が具現化するのは、見える人が存在理由を与えるからであり、それをしないさせない方法というのが「無視」という行動になる
だが、居てはダメと言うものではなく、去りたくなるまでいても良いよ、と言うニュアンスはありだと思う
その世界が心地よくても、いずれは転生のために成仏する時が来る
それまでは、名残惜しさを否定することなく、そこに居続けても良いのではないか、と感じた
いずれにせよ、一風変わったオカルトホラーで、うまく青春映画と組み合わせたと思う
さらにありがちな展開ではなく、納得感のある解決方法になっているところもあって、オカルトに論理が入っているところは面白いなあと思った
自分の心象風景が見せるものとはよく言ったもので、それが可視化できる人も居れば、魂を感じている人もいる
その代表がみこの母であり、彼女には夫(滝藤賢一)は見えていないけど感じている
そして、それを感じられるからこそ彼女は頑張れるのだと思うので、彼はあのまま家族の中にいて、何もしなくても良いのだろう
そう言った意味においても、霊がいる世界というのは実は幸せな世界なのかな、と思った
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